野菜と果物によるがん予防効果は小さい?

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JNCI(Journal of the National Cancer Institute)に、ヨーロッパでの野菜と果物が全がんリスクを下げるかどうかの大規模試験の結果が載せられています。

こちらのブログで概要が紹介されています。野菜と果物ががん予防に効くかどうかについては、これまでの調査は後ろ向きコホート研究が大部分であり、今回のような大規模追跡調査での結果は、より信頼性があるものと考えられています。

14万人の男性と33万人の女性、計47万人のデータを分析しました。

1992年に始まって約8.7年間追跡するうちに、9,604例の男性と21,000例の女性ががんと診断されました。

野菜と果物の摂取量の合計が多いほど、がんのリスクはわずかながら有意に低くなることがわかりました。摂取が200g/日増えるごとにリスクは3%低減します。

この報告によれば、野菜や果物にがん予防効果があるにしても、その効果はそれ単独では、極めて限られたもののようです。

野菜や果物を多く食べるような人たちは、他にも良いものを食べたり、悪いものを避けたり、運動したり、体に良いことをいろいろ心がけていることでしょう。(米国統合医療ノートより抜粋)

この結果をどのように解釈するべきか? 3%のリスク低下が大きいのか小さいのか? がん患者はこれからも野菜と果物を積極的に摂るべきか? それによってがんが治ることがあるのか?

こんな例で考えてみよう。新しいゴルフボールが開発された。これまでのボールよりも飛距離が伸びるといわれている。本当だろうか? このボールが本当に良く飛ぶのかどうか、どうすれば分かるだろうか。

アマチュアゴルファーがこのボールを何度か打ったら、確かに飛距離が2倍伸びた。同じクラブで、同じ芝でやったが、いつも2倍ほど距離が伸びた。 プロゴルファーが打ってみた。やはり2倍ほど距離が伸びた。これほどすばらしい新製品だったら、もうこれ以上の実験は必要ないでしょう。爆発的に売れるはずです。

逆に、これまでのボールと同じか、それ以下の距離しか飛ばなかった場合、これもそれ以上実験をする必要はない。ボールではなく開発者の首が飛び、もしかするとその会社は倒産するかもしれないというだけである。

Aさんが打ったら少し飛距離が伸びたことがあった。しかしBさんが打ったら、それほどでもないという結果だった。ゴルフクラブを替えたら、伸びるときも伸びないときもあった。風があるときに良く飛ぶような気がするが、雨の日にはだめなようだし、芝が乾燥していても良くないような気がする。ようするに、違いがあるかどうかよく分からない、条件を変えたときの結果がまちまちである。違いがあってもごくわずかなようだ。こうしたときに統計的な実験が必要になってくるのです。

ごくわずかしか違いがないときに、他人を説得するために統計的手法を使うわけです。

抗がん剤の二重盲検法による臨床試験でも、抗がん剤を投与された患者が対照群よりも生存率が悪いということが明白になって中止されるということがよく報道されています。逆に、あまりにも投与群の生存率が対照群よりも良いので、人道上の理由で対照群にも同じ抗がん剤を投与せざるを得なくなるということも起きています。つまり、良く飛ぶボール・飛ばないボールの場合と同じように、極端に違いがあれば誰の目にも明らかになるので、実験を中止せざるを得ないわけです。

統計的に処理せざるを得ないということ自体が、そもそも大きな違いがないということを前提としているわけですから、今回の結果もそのように受け取れば納得できるでしょう。

また、次のようなことも考えられます。今回の対象者47万人を、例えば女性で、年齢が40~50代で、乳がんのホワイトカラーである、というふうに絞っていけば、3%以上のリスク低下を示す集団が確実に存在することでしょう。そういう部分集団を探せば、野菜と果物でがんのリスクが30%低下した!などということもありえないどころか、大いにあり得るというのが、大規模統計では起こるのです。済陽高穂氏が、自分の主張に都合の良い部分の患者集団を取り上げて、がんに効く料理のレシピ本を出版することが簡単にできるのです。そして、ころりと騙されるがん患者がごろごろと現われてくるわけです。


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ゴルフボールなら、風のある日、雨の日などど、同じボールで特定の条件下で何度も打ってみることができます。しかし、がん患者はそうはいかない。治るか治らないか、一度きりです。別の条件での再現実験はできない。だから多くの患者を集めるのですが、同じ条件の患者などいるわけがない。統計的処理には限界がある。ベイズ統計が万能というわけではないのです。

