膵癌患者の糖尿病対策:緩やかな血糖値管理で良い

膵臓がん患者にとっては、がんの治療と同時に糖尿病対策も大切です。糖尿病を併発する場合が多いからです。膵臓を全摘出している場合はインスリンの注射が欠かせませんし、部分摘出あるいは手術ができなかった場合も、膵臓の機能に何らかの影響が及ぶことが多いのですから、日常的な血糖値の管理が重要です。

私の場合では、膵頭部をわずかに残して膵体部・膵尾部を切除し、インスリンを分泌するβ細胞が多く存在する部分を切り取ったわけです。それにもかかわらず必要な量のインスリンが分泌されていました。それはごく少量のSU薬・アマリールを服用していたためかもしれません。しかし昨年末頃から食後血糖値が300mg/dLを超えることがありました。考えられるのは、甘いものやビールを摂りすぎたこと、食事が糖質の多いものに偏っていたことが一つ。もしかするとアマリールの二次性無効(長期間飲み続けると次第に効かなくなる)によるものかもしれません。今後どのように糖尿病への対策・血糖値の管理をしていくべきなのか、そのためにも、ここで糖尿病に関する基礎知識を再確認しておこうと思います。

結論めいたことを箇条書きにします。

  • 2型糖尿病とは、その人にとって必要な量のインスリンが産生されず、その結果三大栄養素である糖分・脂質・タンパク質の利用が妨げられて起こる全身病である
  • インスリンは「ホルモンの王様」といわれる。ブドウ糖の吸収、糖質をエネルギーに変えるたり脂質に変換する、アミノ酸からタンパク質を合成する、などのために絶対に必要で、健康であるためには重要なホルモンである
  • 血糖値は、あくまでも一つの指標であり、血糖値が高いとその影では脂肪やタンパク質の利用も悪化しているということを意識すること
  • 血糖値を下げることは”目的”ではなく、必要なインスリンが作られるようにする、あるいは、インスリンの必要量を少なくて済むような身体、生活をすること

この点を誤解している糖尿病専門医や患者が多い。がんの治療において腫瘍マーカーを下げることが目的だという医者はいないだろう。目的は腫瘍を大きくしないこと、できうるならば治癒したいのであって、治療の効果が出ているかを確認するために腫瘍マーカーやCT撮影をするのです。血糖値測定も同じです。

  • 血糖値を下げるのはインスリンだけであり、100種類以上の遺伝子に作用するのもインスリンだけである
  • 血糖値を上げるのは糖質だけである
  • 身体に必要な栄養素を欠かさずに血糖値を下げるには糖質制限食が良い

がん患者の糖尿病治療(血糖値管理)における重要点

  • 食事:糖質制限食あるいは地中海食を中心に、必要な栄養素とカロリーを摂る(野菜ジュースだけという極端なゲルソン療法などは論外)
  • 運動:運動によって血液中のブドウ糖を消費する。また、少ないインスリンでも代謝がコントロールできる身体になる
  • 睡眠7時間以上の睡眠を確保する。1日だけの睡眠不足でも、耐糖能が悪化してインスリン抵抗性ができる
  • ストレス:長時間のストレスは筋肉以外を虚血状態にし、膵臓のβ細胞が損傷されてインスリンの産生が悪くなる
  • 以上のことを徹底的におこなってもなお血糖値が高すぎるときにだけ、インスリンを注射する。他の糖尿病薬はできる限り服用しない。

アマリールを飲んでいる私が、このように書くのは矛盾していると思われるかもしれません。理由は、まだまだ食事・運動(睡眠は充分でストレスはない)でコントロール可能だと考えていること。インスリン注射は、そのときどきの必要量ぴったりにすることが難しく、確実に過大量になる期間がある。そしてインスリンには細胞分裂を促進する作用があり、体内にがん細胞があった場合に再発、増大を誘発する恐れがある、と考えられるからです。アマリールなどのSU剤にも発がん性や別の副作用があるのですが、どちらを選ぶかは迷うところです。食事と運動で、インスリンも何も使わずに済むことがいちばん良いのです。

血糖値とHbA1cの目標値

  • HbA1c:7.0 %
  • 空腹時血糖値:150 mg/dL
  • 食後血糖値:250 mg/dL (できれば220 mg/dL)

これは厳格な血糖値管理よりも、緩やかな管理の方が良いというアメリカで2008年におこなわれたACCORD試験の結果によるものです。この試験に関しては江部康二先生のブログこちらも)と日経メディカルオンラインの記事をリンクしておきます。江部先生の話の方がわかりやすいですね。

簡単に言ってしまえば、厳格な血糖値管理を続けると低血糖による死亡率が高くなり、そのデメリットが血糖値管理のメリットを上回るということです。

DPP-4阻害剤を使うことも主治医と検討しましたが、このインクレチン関連製剤には、T細胞の活性化を妨げて免疫機能を阻害するという作用があります。またインスリン様成長因子(IGF-1)の分泌に関連し、がんとの関係の深い炎症作用とも関連しています。これらから発がん性が疑われます。実施に動物実験では肝臓癌が優位に増加したと報告されています。身体に膵臓がんの腫瘍が残っているかもしれない癌患者としては、愉快な話ではないです。

(一介のがん患者の考えですから、鵜呑みにしないで、治療には主治医とよく相談してください)


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膵癌患者の糖尿病対策:緩やかな血糖値管理で良い” に対して2件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    Kathyさん。
    高血糖はすぐに死ぬことはありませんが、低血糖ではその危険があります。
    低血糖を放っておき血糖値が50mg/dl以下になると中枢神経の働きが低下、血糖値が30mg/dl以下になると意識レベルが低下し、昏睡状態から死に至ることもあり、注意力が低下して、転落・交通事故などの重大な事故につながることもあります。
    IDF(国際糖尿病連合)の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」でも、推奨:低血糖とならない限り・・・・と書かれているのはそのためです。
    普段より激しい運動をした時や労働量が多過ぎた時にも低血糖が起こりやすくなります。
    空腹で血糖が低い時の激しい運動は避け、普段より運動量が多くなる時には運動前に補食を摂るようにしたほうが良いそうです。
    私の場合は、食後高血糖を避けようと40分ぐらいウォーキングを続けたので、それが原因の一つかもしれません。

  2. kathy より:

    情報、ありがとうございます。
    あまり神経質にならないほうがいいということですね。
    私は、CTや超音波検査の前など、食事ができなくて50くらいでも、普通に動いていましたが、案外、低血糖のほうが注意が必要なのでしょうか。

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