今日の一冊(19)『介護ビジネスの罠』
川崎市の介護付有料老人ホームで、入居していた3人が転落死した事件はまだ記憶に新しい。我々団塊の世代が後期高齢者となる2025年には高齢者人口が3500万人とピークになる。(2025年問題)
それをビジネスチャンスと捉えて、異業種からの参入が続いているのだが、介護のノウハウのない業者も多く、中には金儲け第一で「介護」が福祉だという理念を持たない業者が多いのだろう。
正直、私には特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)、介護付き有料老人ホーム(特定施設)、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の違いや特徴も、説明せよといわれてもで期待程度の知識しかなかった。
この本は現代の老人介護の問題を、著者が現場を綿密に取材した豊富な例で説明している。患者の囲い込みなどは日常茶飯事であり、介護報酬の誤魔化しの手口などは、「悪いやつほど頭が良い」という事実を再確認させてくれる。
10兆円の巨大事業に巣食う、
公的保険の間隙を突く悪徳業者の巧妙な“やり方”とは――。
- 入居者の「囲い込み」は当たり前
- 増加する「老人ホームもどき」
- 「胃ろう」の功罪
- 「24時間・365日対応」には要注意!
- その「看取り」サービス、本当に大丈夫?
- 格安老人ホームのカラクリって!?
- 救急車を呼ばず延命措置もしない~家族の弱みにつけ込む「看取りビジネス」
- 「老人ホームもどき」素人が運営して「介護で一旗揚げる」事業者
高齢者を“儲けの道具”と考える不届きな事業者が跋扈……。
「首都圏介護破綻」「2025年問題」よりも深刻な、
家族の弱みにつけ込む悪質な手口を徹底解剖。
などなど、背筋がゾッとするような内容である。
誰もがいずれ老人となり介護を受けるようになる。
がん患者であれば、その日が目の前に迫っている人もいるであろう。いざとなって、「こんなはずではなかった」と悔やまないためにも、介護の現実を知るためにも読んでおきたい良書である。