「膵臓がん患者と家族の集い」のご案内


5/19『膵臓がん患者と家族の集い』

【日 時】2024年5月19日(日) 14:00~16:00(開場:13:45)
【会 場】大田区産業プラザPiO 6階D会議室
【参加費】1,000円
【対 象】膵臓がん患者とその家族、ご遺族
【定 員】60名
【内 容】
   第1部 ミニレクチャー:HIFU(強力集束超音波治療法)の治験とは」オンコロ:金川潤也さま他
   第2部 患者・家族の交流会
申込締切は5月16日(木)19:00です。

詳しくはオフィシャルサイトで

「がんペプチドワクチン療法」は夢の治療法か?(4)

がんペプチドワクチン療法への疑問

がんペプチドワクチン療法

第4の治療法になるかと期待がふくらんでいるがんペプチドワクチン療法であるが
、素人の患者が思いつくままに疑問点を挙げてみたい。

「がんペプチドワクチン療法」と、遺伝子工学を駆使した新しい夢の治療法であるかのように報道されているが、本質的には、これまで世界中で研究されてきたが標準治療として採用されることもなかった樹状細胞療法の一種である。それでは何が新しいのか。

セレンクリニックなどが行なっている樹状細胞療法は、体外で樹状細胞(実際は単球等の前駆細胞から生育させた樹状細胞)に患者のがん組織から抽出したがん抗原を取り込ませたあとで体内に戻し、リンパ球にがんの情報を与えて教育する。そのリンパ球が体内を循環してがん細胞を見つけて殺す。対してがんペプチドワクチン療法では、合成したペプチドを皮下注射し、皮下組織あるいは表皮組織にある樹状細胞に取り込ませて、この樹状細胞がリンパ節に移動してリンパ球を教育して細胞障害性T細胞(CTL)とし、がん細胞をやっつけるんだ、ということになっている。また、遺伝子工学を駆使して、がん細胞の目印となるペプチドを人工的に合成することも違いのひとつだ。

中村祐輔『がんペプチドワクチン療法』の臨床編にある膵がんの臨床試験結果、生存率曲線を下に示す。(和歌山県立医大の膵がん臨床試験は、がん細胞を標的としたものではなく、がん細胞が栄養補給のために自ら作る新生血管の腫瘍新生血管増殖因子を標的としたものだが)

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和歌山県立医大の臨床試験対象患者のステージは書かれていないが、切除不能膵がんということからステージⅣa、Ⅳbであろうと思われる。比較の対象として、日本膵臓学会の学会誌「膵癌 Vol22.1」に「膵癌登録報告2007」がある。その中の切除不能膵癌患者(ステージⅣa、Ⅳb)の生存率曲線を下に示した。

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これを見ると、2001~2004年の1020症例においてMST(生存期間中央値)は7.8ヶ月であり、両者のMSTは同じである。3年生存率は3.2%となっている。2001年にジェムザールが膵がんの抗がん剤として保険適用承認されたが、それ以前とは明らかに生存率が違っている。

この二つのグラフを重ねたものが次のグラフである。

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18症例のデータと1020症例のデータを同じ土俵で比較すべきではないが、一定の傾向は読み取れると思う。

