【膵臓がんにも適用】放射線治療の新兵器―メリディアン(MRIdian)とは

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がんの3大治療法は、手術、抗がん剤、放射線と言われますが、近年放射線治療の進歩がめざましいです。

陽子線や重粒子線はもちろんのこと、サイバーナイフ、ガンマナイフ、トモセラピーまたは強度変調放射線治療(IMRT)などがあり、近年はあまり使われなくなりましたが、密封小線源を組織内に挿入する方法もあります。

膵臓がんにも適用できる、新しい放射線治療装置の紹介です。

国立がん研究センター中央病院がメリディアンを導入

MRIdianシステムは、軟部組織の描出を得意とするMRIと放射線治療装置を組み合わせた、放射線治療における次世代のソリューションです。

昨年5月に、日本では初めて国立がん研究センター中央病院に導入されたメリディアンはさらに画期的な性能を持っています。

これは、アメリカのビューレイ社が開発した放射線治療装置で、MRI(磁気共鳴画像装置)と放射線治療機(コバルト-60のガンマ線)を1台に組み合わせたものです。最大の特徴は三次元画像でがんと周辺の臓器の様子まで捕捉しながら、ピンポイントで放射線を当てることができることです。

放射線治療は、呼吸やぜん動で動いてしまう臓器には不得意であり、膵臓がんも十二指腸の動きに合わせて上下に2センチほど動いてしまいます。

その対応としてトモセラピーなどが開発されたのですが、メリディアンは、ターゲットとなる腫瘍の部位をMRIで正確に補足してマーキングしておき、二つの画像と重なった瞬間に自動的に放射線(コバルト-60のガンマ線)を照射するものです。

メリディアンの特徴

理想的な放射線照射は、腫瘍の部分のみに放射線を当てることです。それができればいくらでも強い線量を照射することができ、治療成績も上がり副作用も抑えられます。

しかし、定位放射線装置、IMRTといえども、1~2センチほどの照射野の余裕は確保しておく必要があります。呼吸などの動きで腫瘍部位の移動を把握するために、完結的なレントゲン撮影や金のマーカーなどを体内に置いていますが、これでも三次元的な位置を把握し切れていないからです。

メリディアンは、この照射野の余裕幅を2ミリほどまで縮小できるのです。それによって、これまでよりも大きな線量を照射でき、なおかつ副作用も抑えられ、腫瘍の局所制御率も高めることが可能になります。

また、治療の度に拡散強調画像(diffusion (weighted) image, DWI)によって治療の性かを確認することができます。MRIによる拡散強調画像は、『DWIBS(ドゥイブス)法とは?特殊なMRI』でも紹介したように、治療後すぐに治療効果を判断することができるのです。これを利用することで、治療の度に治療計画を迅速に変更することも可能になります。

これまでの放射線治療装置では、リアルタイムで腫瘍の位置や状態を見ることはできませんでした。臓器の動きを頭の中でシミュレーションしながら放射線を照射していたのです。

何といっても、体内を画像化して照射野を確認しながら放射線治療を行うことができ、当日の線量を確認修正するアダプティブ治療を実現した画期的な装置です。実際に照射中、臓器が常に動き続けているのを見ると、 それまでは頭で分かってはいても驚かされることばかりです。

「従来の高精度放射線治療においては、腫瘍の動きを頭で想像しながらマージンを広めにとって照射をしていましたが、『MRIdian』では、まさに治療直前に実際にその時に照射しようとする線量分布が分かりますし、治療後のログを解析することで実際に照射した放射線の線量分布を計算することもできることから、より質の高い放射線治療を提供することができます。

これまでの放射線治療装置は散弾銃を撃つようなものなのに対して、メリディアンはスナイパーが照準器付きのライフルで狙い撃ちするのに似ています。

メリディアンは3つのヘッドに、放射線源としてガンマナイフと同じコバルト-60を装着しています。遮蔽材としては、メーカーは劣化ウランを使っていたのですが、これでは日本に輸入できないため、遮蔽材をタングステン合金に置き換えています。そのためのコストが相当大きくなっています。(日本の法律では「ウラン」と名がつくと核燃料扱いになるのです。馬鹿げた法律ですね)

副作用への懸念

放射線の照射野をぎりぎりまで小さくできるから、副作用も軽減できるのは理解できます。しかし、体表面から腫瘍の場所までは正常細胞にガンマ線を当て続けながら到達するわけですから、大きな線量を照射すれば、その部分の副作用は大きくなるはずです。

ガンマ線には、陽子線や重粒子線のように、拡大ブラッグピークがあるわけではないからです。メーカーのサイトを見ても、その点には触れられていませんが、実際にはどうなんでしょうか。懸念が残ります。

膵臓がんにも適用できる

メリディアンは、頭部のがん以外のほとんどのがんに適用できます。国立がん研究センター中央病院 放射線治療科長の伊丹純医師は次のように語っています。

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膵臓がんへの治療にも期待しています。膵臓のそばには十二指腸があり、これまでは膵臓がんに対する放射線治療が難しかったのですが、臓器の位置や動きをMRI画像で常時把握できるので、腸管が照射野に入ってきた場合、照射を中止することにより正常臓器への照射を止めることが可能です。

メリディアンが使えるのは、(遠隔転移しておらず)すい臓内に留まっているがんで、全体の約3割の患者さんが対象です。当病院で治療を行っている8例のうち、すい臓がんはまだ1例ですが、ステージIIIの患者さんに5回照射しただけで、この7カ月間、がんの増殖を完全に封じ込めることに成功している。また、協力関係にあるアムステルダムの病院ではステージIIIの患者さんの42症例すべてに改善が見られました。

当面は、ステージIIIまでのすい臓がんをメリディアンで小さくしたうえで手術するという使い方を考えている。また、将来的には抗がん剤との併用で手術をせずに根治できる可能性もあります。

嬉しい話しですね。ただ、肝臓などへの遠隔転移がある膵臓がんは対象にはなりません。

現状では保険適用外の自由診療

現在、メリディアンは健康保険が利かないため自由診療となり、5〜8回の治療に、210万円かかるそうです。「しかし、現在、世界の9つの医療機関で治験を行っており、結果次第では、数年で保険適用になる可能性があります」と語っています。
VIEWRay社のサイトから、「月刊新医療 2017年8月号」のページがダウンロードできます。(画像をクリック)

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