微小カプセルで膵がん治療 東大チーム、マウス実験

ナノキャリアを利用したドラッグデリバリシステム(DDS)で、膵臓がんのマウスの70日後の生存率が100%という驚くような成績の記事が各社に載っています。

膵臓(すいぞう)がんの細胞に抗がん剤を直接届ける治療の効果を、マウスを使った実験で確認したと東京大学の研究チームが発表する。がんの進行や転移を抑制し、生存率が高まったという。膵臓がんは難治がんとして知られ、研究チームは「治療方法の確立につながる」と期待している。24日付の米科学アカデミー紀要電子版に掲載される。
抗がん剤は通常、血管の壁の隙間(すきま)から薬の分子が漏れ出てしまい、本来届いてほしい部分に十分な量が行き渡らない一方で、正常な細胞に悪影響を与えて副作用が出る。
チームは標的となる細胞だけに抗がん剤を届ける「ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)」という手法を検証。DDSでは、複数の分子をまとめて球体にする。血管の壁からは漏れないが、がん組織の血管の壁は隙間が広いため、壁を通り抜けて標的の細胞に届く。
チームは、膵臓がんを自然発生させたマウス30匹を▽DDSによる治療▽通常の抗がん剤治療▽治療をしない??の3グループに10匹ずつ分けて調査。
DDS治療では、がんの進行が止まり全てが70日間生きた。2匹は56日目時点で肝臓への転移があった。他の2グループは56日で半数が死んだ。転移は、いずれも肝臓に8匹ずつ、消化管に7匹ずつあった。

これは25日付の毎日新聞の記事ですが、神奈川新聞・カナロコ『東大教授の研究グループが川崎特区事業で取り組み本格化へ』にはもう少し詳細に書かれています。京浜臨海部国際戦略総合特区・殿町地区(川崎市川崎区)に開設される「ものづくりナノ医療イノベーションセンター」のプロジェクトの一つとして計画されているようです。

2年前の2011年10月には、この技術開発の詳細がマイナビに載っていました。マイナビニュース『東大、膵臓がん治療も可能な精密粒径制御による高分子ミセル型DDSを開発
いよいよマウス実験にまでこぎ着けたというわけです。

固形がんでは、正常組織に比べて新生血管の増生と血管壁の透過性に加えて、組織から高分子物質の排出を担うリンパ系が未発達であるために、高分子物質が集積しやすい環境になっていることが知られており(Enhanced Permeability and Retention:EPR効果) 、ナノキャリアはがん組織に効果的に集積することができる。
実際に、ドキシルやアブラキサンなどのDDS製剤が日本においても承認され、実用化されているが、それらの使用はカポジ肉腫や卵巣がんなどに限定されており、難治がんとして知られる膵臓がんなどに対して有効なDDSは未だ開発されていないのが現状である。
これは膵臓がんが、物質の漏出性に乏しい血管構造を有しており、がん細胞を覆う線維組織がバリアとなり、薬剤やDDSの集積性が著しく低下しているためであると考えられている。つまり、90nmおよび130nmのナノ粒子製剤であるドキシルとアブラキサンは、膵臓がんにおいて血管から腫瘍組織に移行し、がん組織を浸透することが困難であるということが考えられるという。

膵臓の腫瘍細胞にまで抗がん剤が届かないのが、膵臓が難治がんといわれる一つの原因なのですが、この技術でヒトにも同じように効果があるのか。わくわくしますね。膵臓がん患者としては、1日でも早い実用化を期待したいところです。

この注目の論文は米国科学アカデミー紀要(PNAS)の6月25日号に掲載されており、こちらからAbstractとFull Textを見ることができます。生存率曲線だけ掲載しておきます。

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