「がんペプチドワクチン療法」は夢の治療法か?(2)

がんペプチドワクチン療法の特徴

●新規腫瘍抗原(オンコアンチゲン)を標的とする

がん特異的なタンパク質を見つける方法は、がん組織と まだ仮定でしかない。)つまり、がん細胞が標的を出そうが引っ込めようが、いずれにしろがん細胞は攻撃から逃れることができないというジレンマに陥ることになる。

がん細胞に特異的に発現し、増殖に必須であり、抗原性を持った標的分子をオンコアンチゲンと呼ぶことにする。オンコアンチゲンを標的とすることにより、がん細胞はCTLの攻撃から逃れることができなくなり、CTL前駆体も多い可能性があるため、これまでの腫瘍抗原を標的としたがんワクチン療法よりも高い臨床効果が期待できる。

●新生血管細胞を標的とする

たとえ強力なCTLを誘導できたとしても、がん細胞がPhotoHLA分子を発現しなくなっ
たり、消失すれば、がん細胞はCTLの攻撃から逃れることができる。一方でがん細胞の栄養を補給する新生血管の細胞では、HLA分子の発現や性質が安定している。また新生血管は、がんの浸潤・増殖や転移に重要な役割を果たしている。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)や血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)を標的としたがんペプチドワクチンは、多くの固形がんにおいて効果が期待される。

●「多勢に無勢」説

1gのがんは30回の分裂を繰り返した結果、およそ10^9(10億)個のがん細胞より構成されている。臨床的にはこれ以上の大きさ、10^10~10^12個のがん細胞を相手にしなくてはならないが、ヒトのリンパ球が10^10個あるとして、この一部に強力なT細胞を誘導して1000個に1個が細胞障害性T細胞(CTL)になったとしても、がん細胞との比は1:数万であり、「多勢に無勢」で歯が立たない。これが免疫療法が有効なのは外科手術後の微少残存の可能性がある時点での補助療法と考えられてきた理由である。

現在臨床試験において注射しているペプチドワクチンの量は1~3mgであり、ペプチドの分子量を1000とすれば、注射される抗原の量は6×10^17~2×10^18分子となる。がん細胞1個あたり1000個の目印抗原を提示しているとし、ヒトの全細胞数を6×10^13個(60兆個)とすれば、仮に全身ががん細胞であると仮定しても、1回の注射で10人分の量ということになる。がんペプチドワクチン療法では、大量のペプチドを注入することによって、「多勢に無勢」の状況を打開しようとしている。


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