抗がん剤の耐性を解除すれば膵臓がんだって完治する

水虫薬でがん治療?
先日の記事『なぜ抗がん剤の耐性がつくのか』の続きで、抗がん剤の耐性を解除する治療法の話題です。
切除不能膵癌を対象としたイトラコナゾールの臨床試験
水虫の治療薬、抗菌剤や抗真菌剤には、がんの血管新生阻害作用、ヘッジホッグシグナルの阻害作用、オートファジー誘導によるがん細胞の成長停止作用等の報告があります。
また、抗がん剤の耐性を阻害する作用もあるとされ、水虫の治療薬イトラコナゾール(商品名イトリゾール等)を使った、切除不能膵癌に対する臨床試験が募集されています。
「切除不能膵癌に対するイトリゾール併用アブラキサン・ゲムシタビン・オキサリプラチン療法に関する臨床第II相試験」
実施責任組織は、兵庫県西宮市の明和病院で、がん診療準拠点病院に指定されています。そこの腫瘍内科部長 園田隆医師が責任研究者です。
明和病院については、5日前の記事でも紹介しています。チャレンジをしている医師であり、病院ですね。
がん・ステージ4からの眺めでも紹介
園田医師はまた、毎日新聞の「がん・ステージ4からの眺め」でも取りあげられていました。有料記事で一部しか読めませんが。
ステージ4のトリプルネガティブ乳がんと告げられ、5度の脳転移経験もある田村博子さんは、園田医師の治療法を受けて”完全寛解”し、現在も元気に活躍しています。
これほどの絶望的な状況からでも完全寛解することがあるのですね。驚きです。
田村さんが選んだ治療法は、抗がん剤の耐性を阻害する薬剤を使う治療法でした。
園田医師は、「ガイドラインにはない治療だから、大学病院などではできない」と語っていますが、ガイドラインを基本にしながらも、工夫を加えた治療を続けているといいます。
この記事にはまた、
田村さんが受けた治療は、同じ乳がんでも全ての人に有効なわけではない。いざ治療しても奏効するとは限らない。しかしステージ4のがん患者の命を、より長く延ばし、根治を目指すことが園田医師の仕事だ。難治の膵臓(すいぞう)がんに対しても、同じ治療で手応えを感じている。エビデンス(科学的な根拠)を作って、より多くの患者を救いたいという思いもあるが、臨床試験を行うにはいくつもの壁がある。今は「職人のごとく、コツコツと自分の仕事を続けるだけ」と園田医師は話す。
と書かれています。
期待しすぎない
「全ての人に有効なわけではない。いざ治療しても奏効するとは限らない。」と記事にも書かれているように、わずかな著効例だけでは、その治療法の有効性は判断できません。
標準治療だけを受けていた膵臓がん患者でも、再発したがんが完治したという例もありますから、ほんとうに有効かどうかは臨床試験をしなければ分かりません。その意味でも臨床試験を行っていることには好感が持てますが、臨床試験で有効性が証明できるのは、わずか数パーセントだともいわれていますから、あまり過大な期待は禁物です。
【参考】「イトラコナゾール」をキーワードにUMINで検索するとたくさんの臨床試験がヒットしました。水虫薬でがん治療?という怪しげなものではなさそうです。
期待は持ちながらも、好意的に推移を見守っています。