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今日の一冊(70)『悪の製薬:製薬業界と新薬開発がわたしたちにしていること』

読み終えるのに少々エネルギーが必要でした。同じ著者の『デタラメ健康科学』はわりとすらすらと読めたが、翻訳者が違うせいでしょうかね。しかし、内容は詳細でしっかりと根拠があり、しかも「驚く」内容です。

デタラメ健康科学---代替療法・製薬産業・メディアのウソ

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ベン ゴールドエイカー
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過去記事 ↓

製薬企業の資金援助を受けた臨床試験は肯定的結果が出やすい

臨床試験の多くが製薬業界の試験援助で行われるが、外部資金に頼らない臨床試験に比べて実際以上に見える肯定的な結果を生みやすい。コレステロール低下薬スタチンの例(この薬がたびたび取りあげられている)では、192件の臨床試験のうち、業界の資金援助を受けた臨床試験は、そうでない試験に比べて好意的な結果を出す割合が20倍も高かった。スタチンが特別なのではない。精神治療薬でも抗がん剤でも糖尿病治療薬でもほとんど同じ傾向である。

そうした試験では、肯定的な結果を出すためにあらゆる手法を使う。臨床試験の対象患者は、既往症のない、若い、大量の薬を服用していない、アル中ではない、身体状況(PS)のよい「理想的」な患者ばかりであり、現実の治療現場の患者とはかけ離れている。既に効果が認められている治療薬があるにもかかわらず、試験対象の薬とプラセボとを比較する。つまり、「無いよりはまし」な薬でも統計的有意差が証明できる。

悪の製薬: 製薬業界と新薬開発がわたしたちにしていること

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メタアナリシスも公表バイアスによって歪められる

さらには、否定的な臨床試験の結果は公表されない可能性が高い。これは「公表バイアス」と言われるものだ。抗うつ薬レボキセチンとプラセボとの比較臨床試験は7件あったが(これを探すのに一苦労した様子)、1件だけ肯定的な結果が出て学術雑誌に発表された。しかし、その10倍の患者を対象とした試験では否定的な結果となり、これはどこにも発表されなかった。抗がん剤、タフミル、コレステロール低下薬、肥満治療薬など、どの薬でも同様であって、レボキセチンが特殊なのではない。否定的な論文を公表しないことで、本来なら死ななくても良いはずの何十万人もの患者の命が奪われている。実際他人事ではなく、あなたにも起きうることです。

エビデンスレベルの最上段はランダム化比較試験のメタアナリシスとされているが、そもそも否定的な論文が隠されていれば、メタアナリシスは肯定的な結果にならざるを得ない。関連死などの副作用も考慮することができない。

先日インフルエンザに罹ったとき、私は医者にも行かず治療もしなかったが、受診していれば多分タフミルが処方されただろう。しかし、ロシュ社は、規制機関の要求を無視し、タフミルの臨床試験の結果の公表をあれやこれやの理由で出ししぶり、2014年になってやっと全てを公表した。その結果はロシュ社が宣伝したこととはずいぶん違い、当初の服用の目的である入院や合併症を減少させるという十分な証拠はなかった。成人での発症時間を7日から6.3日へと減少させる程度であり、副作用も含めて見直しが必要であると報告された。(本書の執筆の時点では公表されていなかった)

権威のある医学雑誌も製薬企業からの資金に頼っている

医学会のオピニオンリーダーとされる医者には、講演料などの名目で多額の金が製薬企業から渡っている。彼らは資金提供元の企業の薬を「より多く勧め、肯定的に論評」する傾向がある。世界的に権威があるとされる学術誌「ランセット」や「JAMA」「NEJM」誌に対して、製薬業界は広告として一社当たり年間1000~2000万ドル支出している。業界全体としては年間5億ドルを学術誌に広告費として支出しているのであり、「権威のある」これら雑誌の収入の多くが広告費に依存しているのである。

規制機関と業界の癒着の深刻さ、治験結果の改ざんと隠ぺい、研究論文の多くが製薬会社が雇ったゴーストライターによって代筆され、内容がねつ造されている。

高血圧薬のディオバン事件で明らかになったように、日本でも例外ではない。臨床試験のプロトコルを計画し、患者を集め、結果の統計解析をする(場合によっては論文を書く)のは多くは製薬会社の人間である。

臨床試験のアウトソーシング化、巧妙なマーケティング戦略などなど、目を覆いたくなるような実態が次々と披露されている。

元NEJMの編集長が出版した告発本『ビッグ・ファーマ―製薬会社の真実』は2003年の出版だが、それ以後もこの業界の体質は変わっていない。むしろ酷くなっているのではなかろうか。

ビッグ・ファーマ 製薬会社の真実

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「エビデンス、エビデンス」と声高に叫んでいる腫瘍内科医やがんの患者団体には、今のエビデンスがいかに歪められているか、ぜひ読んでもらいたい本である。

患者も情報で武装しよう

患者としてはどうすれば良いのか。この本の各項目の最後には「あなたにできること」としていくつかの提案が記されている。例を挙げれば、

  • 診察室に製薬会社のロゴの入ったボールペン、USBメモリ、マグカップ、カレンダーなど小物類があふれていないか観察する

これらであふれていたら、医薬情報担当者(MR)の訪問を頻繁に受けているのだろうから、エビデンスよりも、その会社の治療薬を勧めてくる確率が高い。医者には「先生、本当に私にはその薬が最適で、効果があるのですか、別の薬ではなぜダメなのですか」と訊いてみると良いだろう。


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