がんは「気持ち」で治るのか?

「精神神経免疫学」あるいは「精神腫瘍免疫学」と言われる分野があります。

がんが人間の精神(心)にどのような影響を及ぼすのか、逆に人間の心のありようが、がんにどのような影響を与えることができるのかを研究する学問です。

私としては心の「有り様」によってがんが治ることがあるのかどうか、そこに関心があります。

サイコオンコロジー(精神腫瘍学)は近年急速に発展してきています。次回の『膵臓がん患者と家族の集い』では、日本におけるサイコオンコロジーの第一任者、保坂隆先生の講演を予定しております。このページの最後に紹介をしてあります。

がんの自然退縮

「がんの自然退縮」という現象が稀にあります。

1966年に、アメリカの外科医 エバーソンとコールが、がんの自然退縮について調査してまとめた最初の本が出版されています。

日本の中川俊二氏と池見酉次郎氏は、実際に自然退縮の事例に直接インタビューをして先駆的な業績を残しています。

日本の心身医学の創始者である九州大学の故池見酉次郎教授は、中川博士とともにがんの自然退縮例を研究しました。

池見教授は、74人のがんの自然退縮がみられた患者さんで、精神生活や生活環境を詳しく分析できた31人をまとめています。31人中23人(74パーセント)に人生観や生き方の大きな変化があったとされています。

その23人の中7人はかねてから人間的な成長度の高い人や真に宗教的な生き方をしてきた人たちであり、がんの告知がきっかけになり、永遠の命へのめざめが起きたそうです。

5人は信仰をもっていた人たちで、がんを宣告されることによって信仰の対象としていた教祖や神仏に自分のすべてをまかせきるという全託の心境になったとされています。5人は家族からのサポートや周囲の人の温かい思いやりに包まれて主体的な生きがいのある生活へ転換が起きた人であり、6人は生きがいのある仕事に打ち込んでいった人だそうです。

このように、約4分の3の人では、生きがいや生き方に大きな変化があったときに、がんの自然退縮があったというのです。

奇跡的治癒例を世界に先駆けて研究したの池見酉次郎氏や中川俊二氏は、その症例のほとんどの患者に「実存的転換」というべき変化があったと報告しています。

「実存的転換」の意味は中川俊二さんの言葉を借りると、『今までの生活を心機一転し、新しい対象を発見し、満足感を見出し、生活を是正するとともに残された生涯の一日一日を前向きに行動しようとするあり方』です。

またゴタード・ブースは、がんの治癒は、その危機的な状況が、新たな生きがいを見つけることで好転することによってもたらされると考えました。

つまり自然退縮は偶然に起こるのではなくて、がん患者が新たに生きる目的となる対象を見つけて、生きる状況を改善したことに対する反応だと主張したのです。

プラシーボは体内の製薬工場

ハワード・ブローディの『プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬』では、

「私たちが、周囲から自分の健康に関する何らかのメッセージを受け取ったとき、それが大切な人間関係と結びついている場合には特に、私たちの身体はメッセージに反応する。」として、

意味づけを変えるこうしたメッセージを受け取ると、からだは何をするのだろう? プラシーボ反応について科学がこれまで明らかにしたことを大雑把に理解する一番いい方法は、私たちの誰もが「体内の製薬工場」を持っていると想像することだと思う。

と延べ、体内の製薬工場=プラシーボ反応をこのように要約しています。

  • プラシーボ反応を考えるときは、「体内の製薬工場」をイメージするとわかりやすい。ある種の治癒的なメッセージには、体内の製薬工場を始動させ、その働きを高める力があるらしい。
  • 「体内の製薬工場」をもっとも効果的に刺激するメッセージは、病気が私たちに対して持つ『意味』を変化させる。意味がポジティブな方向に変化するのは、私たちが病気の説明を十分に受けたと感じるとき、周囲の人たちからの思いやりを感じるとき、自分を悩ませている問題に対して主導権を持っていると感じるとき、である。
  • 人間はあるできごとについて物語を織り上げることで、そのできごとに意味を与える。そして「体内の製薬工場」は、私たちが自分の健康状態や病気について織り上げる物語から強い影響を受ける。より明るい結末を組み立てることで、私たちは意味を変化させ、それによって「体内の製薬工場」を刺激することができる。

私たちの「体内製薬工場」がフル稼働したときに奇跡的治癒、自然寛解が起きると考えるが、それを恋い焦がれる者には訪れない

がんに効く生活 克服した医師の自分でできる「統合医療」

がんに効く生活 克服した医師の自分でできる「統合医療」

ダヴィド・S. シュレベール
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治りたがる人には奇跡的治癒はやってこない

あなたはこう考える。「どっちにしても、結局この治療が効くかどうかは知りようがない。でも、希望を持っていれば治療がうまくいく可能性は高まるだろう。だから希望を呼びだすために自分でできることを考えてみよう。それも責めたり、罰したり、何かを引き替えにしたりしないでやってみたいものだ。

つまるところ、これは私が治るかどうかの問題だけじゃない。私はどんな人間になりたいか、私の人生をどんな物語にしたいかの問題なのだ。必要とあらば、希望を持った人間になるか、疑うばかりの人間になるか、自分で決めるしかない」

この考え方のほうが、治癒をもたらす可能性はずっと高い。

シュレベールは『がんに効く生活』のなかで、

免疫細胞は、客観的に見て、より”生きる価値”があるように人生を送っている人間の体内では、それだけ活発に動くかのように見える。

と述べています。

「治る」ことだけにこだわっているかぎりは、治癒を取り逃がしてしまうのです。

参加の申込みはもうしばらくお待ち下さい。


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