「がんペプチドワクチン療法」は夢の治療法か?(5)

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【情報を追加】最下段にペプチドワクチンに関する情報を追加しました。

一週間ぶりの更新です。年末にも書いたとおり、3月中旬まではめっぽう忙しく、ブログの更新は後回しの処遇を受けています。しかし、先週東京大宅医科学研究所の中村祐輔先生の講演はぜひ書いておかなければと、筆(キーボード?)を執りました。

ガンペプチドワクチンとは何か、どのようにして効果が期待できるのかなどの点は、『ガンペプチドワクチン療法』中村祐輔著に書かれていることであり、このブログの11月22日などで詳しく紹介しているのでそちらになる。
著書では生存率曲線が紹介されているのは県立和歌山医大の膵臓がんのデータだけであったが、今回の講演では大腸がんの生存率曲線も紹介された。順に内容を紹介する。
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●癌ペプチドワクチンの作用機序
作用機序として3点がある。それらが科学的に証明されることによってこのワクチンが世間に受け入れられるかどうかが決定される。巷の「免疫療法」はこうした科学的証明が不十分なまま「自由診療」という形で実施されているが、そのような非科学的な態度を取るつもりはない。

1. 樹状細胞の提示されたペプチド抗原によるCTLの刺激
ペプチドワクチン療法を受けた患者血液中におけるペプチド特異的CTLの増加があるか?

登録症例888名のうち、

  • 43%でがんが憎悪(効果なし)
  • 42% がんの進行が(2~35ヶ月)抑制された
  • 15% がんの縮小が見られた

によって、CTL(細胞障害性T細胞)が誘導されていると推測できる

2. 増加したCTLのがん組織へのホーミング
ペプチドワクチン療法を受けた患者の癌組織内におけるCD8陽性T細胞の増加が認められるか?

国立がんセンター東病院の症例により、患者の肝臓内腫瘍の周りにCD8陽性T細胞の浸潤が顕微鏡で確認できた。

3. CTLの増加の細胞障害性物質(パ-フォリン・グランザイム)によるがん細胞への攻撃
ペプチドワクチン療法を受けた患者血液から分離・増殖させたペプチド特異的リンパ球によるHLA拘束性・抗原分子特異的な細胞障害活性の検出ができるか?

患者から採取した血液中のリンパ球が、試験管内で食道がんの細胞を攻撃し、がん細胞が破裂することが確認できた。

以上のように、間接的ではあるが(というのは、実際の患者のがん細胞を攻撃しているCTLを確認することは、人体実験でもしない限りは難しい)ペプチドワクチンによってCTLが誘導されて、がん細胞を攻撃しているのが確認できたとしている。

●生存率曲線
下は大腸がんの生存率曲線である。説明の必要もなく、ワクチンの効果は絶大である。パニツマブ、BSCのMST(生存期間中央値)は6ヶ月ほどであるのに、ワクチンのそれは14.7ヶ月と延びている。
1

県立和歌山医大の膵臓がんの最終的なデータが示された。『がんペプチドワクチン療法』では途中のデータであったが、今回は全員の死亡後のデータとなっている。


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ただし、症例数がn=15となっている。著作ではn=18であった。この3人は前治療がある患者であり、それを除いたデータである。11月22日のブログのデータには赤(実線)と青(点線)の両方のグラフがあり、青の曲線を今回は採用している。
対照群となるGEM投与群のデータは和歌山医大における63例であろう。しかしこれは対照群としては適当だろうか? GEMのMSTが5.65ヶ月とは悪すぎるのではないか? 今回も日本膵臓学会「膵癌登録報告2007」のデータ(下)と合成してみた。

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書籍では「ジェムザール単独によるMSTは6ヶ月前後であり」とあるが、対照群が違えばMSTだって違ってくるだろうから、悪いデータを好んで持ってきたということではないだろう(と思う)。しかし、合成したグラフを見ると差が歴然としている。私のデータ選択ミスなのか?

しかし、この合成したグラフを見ても、がんペプチドワクチン療法はいずれの点でも上側にある。ということは、最悪でも「悪くなるはずはない」ということだ。

●中村先生が強調していた点をふたつ。
抗がん剤で免疫力が落ちている患者ではワクチンの効果は小さい。できれば再発予防に使うのが効果的だと思うが、臨床試験の設計ではジェムザールとの併用でしか認めていただけない。

下の図は患者のリンパ球がワクチンに陽性かどうかで分けたものである。リンパ球がワクチンに反応する(免疫力が弱っていない)患者の成績は非常によいことがよく分かる。抗がん剤を投与して「もう打つ手がない患者」が今回の対象である。従って免疫力が残っていない患者も多いわけである。このワクチンは手術直後などのがんの初期に使えば、より効果的であるはずだ。
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もうひとつは政治の問題。日本のがん研究費は少なすぎる。国民の命を保証する予算になっていない。「ものからヒトへ」と公約したが、実際は公約にはほど遠い現実だ。

膵臓がん患者、他のがん患者のためにも、このワクチンの実用化を期待したい。

(おわり)


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