立花隆の『思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む』

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【日 時】2018年12月23日(天皇誕生日) 13:10~16:30(開場・受付:12:50ごろ)
【場 所】JR京浜東北根岸線 大森駅東口から徒歩4分 Luz大森 4階 入新井集会室
【参加資格】膵臓がん患者とその家族、遺族
【参 加 費】500円(会場使用料及び資料代)
【定 員】 130名
【内 容】
●講演「私が手術、抗がん剤をやめたわけ」:待夢さん、SAKUさん
●患者さんどうしの情報交換会
●二次会(希望者だけ)

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1週間前の放映であるが、NHKスペシャル『立花隆 思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む』でこんなシーンがあった。立花隆が一昨年に膀胱がんを告知され、NHKはその手術の様子や治療の経過を密着して追ってきた。(立花隆のたくましさには頭が下がる) その映像の中で、立花隆が幾種類ものサプリメントを服用しているシーンである。「たくさんの方が、これがいい、あれがいいとサプリメントを送ってくるので、義理で飲んでいるんだよ」と言っていた。勧める方は善意のつもりで送っているのだろうが、それを義理ででも飲んでいると言うから呆れてしまった。

番組の内容は、さすがはNHK、よく取材している。民放の「これでがんが治る」というワイドショー的な番組とは大違いだ。がんの狡猾さ、治癒の難しさはよく分かった。しかし、それでもどうすればがんを治すことが可能なのか。その一端でも触れてほしかったが、立花隆では期待する方が無理か。タイトルは「思索ドキュメント」だが、立花隆の思索パターンでは、多分自分の膀胱がんも治せまい。

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それは別にして、番組の内容は一部興味のあるものだった。がん細胞が転移や浸潤をするとき、人間が進化の過程で獲得してきた能力を活用しているというのである。

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例えばHIF-1という遺伝子。がん細胞は分裂して大きくなるに従い、その中心部には十分に酸素が行き渡らず、低酸素状態になる。しかし低酸素状態でも細胞が生きていけるようになるのがHIF-1(低酸素誘導因子)である。HIF-1はVEGF、bFGF他40以上の血管新生促進因子の産生スイッチを入れる『マスタースイッチ』である。だからHIF-1をブロックしてやれば、がん細胞は死ぬはずである。膵がんのがんペプチドワクチンがVEGF2をターゲットにしているのとは比べものにならないほど強力なブロックになるはずだ。しかし、実はHIF-1は生物が胎児のころに重要な役割を果たしている。胎児の細胞がまだ低酸素状態の時にHIF-1が重要な働きをしているのである。HIF-1をブロックした胎児マウスは正常に出産することができないで、死んでしまうのである。

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『がん細胞が低酸素の環境でも生きのびる能力を持っているのは、生命進化の大いなる記憶によるものである。』

がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」

また、がん細胞は人体の治癒メカニズムを悪用し、自らの成長を支えるため、炎症を引き起こそうとする。これに関しては、私がよく引用する『がんに効く生活』に詳しいから、長くなるが引用してみる。

近代病理学の父と言われるウィルヒョーは1863年、殴られた場所や靴や
仕事の道具などで繰り返し摩擦された部位にがんができた患者が何人もいることに気づいた。顕微鏡で見るとそれらのがん性腫瘍の中に大量の白血球が認められた。そこで彼は、がんは悪化した傷口を治そうとした試みの結果なのではないかという仮説を発表した。しかし、彼の理論は現実離れしたものだと、理解されなかった。

約120年後の1986年、ハーバード大学医学部の病理学教授ハロルド・ドヴォルザークは、この仮説を見直し、説得力のある論拠を掲げた。「腫瘍:癒えない傷」というタイトルの論文の中で、彼は、傷の修復に必要な炎症によって働くメカニズムと、がんの形成過程には驚くべき類似点があることを証明している。