がんと診断された約3万人のなかには、野菜と果物で治った患者が必ずいるはずです。だからといって、野菜と果物で治るはずのないがんが治ったとは誰も証明できない。

系全体が多くの要素が絡み合うことによって決定されている複雑系(人間は宇宙と同じく神秘的な複雑系です)において、ひとつの要素を取り出して、その影響を分析するという考えそのものが間違っているように私には思えるのです。「複雑系ではひとつひとつの要素の特性からは想像もつかなかったような特性が出現したり、ちょっとした変化が系全体の激変をもたらしたりする」のですから。

平均してならせば3%ものリスク低下があるならば、ある患者の「系全体が激変」して治ることだって起きてしまうのです。生存率曲線の右端はロングテールになっていて、多くの場合数%の生存者がいるのはこういうことなのです。

玄米菜食・野菜と果物の食事を続けているのなら、続けるべきです。しかし、「野菜と果物でがんが治る」という誇大広告には騙されない、病院での治療を断念しないことが大切です。 野菜と果物で治るかもしれないのです。しかし、それは成り行きです。努力ではないのです。一切れの肉も食べないようながんばりはムダなこと。ひとつの要素を少し変えたとき、その結果を予想することはできない、というのが複雑系の特徴なのですから。

心と癌と量子力学の関係」でも同じようなことを書いてきました。


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野菜と果物によるがん予防効果は小さい?” に対して3件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    陶さん
    アルクチゲニンはリグナンという物質。PDQRがん用語辞書によると、
    PDQRがん用語辞書
    アルクチゲニン
    【仮名】あるくちげにん
    【原文】arctigenin
    ゴボウなどある種の植物に含まれる物質。抗ウイルス作用や抗がん作用を示している。アルクチゲニンはリグナンという種類の物質である。
    リグナン
    【仮名】りぐなん
    【原文】lignan
    エストロゲン様作用と抗がん作用を有することが分かっている植物中に含まれる物質群のひとつ。一部の文化圏では、リグナンは特定の医学的問題の治療に使用されている。
    マウスでの実験ですから、ヒトに対する効用は不明でしょうが、私の記憶によると、膵癌を告知されたヒトが八百屋で牛蒡を買い占め、毎日食っていたらがんが消失したという例がありました。どの本で読んだのか分からないのですが、帯津良一氏の書籍だったかもしれません。
    梅澤医師の「ガン治療と情報」でも触れられています。
    http://umezawa.blog44.fc2.com/blog-entry-1595.html
    副作用がないのなら、試してみても良いのではないでしょうか。
    消失しなくても増大しなければもうけものですから。

  2. より:

    投稿が多くて恐縮です。
    私の妹からの情報(読売新聞の記事)です。牛蒡の種を探して摂取してみたいと思います。
    【ゴボウの種、膵臓がん増殖抑制…臨床研究へ】
     国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)は、漢方薬の解熱剤などに使われるゴボウの種子「牛蒡子(ごぼうし)」に、
    抗がん剤が効きにくい膵臓(すいぞう)がんの増殖を抑える作用があることを、マウスの実験で突き止めた。
    患者を対象に臨床研究を行い、新しい治療法の実現化を目指す。
     がん細胞のうち、酸素や栄養分が少ない環境で生き残るタイプは、抗がん剤が効きにくく、がん再発の原因になる。
    江角浩安院長らは、酸素や栄養分が少ない環境で培養したがん細胞に、牛蒡子に含まれるアルクチゲニンを加えると、
    がん細胞が激減することを発見。膵臓がんのマウスは通常、生後55日ですべて死ぬが、牛蒡子を1回50~100マイクロ・
    グラムずつ週5回投与すると、生後100日を過ぎても半数が生き残った。
    江角院長は「膵臓がんの患者にも効果があるか、早く検証したい」と話している。
    (2010年4月25日09時56分 読売新聞)

  3. kt より:

    野菜 果物の摂取とがん罹患率 調査は 厚生労働省もしていますが、あまり相関関係がないという結果が出ていますね。
    ただ、野菜果物を摂取し、乳製品などを含む動物性タンパクを全く摂取しないグループとがん罹患率の調査は ありません。
    ベジタリアンと非ベジタリアンのカゼイン摂取量は そんなに差はありませんが、結局のところ、ベジタリアンも乳製品から
    カゼインを摂取しているわけです。 アメリカでも 日本でも 意味のない 税金を無駄に使うだけの 疫学調査が多いですね。
    早寝早起き、玄米菜食、適度な運動をしたグループとそうでないグループとの罹患率の比較調査もぜひして欲しいものです。

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