今日の一冊(57)『すい臓がんから奇跡の生還』
前日の雨のしずくが白い斑点となって丸いぼけを作り、幻想的です。
膵臓がんから生還するためにやったこと
闘病記はよほどのことがない限りは買わないのだが、タイトルに惹かれて買ってみた。
星田一郎さんは、72歳で、2008年10月に健康診断で膵頭部に腫瘍が見つかります。ステージは4a。十二指腸と胆管、門脈に浸潤していました。11時間の手術で、これらの悪い部分を切除、ただし胃は全温存できました。
術後の抗がん剤を2年と1ヶ月続け、8年後の現在も再発・転移もなく元気です。その闘病の日々を記録しています。
『奇跡の生還』とのタイトルですが、本を読んだ私の感想を勝手に記すと、
- すい臓がんの疑いから手術までが2週間と早かった。(私とほぼ同じです)すい臓がんは足が速いから、手術可能なら早いほうが良い。
- 書かれてはいませんが、リンパ節への転移はなかったのではないでしょうか。
- 術後補助化学療法としてジェムザールと投与したが、副作用がひどくて主治医の勧めでTS-1に切り替えた。当時はジェムザールが唯一エビデンスがある抗がん剤であった。(私もジェムザール)しかしその後、TS-1の方がより生存率を高めると分かった。星野さんはそれ以前にTS-1に切り替えたのが効果的だった。
- 妻や子どもたちの温かい支援があった。
- 葬儀の準備をし、費用まで支払った。墓も用意して「死」の準備をした。
- 同時に2年生存率20%に是が非でも入ってやる!、5年生存率5.5%に何としても、という目標を持って生きた。
- パソコン・ボランティアなど、自分の特技を社会のために活用した。
- ウォーキングを欠かさず、趣味のリフォーム、日曜大工などで体力をつけた。
が”奇跡”のもとではないかと感じます。
ニンジンジュースは止めといた方が良い
星野さん自身は「TS-1とニンジンジュースの総合作用だと勝手に思っている」と書かれていますが、それでいいんです。自分が信じることをやれば良い。
ただ、私としてはニンジンとリンゴの特製ジュースに効果があるとは考えていません。ニンジンを大量に摂ると、血糖値の管理に影響するでしょう。すい臓がんを切除した患者では注意が必要です。
ニンジンジュースで治ったんだ!それじゃ私も・・・と受け取らない方がよいのではないかと、思います。もちろん、納得して信じられるのなら、やってみることは良いかも。
『奇跡の生還』というのは誇張でしょう。稀な症例には違いないですが、奇跡というのは一万分の一とか、百万分の一であって、100人に一人は奇跡とはいえない。(すい臓がんで手術適用できた患者の10年生存率は1~2%です。米国の統計ですが)
宝くじに当たるほどの『奇跡』ではないのだから、ステージ4aでも、全員に希望はありますよ。
それでも星野さんの生き様は手本にすべき見本です。「死」を準備して「百まで生きる」ことを目標にする。立派です。私はそれに加えて「百まで生きて、がんで死ぬ」を目標にしています。どうせ死ぬなら、がんも悪くはない。