今日の一冊(25) 『東大病院を辞めたから言えるがんの話』

東大病院を辞めたから言える「がん」の話 (PHP新書)

東大病院を辞めたから言える「がん」の話 (PHP新書)

大場 大
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東大病院を辞めて、がん専門のセカンドオピニオン外来「東京オンコロジークリニック」を開設した大場大医師の本です。

場所は帝国ホテルタワー15階にあるらしい。う~ん、賃貸料はどれくらいなのだろう。3.0坪からレンタルオフィスがあるから、それほどでもないのか。

東大病院の医師の時給は飲食店のアルバイト並み、日本ではインフォームド・コンセントが名ばかりになっている、癌診療はローカル・ルールで行われている、「かつての名医」も今では老害などなど、現在の医療批判のオンパレードだ。ま、標準医療が最善の医療であり、エビデンスに基づいた治療をしましょうねと言う、ごく当たり前の「正論」である。言っていることは大部分が正しい。しかし、それではがん患者の不満や助かりたい一心での「エセ医療」に走ることを防げないのではないか。

堤未果氏の著作を取り上げて、「国民皆保険制度を実際に支えているのはわれわれの税金であり、この制度による社会保障費のバラマキによって多大なる負の要素を抱えている側面も取り上げた上で、総合的に検証すべきでしょう」と、政治的オンチぶりを遺憾なく発揮している。

面白い記述もある。

『がんの自然退縮は現実にどれほど起こりうるのか』の章で、

最近、日本語論文でも、がんの「自然退縮」についてまとめられた良質なものが報告されています。(Jpn J Cancer Chemother 2013;40:1475-1487)それによると、2011年の一年間に日本だけで63例が報告されているとのことです。

また、詳細なデータを検討した結果、がん患者約1.2万人に1人の割合で、「自然退縮」が発生しているとのことです。

Google Scholarで「癌 自然退縮」を検索すると結構な数の論文が出てくる。確かにがんの自然退縮は、思った以上に存在する。

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問題は、どうして自然退縮したのか、共通した要因はあるのかなどの研究がまったくされていないことである。過去には中川俊二氏らがチャレンジしたのだが、その後研究が進捗していない。

そうした現状に対してケリー・ターナー女史が『がんが自然に治る生き方――余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと』において一つの「仮説」として提起したのだが、大場氏はこれに対して「オカルト本」だと断定している。彼女の学位ががん患者のカウンセリングを専門としたものであるとか、博士論文がインパクトファクターのない三流学術誌だとかの理由である。

アインシュタインの特殊相対性理論も、有名でない雑誌に発表されたので当初はほとんど注目されなかったわけですからね。

「仮説」なんだから目くじら立てないで、「仮説」に反証すればよいのではなかろうか。そのためには、年間63例もある自然退縮例を、網羅的に分析して研究すればよいだろう。

何か共通する因子が見つかれば、われわれがん患者にとっては非常にありがたい。


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