この革新的な論文が発表されてから20年経ったが、がん専門医のあいだでは見過ごされがちだった炎症の研究に関する報告書が、ようやく国立がん研究所によって発表され、がんの成長において炎症がはたす役割が注目され始めた。そのレポートは、がん細胞が人体の治癒メカニズムを悪用するプロセスを正確に説明している。損傷した部分を補修しようと動きだす免疫細胞とまったく同じように、がん細胞も、自らの成長を支えるため、炎症を引き起こそうとする。そこでがん細胞は、すでに見てきたように、傷口の自然治癒において重要な役割を果たすサイトカイン、プロスタグランジン、ロイコトリエンといった炎症性因子を大量につくりはじめる。これらの物質は、細胞の成長を促す化学肥料のような働きをする。がんは、自分の増殖を引き起こすとともに、周りの壁を浸透しやすいものにするために、それらの物質を利用する。こうして、損傷部分を修復して体内に潜む敵を徹底的に追い払うはずの免疫システムは、がん細胞によって本来の道をはずれていく。がん細胞は、免疫システムを乗っ取ることによって自ら増殖し、体内に蔓延していくのである。炎症作用のおかげで、がん細胞は隣接する組織に侵入し、血液の流れの中に紛れ込み、植民地をつくるために遠征に出る。これが転移である。

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↑ マクロファージががん細胞(右側)の先導している。

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↑ がん細胞が炎症性因子を放出し、マクロファージが集まってくる。

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↑ がん細胞が移動能力を獲得し、「旅に出る」

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↑ マクロファージが先導して周囲の正常な細胞壁を突破しようとする

番組で、立花隆はこのようなメカニズムがあるからがん細胞は無敵であるかのような説明に終始していた。なまじ多彩な知識を詰め込んでいる立花隆の限界だろう。

しかし、がん克服をあきらめていないがん患者が考えるべきことは、体内に隠された慢性的な炎症状態が、健康にとって決定的な要因であることを理解することである。さらに精神的ストレスが炎症性物質の生産を加速させる要因であり、感情的になったり、怒ったり、パニックに陥ったりするたびに、体内では多量のノルアドレナリン(闘争か逃走反応のホルモンとして知られている)と、代表的ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌される。これらは傷を負ったときの準備をし、修復に必要な炎症性因子を刺激する。こうしたことを理解すべきである。

炎症ががんに及ぼす研究は、最近(2005年以降)の成果である。従って多くの医師が炎症をコントロールする必要性に無関心であり、巷のがん関連本でもほとんど炎症について触れられていない。

がん細胞がこのように巧妙に免疫システムを乗っ取っているからといって、解決法がないと悲観することはない。がん細胞の巧妙さは、逆に”弱点”にもなり得る。がん細胞に炎症性因子を利用させないために、私たちにできる自然な解決方法がある。それは、炎症を促進する毒素を生活環境から排除すること、がんに対抗できる食物を摂ること、感情のバランスに配慮し、適度な運動をすることである。炎症という側面から、玄米菜食や瞑想、運動が説明できるようになったのである。心を穏やかにして生活することが、治癒には”絶対に”必要なのである。

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立花隆の『思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む』” に対して1件のコメントがあります。

  1. physiophile より:

    とてもいいブログ文章です。これを拝読して、いろいろな知識をえました。医療関係者ですか、最新の科学研究結果までもご存知なので、本当に癌に詳しいね。

  2. ink より:

     すばらしい記録を有り難うございます。立花氏の番組内でのまとめの言葉には、物足りなさを感じていたので、このページを読んでスッキリです。NHKのこの番組のことを自分なりにブログに書いた後で、検索して伺いました。私は2004年に上顎がん、半年後にリンパ節転移、2005年に乳がんを経験し、その後星野式ゲルソン療法を自己流で行なってからは無事に過ごし、約5年経ちました(食事療法は、癌の性質によっては追いつかない事があっても、やっぱり有効みたいです)。ちょっぴりほっとしつつ、今後も注意してゆこうと思っています。このブログ全体が、とても勉強になります。頭頸部癌も外観、意思疎通、食生活などに密接な部分なので苦労されている方が多いです。同病の患者仲間に少しでも役立てばと、ブログ改良を心がけています。もしおさしつかえなければ、リンクさせていただいてもよろしいでしょうか。「いつも+」http://design-search.jugem.jp/です。

  3. K より:

    ありがとうございます!

  4. キノシタ より:

    Kさん。
    NHKスペシャル『立花隆 思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む』の再放送があります。
    12月13日16:45~ NHK総合です。 

  5. K より:

    素晴らしいブログですね! 番組は 観られませんでしたが、面白く拝見しました。
    ただ情報を 集めて、公開しているブログも いいのですが、貴殿のブログには
    それだけではなく、その先にある 癌克服に向けてのアイデアと生きる希望が
    あります。私の妻も 闘病中ですが、あなたのブログを読むと、じゃあ キミは
    具体的に どんなアクションを 起こすのか?と 問われているような気がします。

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