今日の一冊(102)「糖尿病と膵臓がん」長尾和宏

膵臓に関心がない糖尿病専門医

「20年間も大病院の糖尿病専門外来に通っていたのに、気づいたら膵臓がんの末期でした」とか、「糖尿病の治療はずっと続けていたけれど、膵臓の検査を受けたことは一度もありません。まさか自分が膵臓がんになるなんて」という方がたくさんいます。

こうした患者さんを、たくさん見てきた長尾先生が、糖尿病もすい臓がんも両方見てきた町医者だからこそ言えることがあるのではないか。そして、少しでもすい臓がんで命を落とす患者さんを救いたいという思いで書かれた本です。

糖尿病と膵臓がん

糖尿病と膵臓がん

長尾 和宏
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糖尿病やすい臓がんに関する知識があまりない人でも、読みやすいように書かれています。

前半は糖尿病と膵臓がんの密接な関係とか、そもそも糖尿病とは何か、そうした話が分かりやすくまとめられています。

しかし、すでに膵臓がんになってしまった患者さんにとっては、今更という感じがするかもしれません。

膵臓がん患者の血糖値対策にも

ですが、膵臓がん患者さんでは、血糖値の管理に気を遣っている方も多いでしょう。そうした場合に、9系統もある糖尿病の薬の違いだとか、低血糖が起こりやすい薬と起こりにくい薬があること、あるいはHbA1c  は低いほど良いわけでもない、そうした知識は役に立つはずです。

この前、私は久しぶりに低血糖になりましたが、低血糖になるとどんなことが起きるのか、自覚症状はどういうものがあるのか、そうしたことを知っておけば、「あっ、これは低血糖だな」と早めに気付いて、ブドウ糖や甘いものを摂るなどの対策をすることができます。低血糖で命を失わないためには大切な知識です。

糖尿病治療でのカロリー制限食と糖質制限食が論争になっていますが、長尾先生のこの問題に対する考え方も紹介されています。結論から言えば、糖質制限は必要だけれども、行き過ぎた糖質制限で逆にリスクの高まる病気があるということです。中庸が一番です。

ナノナイフは根治をめざす治療法ではない

膵臓がん患者さんにとってもいくつかの役立つ話題が書かれています。

膵臓がんは手術後の再発が多いこと、そして手術ができない膵臓がん患者さんの抗がん剤治療に対する考え方、腫瘍が局所に止まっている場合の新しい治療法であるナノナイフに対する考え方書かれています。

ナノナイフは、がん細胞を死滅させることが目的であって、その治療法だけで根治が望める治療法ではありません。

ナノナイフ治療は、あくまでも延命もしくはボーダーラインの患者さんの術前治療として、ダウンステージングを目指して行われる治療法です。腫瘍を小さくして手術ができるように持ち込むことが主な治療目的です。これは重粒子線治療や陽子線治療などにも当てはまる考え方だと言えます。

高カロリー輸液+抗がん剤で命を縮める

膵臓がんの末期の患者さんの場合、食べることができないからと、高カロリー輸液をしながら抗がん剤を続けている方もいますが、それはかえって命を縮めることになります。

高カロリー輸液には高濃度のブドウ糖が含まれています。ブドウ糖はガンの大好物なのです。口からあまり食べられないからと言って、高カロリー輸液に頼れば、がん細胞の方が先にブドウ糖取り込んでしまい、がんを喜ばせるだけになることがあります。酸素吸入も同様です。

「高カロリー輸液を追加すると、水分過剰により咳や痰で苦しむだけでなく、さらにそこに抗がん剤を加える行為は、ブドウ糖でがん細胞を喜ばせて毒物で全身を鞭打ちしているような状態だと思います」と書かれています。

延命治療のはずが宿命になる、そうしたリスクがあることを覚えておいてください。抗がん剤治療でも言えることですが、無理な延命治療は逆効果になる場合が多いのです。

高カロリー輸液を中止しただけで、ご飯が少し食べられるようになる患者さんも多くいます。色々な延命処置をこらえて自然に任せていれば、たとえ死期が近づいても、脱水による咳や痰に苦しむこともなく、穏やかに過ごすことができます。たとえがん性腹膜炎であっても、亡くなるその日まで、何かしら口から食べて、トイレで排泄して、話ができることがいくらでもあるのです。

腹部超音波検査で膵臓がんを早期発見

糖尿病で専門医にかかっている患者さんは、過度の飲酒、喫煙、慢性膵炎、家族歴、肥満の項目に注目して、それらが当てはまる人は、年に1回の腹部超音波検査を受けるべきです。そうすれば一センチ以内で初期の膵臓がんを見つけることができ、膵臓がんで亡くなる方がずっと減るに違いありません。


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