がんは遺伝子の異常以外でも、エピジェネティックに生じる

近藤誠氏の「がんもどき理論」の根幹は、がんは遺伝子の病気であり、遺伝子は細胞分裂で子孫に継承されるのだから、発生の初期に転移するかどうかは決まっている、というものです。がんもどきと本物のがんは腫瘍がまだ機械の目では見つけられないほど小さいときに決まっている。だから手術も抗がん剤も無駄だと主張しているのです。

今日のニュースで京都大学が、がんは遺伝子制御の異常でもできることをiPS細胞を使った実験で「確認」したと報じられています。

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がんは、遺伝子が傷つくなどの変異の積み重ねによってできると考えられてきたが、遺伝子を制御する仕組みの異常によっても引き起こされることを、京都大のチームが人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った実験で確認した。

チームは、細胞を初期化させiPS細胞を作製する際に使う4つの遺伝子をマウスに投与、腎臓の変化をみた。7日間投与し続けた後、初期化が不完全な状態で7日間放置したところ、腎臓に腫瘍ができた。腫瘍の細胞は小児腎臓がんの腎芽腫によく似ていた。遺伝子そのものに傷などは見つからなかった。このため遺伝子の変異ががんの主な原因ではなかったことが確認できた。遺伝子を制御する仕組みの異常でがんが発症したと考えられるという。

科学技術振興機構のこちらのページにより詳しい発表が載っています。

遺伝子の変異によらないがん化の仕組みを解明 iPS細胞技術の応用

研究グループは、生体内で細胞を不十分な形で初期化すると、エピゲノムの状態が変化し、がんの形成を促すことを見出しました。

iPS細胞とがん細胞は無限に増殖する能力を持つという点で、共通の性質を持っています。しかし、がんは遺伝子の変異が積み重なって生じるとされていますが、体細胞を初期化してiPS細胞が生まれる際には遺伝子が変異する必要はありません。そこで、マウスの体内で一時的に初期化因子(Oct3/4,Sox2,Klf4,c-Myc )を働かせ、不十分な初期化を起こしたところ、DNAのメチル化パターン(エピゲノム)が大きく変化し、様々な組織で腫瘍が生じました。腎臓でこのようにして生じた腫瘍は、小児腎臓がんとして一般的な腎芽腫と組織学的・分子生物学的特徴が似ていました。この腫瘍の細胞を調べたところ、遺伝子の変異は見つからず、エピゲノムの状態が変化し、多能性幹細胞と似たパターンに変わっていることが明らかとなりました。また、腫瘍の細胞を初期化したiPS細胞からは正常な腎細胞が作られることを示しました。これらの結果から、エピゲノムの制御が、特定のタイプのがんで、腫瘍形成を促進する可能性が示されました。

エピジェネティック理論が正しいことが一定程度確認できたということですね。場合によっては腫瘍が正常細胞に戻ることも示されました。これはエピジェネティクスによって、がん細胞を消失させることも可能だと言えるのではないでしょうか。(どのマスコミにも「エピジェネティクス」という言葉が登場しませんね。)

エピジェネティック理論は、がんは遺伝子だけでできるのではないことを研究している学問分野です。今回の研究は、このことを「確認」した画期的な研究だと言えるでしょう。このブログではがんとエピジェネティクスの関係を紹介しています。

がんは遺伝子の異常以外でも、エピジェネティックに生じる

エピジェネティックな変化だから、末期がんでも治ることがある

その一部を再掲します。

遺伝子の実態はDNA(デオキシリボ核酸)で、ワトソンとクリックが発見したように二重らせんの構造をしています。しかしDNAは二重らせんのままむき出しになっているのではなく、そのまわりに多様な有機分子を結合しています。いわば腕をワイシャツの袖で覆っているようなものです。DNAは衣服をまとい装飾品で飾りたてているのです。

この有機分子が、遺伝子を活性化(タンパク質を作る指令)させたり不活性化させたりするのです。遺伝子には自分自身を活性化させることはできません。どういうタイミングでどの遺伝子を活性化させるかは、細胞核の外からの情報として与えられます。しかもこれらの有機分子は長時間同じ遺伝子にくっついている、場合によっては子孫にまでその状態が引き継がれるのです。遺伝するのは遺伝子だけではないのです。

「エピジェネティクス」とは、遺伝子の働きを調整するこれらの分子が、どのようにして遺伝子をコントロールしているのかを研究する学問分野で、21世紀のこの十年間で急速に発展している分野です。

特にがんに関するエピジェネティクスは良く研究されています。がん細胞内では多くの遺伝子がメチル基を失って「脱メチル化」していることが知られています。これによって遺伝子活動の異常が生じます。細胞増殖を抑制できなくなるのです。がんは遺伝子の突然変異によっても生じますが、多くが遺伝子の脱メチル化なのです。

突然変異は元には戻せませんが、脱メチル化は、エピジェネティックなものなので元に戻すことができるのです。この点に将来への大きな希望があります。

「本物のがんなら俺の将来はすでに決まっている」などと、近藤理論を信じて「がん放置療法」に引っかかっている患者には、どうか眼を覚まして欲しいものです。近藤氏は最新のがん研究にはまったく疎い先生らしいですね。このような似非科学理論に自分の命を託すことは馬鹿げています。こちらのSho先生の最新ブログも参考になります。

こうした研究が、がん治療へと応用される日が早く来ることを期待しています。


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