心と癌と量子力学の関係(3)

沫雪(あわゆき)の中にたちたる三千大千世界(みちあふち)またその中に沫雪ぞ降る

良寛にこんな歌があります。三千大千世界を「みちあふちImg038」と読ませ
ていますが、三千大千世界とは、仏教における宇宙論を表わす言葉です。我々の住むこの世界は須弥山(しゅみせん)を中心として周囲に4つの大陸があり、その周りに九山八海があるとされています。この世界が千個集まったものを小千世界といい、小千世界が千個集まって中千世界、さらにこれが千個集まって大千世界となります。大千世界には小・中・大の三つの世界が含まれているので、これを三千大千世界ともいいいます。つまり、10億の小世界(我々の住む世界)が階層状に集まっていると考えるのが仏教の宇宙論です。

良寛の歌は、冬の越後の五合庵に降る一粒の雪の中に10億の小世界が見えている、その10億の世界のそれぞれにまた沫雪が降っている。更にその沫雪の中にも10億の小世界があり、その中にもまた沫雪が降っている・・・・・。と幾重にも世界が重なり合ってどこまでも続いています。また、いま良寛が見ている沫雪の降っているこの世界も、さらに大きな沫雪の中に含まれている、その世界もまた更に大きな沫雪に・・・・。こうして大きい方にも幾重にも世界が重畳している。沫雪は「泡のようにはかなく消えていく雪」のことです。この世界も実は沫雪のように刹那刹那に、はかなく消えていく。何とも壮大な歌ではないですか。

仏教では、悟りの最高の位「仏の悟り」を開いた者は、いつも一人だけである。私たちのリーダー(仏陀)はある期間をおいてしか現われないとしてきました。2500年前に現われた仏陀が釈尊(お釈迦様)であり、次の仏陀が現われるのは56億年後の弥勒菩薩まで待たなければならない。しかしそんなに待ってはいられない。何とかしてこの自分が住んでいる時代で仏陀に会える方法はないか、ということでこんな考えをするようになったのです。

それは、この世界とは別の世界が平行して存在している。平行している10億もの世界があれば、そのどれかには今現在、弥勒菩薩が生きているかもしれない。また、特別な世界では、限りない寿命を持った仏陀がいるかもしれない、これが極楽世界の無量寿仏(阿弥陀如来)という概念になっていく。三千大千世界という概念が生まれてくる。

これはまさに「多世界解釈」ですよね。量子論を論理的に突き詰めていけば、この世界は瞬間毎に分岐していくたくさんの世界から構成されていると考えざるを得ない。仏教でもこの世界は階層化されたたくさんの世界から成り立っている。偶然の一致かもしれませんが、何ともおもしろい一致です。

犀の角たち

上田三四二さんの『良寛の歌ごころ』と佐々木閑さんの『犀の角たち』から以上のようなことを教えられました。

上田三四二さんは、医者であり歌人であり文芸評論家でもあった人です。そしてがん患者でもあった。ただ、上田さん自身はがんの告知はしない方が良いという考えであり、家人も上田さんにはがんということを知らせなかったようです。二度の大病を経て『ゆらぐ死生観』という著作など、良寛・吉田兼好・道元らを対象に命の内面を見つめた作品があります。


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