今日の一冊(6)『見捨てられた初期被曝』


【日 時】2020年9月21日(敬老の日) 13:00~16:00(開場:12:45)
【参加資格】膵臓がん患者とその家族
【参 加 費】無料
【定 員】 100名
【内 容】
第一部 講演:佐藤典宏先生
   「膵臓がんの標準治療と代替医療~外科医の立場から~」
第二部 患者さん同士の交流会。コロナにも膵臓がんにも負けないぞ!

ウェブ会議ツール「Zoom」を使ったWeb交流会となります。
スマホだけで簡単に参加することができます。


詳しくはオフィシャルサイトで

9月20日9:00AMまで参加申込受付中です。
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DP2M3681明月院のアジサイ


見捨てられた初期被曝 (岩波科学ライブラリー)

見捨てられた初期被曝 (岩波科学ライブラリー)

study2007
1,430円(09/19 07:53時点)
発売日: 2015/06/13
Amazonの情報を掲載しています

本書は、3.11の原発事故による、主にヨウ素131の初期被曝から子どもたちを守るために何が足りなかったのか。被害を小さく見せるために政府や行政、御用「科学者」達によってどのようなすり替えが行われたのかを、入手できる範囲の測定データを使って検証しようという試みです。

私は、著者のstudy2007さんとは2007年からのお付き合いです。とは言っても、ネットのブログ上での知り合いで、実際にお会いしたことはありません。彼は『転移性肺癌の1寛解例に関する研究』というブログを書かれています。2007年3月に、両肺に転移した最大直径10㎝の腫瘍が見つかり、ステージⅣの告知を受けます。しかし彼は、原子核物理の研究者らしく、自分のがんを科学的に捉えようとします。『抗がん剤治療もそれなりに大変でしたが、「人体実験を主導できて面白い」としか捉えることができず、自分としては結構楽しんでやれていました』と科学者らしく闘っていました。

臨床試験を英語では clinical study/trial と呼ぶので、告知が2007年だからペンネームを study2007としたというわけです。彼よりも3か月後に膵がんの告知を受けた私は、彼のブログの熱心な読者になっていました。

study2007さんは、抗がん剤治療によって一旦寛解しますが、主治医からは「折り返し点ですよ」と釘を刺されます。そして同年の10月にはPET検査による再発の疑いが分かります。

再PETの結果を検討。胸骨辺SUVmax=5.61に上昇。5mm×10mmくらいの領域に集積が見える。

  • 核医学の医師所見:「再発の可能性有り。要経過観察」
  • 主治医所見:「CT画像上は異常なし。しかし再発する可能性大。局所治療要検討」
  • 私の判断:「再発。直ちに再治療の段取りを開始したい」

もともとのSUV値は12程度だった事から考えると半分くらいの活性度になった可能性がある。あるいはFDG放射性同位元素F18から生じる陽電子の平均自由行程(飛距離)が生体内で約5mmである事を考慮すると、100%の活性度になった部分が2~3mm程度存在する恐れもある。
(PETは通常6ピクセル程度の移動平均値を用いるので平均化されて「5」になっているだけ?)
仮にPETという手段が無ければこの「再発」が見つかるのは半年後だったハズである。
僅かではあるが時間的猶予がある。私は「重粒子線治療」を選択した。

再発したというのに、このように分析する科学者魂は健在です。そして重粒子線治療を選択し、あわせて抗がん剤TS-1、ジェムザール、シスプラチンを投与して、現在はアブラキサンで治療を続けているのです。

彼のブログからは、必要な情報を集め、知識を総動員し、可能性と選択肢を科学的に分析することの重要性、そして、与えられた不十分な条件の中で果敢に決断することの必要性を教えられます。

そして2011年3月11日の福島第一原発の事故が起きました。原子核物理者である彼は、断片的な情報の中でも彼なりに分析して、政府や東電が「メルトダウン」を否定するにもかかわらず、3月15日には、

格納容器の一部が破断したと思われます。
あくまで自己判断ですが、
100km以内の妊婦、幼児は、圏外に出ることを推奨します。

と書いているのです。実は私も3月12日のブログ「地震連絡」で、

大災害です。福島原発の情報が小出しにされている印象を受けます。管総理が現地に乗りこんだり、原発内で行方不明や数人が亡くなっているなど、大きな被害を予想させますが、「安全だ」という情報が流されています。本当か???