  • がんペプチドワクチンの方が生存率はよいように見えるが、違いはあってもわずかである
  • 治療開始初期は生存率が高くなっているが、臨床試験であることを考慮すれば当然である。臨床試験の対象となる用件として「3ヶ月以上の生存が期待できること」を要求されるのが通常である。つまり、条件の良い患者を選んでいるということ。
  • 一方で、ペプチドの投与量が0.5mg、1.0mg、2.0mgと異なる患者のデータである。全員の投与量が2.0mgであれば、これよりもよい結果となることも期待できる
  • MSTは7.7と7.8ヶ月であり、差はない。(前治療歴がなければペプチドの方が8.7ヶ月というが、それにしてもわずかである)書籍では「ジェムザール単独によるMSTは6ヶ月前後であり」とあるが、その根拠が不明である。
  • 24ヶ月で22%の生存率は、たった一人の硲さんが生きていたからであるが、今年の8月に亡くなっている。つまり、3年目で生存率ゼロということ
  • 1020例では3年生存率3.2%、ペプチド群は0.0% MSTのわずかの差をいうよりも、こちらの差の方が大きい
  • がんペプチドワクチンは副作用がないから生活の質(QOL)が維持できるという。しかし臨床試験はジェムザールとの併用試験であり、ジェムザールの副作用はあったはずである。これだって決して軽い副作用とは思えなかった。
  • がん細胞ではなく新生血管の阻害を対象とした試験でこの程度の成績である。他のがんで、がん細胞を相手にした試験成績はもっと悪いだろうと予測できる

これでは”夢のワクチン”と言うには早すぎる。ジェムザールが効かなくなり、「もう治療法はありません」と言われたときの次の選択肢という程度ではないだろうか。
(がんペプチドワクチンは、効果が現われるまで半年ほどの期間が必要である。「もう選択肢はありません。あとはホスピスですね」と言われてから、慌てて打っても間に合わないかもしれない)

●その他の疑問点

  1. オンコアンチゲンと名付けたがん特異的な抗原はほんとうにあるのか。あるとすればどうしてこの程度の成績なのか。
  2. 樹状細胞はウィルスなどの侵入時には、リンパ球を教育して退治するという役割をするが、がん細胞に対してもその仕組みが有効だとは認められていない。
  3. がんがあるから治療するのである。つまり、患者の体内には「がん抗原」はたくさんあるはずである。がんの目印はたくさんあっても、強力な免疫抑制状態になっているからがんを攻撃することにならないのではないか。
  4. T細胞がCTL化するのに樹状細胞は必要ないのではないか。がん細胞とT細胞を一緒にしておけば、樹状細胞があってもなくても時間をかければCTLが誘導される。つまり、抗原を提示することががん細胞を殺すことに必須ではないのではないか。
  5. CTLが誘導されたというが、in vitro での観察である。インターフェロンγ産制があったからCTLが誘導されたと結論しているだけである。患者の体内のがん組織にCTLが群がっていたという解剖結果はあるのか。
  6. CTLが誘導できたから長く生存できたと単純に言えるのか。CTLが誘導できるほど患者に免疫力があったから長く生存したのではないのか。関連性がある=因果関係がある、とは言えまい。
  7. 樹状細胞はほんとうにペプチドを取り込むのか。取り込みが悪いから欧米では電磁パルスで樹状細胞の表面に穴を開けて注入するようなことまでやっている。それほどペプチドの取り込みの悪い樹状細胞に皮下注射しただけでペプチドが取り込まれるとは思えない。
  8. 10人分のペプチドを投与するから「多勢に無勢」は解決できると言うが、樹状細胞はそんなに多くない。Tリンパ球が直接ペプチドを認識するのではない。樹状細胞を経由するのである。樹状細胞が受け取りきれないほどのペプチドを投与しても「多勢の無勢」を解消できるはずもなかろう。
  9. 皮下注射で大量のペプチドを体内に入れてもムダになっているのではないか。
  10. 強力なCTLを誘導するためには自然免疫系が元気でなくてはならない。ジェムザールとの平行投与は、患者の免疫力を低下させ、がんペプチドワクチンの効果を著しく減少させているのではないか。

もちろん、がんペプチドワクチン療法はまだ第Ⅰ相臨床試験の段階だ。結論を出すには早過ぎよう。仮に今のジェムザール程度の効果しかないとしても、耐性ができてジェムザールが効かなくなったときの次の選択肢ができるということだけでも存在理由がある。
今進行しているPEGASUS-PCの試験結果を待ってから結論を出しても遅くはない。


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