国立がん研究センターは、がん難民製造センターか?


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「国立がん研究センター中央病院(以後、「がん研究センター」とする)に対して、多くの患者さんから不満の声を聞きます。「告知された直後の患者に抗がん剤を選ばせる」「あとは緩和といわれ、追い出すようなことを言う」「代替療法をやったら縁を切ると脅かされた」などなど。

最近では「がん研究センター」ではなくて「がん難民製造センター」ではないか、との非難も聞かれます。『すい臓がんカフェ』でもその話題で盛り上がることがあります。

がん研究センターは変貌したのでしょうか。患者はどのように対処すればよいのでしょうか。

以前もあった、”がん難民センター”との非難

2010年以前にも、がんセンター(当時はこの名称)が”がん難民を作っている”との非難がありました。

それに対して、元理事長の土屋了介医師(いま、神奈川県立がんセンター・重粒子線施設のいざこざで渦中の人でもある)や嘉山孝正氏が、がん研究センターを改革しようとしてきました。

土屋医師は、退任する際に、次のように書いています。

以前おられた麻酔科の先生方が、緩和ケアを行うためにがんセンターを去られたのは間違いありません。ですが「麻酔をかけている際の外科医の態度が悪い」ともはっきりと伺いました。「麻酔科医を手足のようにこき使う外科医が多すぎる」というのです。雰囲気のいい職場ならば、もう少しは残っていただけたのではないでしょうか。

少なくとも私が現場にいたときは、そのような外科医はいませんでした。もっと現場で指導すべきだったと後悔しています。この点については、嘉山新理事長に引き継ぐ前に“大掃除”をし、刺し違えてでも、辞めてもらうべき人には辞めてもらおうと思っています。

また、今の副院長、小菅智男先生には感謝しています。魑魅魍魎が集まる世界で、年上の部長にいじめられながらよく耐えてくれました。彼がいてくれたおかげで、私は対外的な働きかけに時間を割くことができましたし、それでがんセンターが独立行政法人化する際の債務負担を減らすこともできました。

先ほどの話の続きになりますが、小菅先生をいじめていた部長たちを整理してから辞めないと、私は腹の虫がおさまりません。医師同士でも信頼がなければ、的確な医療はできません。「ヒポクラテスの誓い」さえ守れない医師がいるのは非常に不愉快です。そんな医師を排除できなかったのが、私の反省点です。

「魑魅魍魎」の世界なんですね。がんセンターは。

2010年4月に独立行政法人となり、名称も「国立がん研究センター」と改められます。

初代理事長に立候補して選ばれた嘉山孝正氏のインタビュー記事には、

今後は難治や再発がん患者を受け入れ、がん難民を出さない」と6月10日に開催した記者会見の席上で明言した。前院長の土屋了介医師が種をまき、嘉山氏が大きく育てようとしている。研究所長には中村祐輔氏が就任している。「患者必携サポートセンター」も開設して患者の相談にも積極的に応じようとしている。ホームページも大きく変わった。情報公開にも力を入れる。既に、同センターのウェブサイトを介して、中央病院、東病院の各診療所の治療成績をすべて公開した。治験に関する情報もより詳細な内容に更新されている。

これまで多くの患者が“国立がんセンター”というブランドに引きつけられ、同センターで治療を受けることを希望していた。しかし今後は、同センターでは再発や難治また合併症を持つがん患者が、早期がん患者よりも優先されることになる。病院の治療成績優先ではなく、”がん難民”・困っている患者を優先するという方針だ。土屋医師は以前に「がんセンターの治療成績は悪くて良いのです。難治がん患者を受けいれれば当然成績は悪くなるのだから」と言ったことがある。がん研究センターの公開された治療成績だけを見て病院を判断してはいけないということだ。

と書かれていました。

研究所長に就任した中村祐輔先生も、

患者さんが絶望するがんセンターではなく、患者さんに希望を与えるようながんセンターになるように、研究所は縁の下の力持ちとなって支援する。

今の標準治療によってがん難民が増えている、私がこのドワクチンを開発しようとした動機も、標準治療では救えない、再発後はいくつかの抗がん剤が効かなくなると『後はホスピスですね』と言われがん難民になっていく。こうした状況を何とかしたいということだったのです。

と希望を語っていました。

嘉山理事長の方針は、「再発したり、がんが進行して積極的治療が受けられなくなったりした患者の受け入れには消極的」などと一部に批判もあったセンターの在り方を、転換するものでした。

嘉山理事長は「治療成績が全国びりでも構わない。都道府県のがん(診療連携)拠点病院で標準的な医療をしっかりやっても治らない患者を、がんセンターが引き受けますよという旗を掲げる」と表明。「その代わり、適用外の薬を使うわけで、国民にも協力してほしい」と付け加えました。標準治療以外の薬を使ってでもがん難民を作らないために、困っている患者を助けるという決意だったのです。

