「がんペプチドワクチン療法」は夢の治療法か?(3)

臨床研究の現状

がんペプチドワクチン療法ガンペプチドワクチンの臨床研究は、各地の大学病院で行なわれているが、書籍『ガンペプチドワクチン療法』からその現状を概観してみる。

●膵がん
NHKをはじめとしたマスコミでも報じられたように、和歌山県立医科大学での膵がんに対するガンペプチドワクチンの効果が注目されてきたが、我々膵臓がん患者にとっては大きな期待を抱かせるものである。

膵がんに対する臨床研究は、腫瘍新生血管を傷害するVEGFR2をターゲットとした方法である。HLA-A2402陽性で、前治療のない局進行切除不能、沿革転移を有する膵がん、再発膵がん患者18名を登録して実施された。VEGFR2ペプチドの投与量を、0.5mg、1.0mg、2.0mgとし、それぞれ6名の患者を振り分けた。ジェムザールの標準投与量(1,000mg/㎡)をあわせて投与した。

  • 18名中15名に局所皮膚反応が認められた
  • 15名のうち、PD(進行)は3名のみで、PR(部分寛解)とSD(不変)が12名であった
  • CTL誘導は、1.0mg、2.0mg投与群で67%と高い陽性率であった
  • 臨床効果的には投与量による差は認められなかったが、2.0mgの投与群で全生存期間が344日と最も長く延長した。
  • 18名の生存期間中央値(MST)は7.7ヶ月であり、前治療歴のない15名に限れば8.7ヶ月と良好であった(ジェムザール単独によるMSTは6ヶ月前後であり、1.7ヶ月の延長となる)
  • ジェムザールとの併用試験で唯一効果が確認されたエルロチニブでも、延長効果はわずか0.3ヶ月(10日間)であることと比較して好成績だといえる
  • 6ヶ月を過ぎる頃からハザード比が変化している。抗がん剤と違い、ペプチドワクチンは6ヶ月程度経過しないと効果が現われないと思われる

安全性を評価する第Ⅰ相臨床試験であることを考慮すると、現在進められている第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(PEGASUS-PCスタディ)の結果が期待される。

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24ヶ月生存していたのはたった一人で、クローズアップ現代でも紹介された硲禎己(はざまていじ)さんですが、今年の8月に惜しくも亡くなられています。

膵がん以外の他の腫瘍の臨床試験については生存率曲線は載せられていない。

●膀胱がん
4

●腎がん

6例に投与中であり、途中経過。

5

●肝細胞がん

  • 26例のすべての末梢血液中ペプチド特異的CTLの増加が認められた
  • 複数患者のがん組織内にCD8陽性CTLが多数浸潤していることが確認された
  • 画像評価で60%でSD(不変)、1例に腫瘍の消失や縮小が認められた

●大腸がん

  • 12例中1例で腫瘍が完全に消失。3年経過後も再発なく健在である
  • 4例で腫瘍の増大が、4~7ヶ月間くい止められた

7

●食道がん

完全消失(CR)が1例、SDが3例、PDが6例であった

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10

●肺がん

完全奏功と部分奏功ともにない。成績が悪いがん。

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