今日の一冊(127)『緩和ケア医が、がんになって』

緩和ケア医の大橋洋平さんは、ある日大量の下血で胃の上部にジストが見つかります。gist(消化管間質腫瘍)は10万人に1人という希少がんです。

緩和ケア医が、がんになって

緩和ケア医が、がんになって

大橋 洋平
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ジストの中でも相当の悪性、直径が10センチもあり、手術はできましたが、再発転移してしまいます。

勤務する病院で患者となるのですが、あまり良い患者とは言えません。

栄養剤エレンタールは飲みにくいからと、介護士に隠れて洗面台に「飲ませる」し、点滴の速度が遅いからと勝手に落ちる量を増やして看護師に怒られます。

胃液が逆流したり、しゃっくりが止まらないと、

「がんと診断がついたときから緩和ケア」「がんの治療中にも緩和ケア」

ではなかったのかと、自分が緩和ケア医なのに、日本緩和医療学会のスローガンを逆恨みしたり。

1000人以上の末期の患者を看取ってきたが、自分が治らないがんになったときに、実はほんとうに患者の気持ちは分かっていなかった。「我が身に降りかかってこなければ、分からないことばかりだ」と実感します。

そんな大橋さんは、「患者風を吹かせろ」と言います。

「己のことは己に決めさせてくれ。お節介は要らん」

「身体と魂が苦しいのなら、苦しいと言って良い」

「余命よりも足し算命」余命は1日1日残りが減っていくが、今日も生きられた、明日も・・・と足し算で考えれば、儲けた気分になる。将来の夢は消えたが、明日の目標を持つことはできる。

「がんになってもよりよく生きる」なんて患者に言ってきたが、しかし自分がその立場になると、「よく」など生きられない。しかし、これからもしぶとく生きていくと考え直します。

緩和ケア医として「頑張らない、そしてあきらめない」と患者に言ってきたが、いまは「あきらめる、そして頑張る」に変わった。

なぜなら、人は叶わない夢を持ち続けることなどできないからだ。治るという希望、東京オリンピックを観るという希望は棄てた。

しかし、生きるための明日の希望、妻と二人で半日程度の、観光地によるわけでもない、ただ往復の電車に乗るというだけの希望であっても、有意義な1日であり、頑張って生きるに値する「希望」だと言う。

自分の死を見つめながらも、痛快な文章で書かれています。


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