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今日の一冊(150)『免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか』

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制御性T細胞は免疫の守護者

内容紹介

私たちの免疫系は、なぜ自己の細胞や抗原に対して反応しないのか? 免疫学の最大の謎ともいえる「免疫自己寛容」の解明に長年取り組んできた著者が世界で初めて発見した「制御性T細胞」。

免疫学にパラダイム・シフトをもたらし「がん」や「自己免疫疾患」の治療や「臓器移植」に革命をもたらすとされる研究の最前線に迫る。

制御性T細胞の発見者である坂口博士の著作です。「制御性T細胞(Tレグ)」の発見から発展、がん治療への応用、そして「制御性T細胞(Tレグ)」とは何か?という内容である。

これを読むと、坂口博士が毎年のようにノーベル生理学・医学賞の候補者となるのも頷けます。

制御性 T 細胞の発見の過程だとか非常に興味深いのですが、専門用語も多くて分かりやすく説明するのは私にとってはむずかしい。

ですから第6章の「制御性 T 細胞でがんに挑む」の内容だけを紹介したいと思います。

制御性T細胞(以下、Tレグ)による免疫反応の制御は、免疫抑制薬によって免疫応答を一網打尽に抑え込むような荒っぽいものではなく、強力だが、きめ細やかに作用する。加えて、Tレグは、誰の体内にも存在しているものなので、生理的な治療となり体に優しい。もし、疾患に応じてTレグをコントロールできるようになれば、これまでの医療の延長線上ではない、革新的な治療法が生まれると期待されている。

がんを監視している免疫機構

1990年代には、短いタンパク質であるペプチド抗原を用いて免疫系を増強させるというワクチン療法の研究が始まった。

がんワクチン療法とは、がん細胞が持っている物質(がん抗原)を人工的に作り出して注射するものです。注射した場所に、がん抗原だけに反応する細胞傷害性 T 細胞(キラー T 細胞)を効率よく作り出し、がん細胞を攻撃させるという筋書きでした。

これ以外にも、抗原提示細胞である樹状細胞を標的として、取り出した腫瘍細胞にがん抗原を提示させて培養してから体内に戻し、体内の免疫応答を活性化させるという「樹状細胞ワクチン」の研究開発も進められました。しかしこれらのいずれもめぼしい成果は得ることができなかったのです。

どうして動物実験では上手くいくのに、人のがんでは効果が出ないのか。それは実験のために作り出すがん細胞と、病気として見つかるがん細胞とでは大きな違いがあるからです。

人のがん細胞は体内の免疫監視機構をくぐり抜けたがん細胞の中の「精鋭」たちです。こうした精鋭部隊に、免疫機能を少々活性化したところで、低下している防御力を復活させるのは難しいでしょう。

がん細胞は”自己もどき”細胞である

がん細胞は非自己ではなく”自己もどき”の細胞です。元々は正常細胞であったものが、遺伝子が変異してがん細胞になったものです。

制御性 T 細胞は、免疫系の暴走を抑える主役としての働きがあるのですが、皮肉なことに、これががん細胞の増殖を手助けしている側面があります。

がん細胞は”自己もどき”の細胞ですから、自己免疫によってしか増殖を抑制できません。しかし制御性 T 細胞の基本機能は、自己抗原に対する免疫応答を抑制することであり、必然的にがんに対する免疫応答を抑え込んでしまいます。

制御性 T 細胞によってがん細胞への攻撃が弱まったり疎外されたりすることで、がん細胞の定着や成長が進んでしまうのです。

実際に、がん細胞の中には制御性 T 細胞を引きつけたり、他の T 細胞を制御性 T 細胞に変化させるシグナル分子を分泌したりするものまであります。

またいくつかの研究から、がん患者の血液中や腫瘍内部では、活性化した制御性 T 細胞が異常に増加していることが分かってきました。がん組織に浸潤している T 細胞の30から40%、場合によっては80%近くもが制御性 T 細胞で占められるということもあります。

これががんワクチン療法の最大の障害となっているのです。がんワクチンはがん細胞を攻撃するキラー T 細胞を活性させるのが目的なのですが、同時に免疫を抑制する制御性 T 細胞まで活性化されてしまいます。

これでは治療効果が検索されたり場合によっては逆に癌が活性化する危険もあります。

新しい免疫療法へ

がん免疫療法はこれまでほとんど成果を上げることはできませんでしたが、最近制御性 T 細胞とも関わりのある細胞表面分子を標的として狙い撃ちする「免疫チェックポイント阻害薬」が登場しました。そしてがん治療に大きな変化をもたらしています。

しかし、ニボルマブの投与によって急速に腫瘍が増大し、病勢進行を示す患者が報告されています。余命半年と言われていた人が急速に容態が悪化して1ヶ月で亡くなってことがあります。この現象には制御性 T 細胞が、がんの局所で増加しているという可能性があり、検討が急がれています。

現在行われている免疫療法に、制御性 T 細胞の観点を入れていくことによって、治療効果を大幅に増やすことができるかもしれません。

そのためには、がんワクチンを接種する際に免疫応答にブレーキをかけている制御性 T 細胞の働きを抑えることが挙げられます。また腫瘍に浸潤して免疫応答を抑制する制御性 T 細胞を除去する方法も研究されています。

こうした研究によって、自由診療で実施されてきた、詐欺にも等しい免疫細胞療法は、本当に科学的な免疫療法に進展してくるに違いありません。

がんと免疫について、大きな希望を抱かせてくれる著作です。


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