嘉山氏が就任した当時の、病院のホームページに掲載された「がん研究センターの使命」では、第1番目に「がん難民をつくらない」と高らかに掲げられていました。

「使命1.がん難民をつくらない」の説明には、こう書かれています。
“がん難民”とは、がんが進行して抗がん剤などの積極的な治療が受けられなくなり、主治医から見捨てられたと感じるときや、現在自分が受けていいる医療に満足できないと感じるときに使われる言葉です。
7.ではさらに、「現代医学では治療困難な患者に対する運動・栄養療法(代替療法)の開発と情報の提供」
代替療法も積極的に使って、がん患者を見捨てないという方針を掲げていたのですね。

しかし、がん研究センターの”使命”がまた変わった

しかし、魑魅魍魎あるいは厚生労働省の反撃が勝ったのでしょう。嘉山理事長も去り、中村祐輔先生も日本に愛想を尽かしてカナダに行ってしまいます。

新しい「使命」はこのようになっており、「がん難民をつくらない」は消し去られています。

代わりに、名称が「がん研究センター」であるように、早期発見と予防、先駆的医療の開発など、”将来のがん患者のための治療法の研究”が第一の使命となっているのです。

「目の前の患者」に対する”使命”は一つもありませんよ。彼らのミッションではないのです。「職員すべての活動はがん患者のために」とスローガンにありますが、”将来の”を付け加えるべきでしょう。

しかし、これはこれで大切で必要な使命です。全国のがんセンターの中核として、新しい抗がん剤の臨床試験や開発、いま話題の遺伝子治療の研究など、がん研究センターには大きな期待が寄せられています。

今の私たちが、新しいがん治療を受けられるのは、過去の患者が命を賭けて協力してくださったおかげでもあるのです。

がん研究センターも、今の患者を無視しているわけではないと思います。優先順位が違うのです。今の患者を無視していては、臨床試験に必要な患者も集まらないでしょうから、そこはオブラートに包んで、ブランド力を温存しておきましょうということ。

押川勝太郎先生も、がん研究センターに勤務した経験も含めて、実情を書かれています。

医師には多くの課題が与えられて、疲弊しているのです。治療成績、論文の数、臨床試験と、患者の気持ちを考える余裕もなくなるでしょう。

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勘違いしている患者が悪い

がん研究センターは、すでに、治らない患者を引き受ける病院ではなくなっているのです。彼らが建てた「使命」に対して、それが悪いと非難するのは的外れです。将来のがん患者のための研究も大切にして、進めてもらわなくてはなりません。

「がん研究センター」というブランドに惹きつけられて、最高の治療が受けられるだろうと「勘違い」している患者が悪いのです。

確かに、手術で治るがんであれば、最高の治療を受けられるのかもしれません。半ば強制的に参加させられる臨床試験であれば、試験の成績を上げるためにも、確実な医療サービスが受けられるかもしれません。一方でプラセボ(偽薬)グループに入れられることを想定しておくべきです。

臨床試験に参加することになれば、代替療法は禁止されて当然です。でないと、試験の結果に信頼性が置けなくなります。「代替療法をやったら縁を切る」は言い過ぎで、もっと違う言い方はあるでしょうが、代替療法も望むのであれば、がん研究センターを選んではいけなかったのです。

将来の患者のための研究が第一の使命なのですから、今の患者は、いわばモルモットです。モルモットは命を捧げるだけですが、患者は治療費も負担しなくてはなりません。「将来の患者のためになるのなら」という覚悟でがん研究センターを選ぶべきなのです。研究に支障のない範囲でなら、最高の治療が受けられるかもしれません。

患者はどうすればよい?

がん研究センターは患者のデータが欲しいのです。治らない患者は、次のデータを提供してくれる患者のためにベッドを開けて欲しいと考えるのです。そして、それは真っ当な考えであり要求だと思います。でないと、期待された使命を果たすことができません。目の前の患者よりも、将来の患者を優先するのががん研究センターの使命だからです。

先方の医師は「もう治療法はありません」と言っているのに、「病院を替えるのは申し訳ない」とか「先生に悪い」と、お人好しというか、空気の読めない患者がいます。

がん研究センターが望んでいるのなら、さっさと転院すれば良いのです。さもなくば、まだがん研究センターにも患者目線のよい先生が残っているかもしれないから、「この曜日は都合が悪くなったので別の曜日に変えることはできませんか」と言ってみる。

運が良ければ、よい先生に当たるかもしれません。しかしそうした先生は淘汰されて少なくなっているでしょうね。

「もう治療法はありません」といわれる前に、セカンドオピニオンを希望して、診療情報提供書やデータをもらって、さっさと転院してしまえば良いのです。先方は居てほしくないと言っているのですから。

最後に繰り返しますが、先方が「我々のミッションはこれです」と言っているのを、患者に冷たいと非難するのは的外れな議論です。最高の医療を提供してくれ、最後まで面倒を見てくれる病院と「勘違い」している患者が悪いのです。

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