臨床研究法が成立
7日の参議院において、臨床研究法が全会一致で可決成立しました。
2013~14年に相次いで発覚した「ディオバン事件」や武田薬品工業による高血圧治療薬の不適切事例をはじめとする研究不正を機につくられた臨床研究法。
製薬企業の資金提供を受けて実施する臨床研究と、未承認または適応外の医薬品を用いる臨床研究を「特定臨床研究」と定め、規制の対象としています。
今日の一冊(70)『悪の製薬:製薬業界と新薬開発がわたしたちにしていること』でも紹介したように、製薬企業の資金提供を受けた臨床試験は、そうでないものよりも統計的有意差が「でやすい」という研究があります。
臨床試験が正しく行われ正しく発表されなければ、EBMもガイドラインも信頼性がなく、結局は患者の治療を誤った方向に導くことになります。
診療試験の実施者には計画と届出を、製薬企業には資金提供状況の公開を義務づけた臨床研究法が成立したことは、諸外国に比べて著しく遅れていた日本の臨床試験公開制度に一定の前進となるものです。
この法律が成立したら、医師らの負担が増え、統計解析を担っている生物統計家が萎縮して、臨床研究が撲滅するとの論調もあります。しかし、諸外国では行われている制度なのに、日本だけが実施できないということは無理筋でしょう。
医者が統計を知らなすぎることも一因でしょうね。医師の教育プログラムには統計学はないに等しいのだから、医者が統計オンチなのは仕方がないのかもしれません。従って製薬企業の統計専門家の援助がなければ、試験結果の解析もできない。資金も製薬企業からとなれば、そりゃ否定的な結果は出しづらくなることは想像に難くない。
研究の届出だけでなく、さらに言えば、否定的な研究結果も含めて、全ての研究結果を2年以内に公表することも義務づけるべきでしょう。「公表バイアス」をなくさなければ、EBMの基礎がゆがんでしまうのですから。
医師が臨床研究を知ることも必要ですが、大手マスコミの日経メディカルが、臨床研究結果の情報操作に積極的に加担しているという現状があるようで、これを阻止することも必要そうです。
ディオバン事件のほとぼり冷めて復活した
製薬企業とメディアの「不適切な関係」
http://www.medical-confidential.com/2017/06/17/post-4957/
(下の方に該当記事があります)