原発は、電気を作る設備でありながら、緊急時に外部からの電力を断たれると炉心の冷却もできないという不可思議な弱点を持っています。M8.8という超巨大地震を想定した設計にはなっていないはずです。
大事にならないことを祈るばかりです。

16:00 やはりメルトダウンか? チェルノブイリ並みになるかも。政府は真相を隠しているに違いない。

冷却する行為が、格納容器を損傷する(可能性)という、過去に例のない危険な賭となる。賭をするということは、炉心溶融(メルトダウン)が始まっているからだろう。

と書きました。そして3月15日には『政府は、妊婦と乳幼児を直ちに避難させよ!』と書き、3月16日には

政府はパニックを怖れて真実は小出しにする。本当の危険が迫ったときには脱出は不可能である。政府が避難勧告を出そうとしないのなら、妊婦、子供は直ちに、なるべく遠くに疎開すべきである。

と避難を呼びかけました。私のブログでの避難の薦めなど何の効果もなかったとは思いますが、この時にもstudy2007さんや牧野潤一郎氏のブログに励まされました。政府がことさらに「安全」を強調するときは「危険」が迫っていると考えた方が良い、この事故からの私の教訓です。


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そしてご存じのとおり、SPEEDIの情報を活用されず、住民は無用な被曝を強いられ、避難の混乱の中で多くの病気を抱えた老人が死亡しました。「安全神話」にどっぷりと浸かった政府、御用「科学者」達は、自らが作成した緊急時のマニュアルすらまともに実行できず、被曝線量を推定するために必要な放射性降下物などの測定データを取得する体制にもなっていませんでした。

死の灰をかぶった避難者達のスクリーニングでは、身体除染や安定ヨウ素剤を服用するかどうかの基準値が1万3000cpmだったはずが、いつのまにか10万cpmに引き上げられます。現場では「水がない」「着替えがない」、この寒さの中で「将来のがんのリスクを取るか、今すぐの凍死を取るか」という二者択一を迫られたのです。「二者択一」を迫られること自体が、原発事故の怖さであり、被害なのです。

10万cpmというのは、サーバーメータの針が振り切れる測定値です。つまりそれ以上は測定できない、どれほど危険な放射線がでているのか「測定できない」ということなのです。昔、放射性同位元素が科学技術庁の管轄だった頃の話です。本庁の検査官がある施設の立入検査に行きます。管理区域の扉を入ったとたんに、彼のサーベイメータの針が振り切れたそうです。その担当官は、「顔色が真っ青になって飛び出した」そうです。針が振り切れるとは、それほどの「危険事態」なのです。

事故の初動体制の遅れもあって、初期被曝、特にヨウ素131による被曝線量を推定するデータがほとんどないため、住民・子供の被曝線量は過小評価されている恐れが十分にあります。

子どもたちの甲状腺検査の結果、悪性または悪性の疑いが127名と報道されても、「御用医師」たちは、「まだ発生する時期ではない、過剰に診断したから将来の甲状腺がんを見つけてしまっただけだ。原発の影響とは考えにくい」と繰り返しています。しかし、本書が解き明かしているように、初期の被曝線量は過小評価されている可能性が大きいのです。

study2007さんは、自分が治療している病院で、たくさんの小児がんの子どもたちの姿を見て「中にはベビーカーの小さな子供に抗がん剤の点滴がつながっているケースもあります。私の使っている薬よりも辛いとされる薬もあります」と衝撃を語ります。

お母さんは子供ががんに罹った理由を自分の中に探し、そして責めます。先進医療に望みを託し、家計をやりくりして大金も支払います。自宅に介護ベッドを用意し、最期のときまで寄り添い、愛情を尽くします。そして子供は、自分自身が親の負担になっていることを気にかけながら、心と身体の痛みに耐え続けます。

避けることのできるがんリスクが非科学的で理不尽な理由により、多数の子どもたちに押しつけられるのを、私は許すことができません。

原発事故によるリスクをコスト・ベネフィット論(利益と不利益)で計算する試みもあります。しかしながら、子どもたちの命や苦痛を電力会社の利益に換算する係数を私は知りません。

がん病棟の小児がんの子どもたちと、福島の甲状腺検査で「悪性」と診断された子どもたちの姿が二重写しになって見えているのです。自身ががん患者であるstudy2007さんの抑えられた怒りが、ふつふつと伝わってきます。

ご自身のがんに対して科学的に考え、対処してきた彼は、福島原発事故による初期被曝線量に対しても、限られた、故意に隠されたデータの中から真実を探ろうと努めています。必要な情報が常に十分あることは希です。不十分な情報の中から真理をすくい取って問題の解決にあたることこそが「科学的」態度でしょう。「健康管理のあり方に関する専門家会議」の長瀧重信座長や山下俊一氏らは、これとは逆の「反科学的」だと言ってもよいでしょう。

がんとの闘いも同様です。「魔法の弾丸」が存在しない以上、より正しい治療法はどれなのかを、総力を挙げて考えなければなりません。study2007さんはがんとの闘いにおいても、初期被曝線量を推定するという喫緊の課題に対しても、同じ姿勢で臨んでいるのです。

一般には取っつきにくい内容を、図とグラフをたくさん使って分かりやすく説明する努力をされています。次に原発事故が起きたなら、緊急避難の携行品の一つとして本書が役にたつことがあれば幸いです、とstudy2007さんは最後に書いています。

困難ながんと闘いながら、このような良書を上梓されたstudy2007さんの回復と治癒を願っております。


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