NHKスペシャル 第2集は「エピジェネティクス」
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日曜日に放送された『NHKスペシャル シリーズ人体Ⅱ「遺伝子」第2集 ”DNAスイッチ”が運命を変える』の主役は「エピジェネティクス」でしたね。
この記事を最後までお読みいただければ、サイモントン療法(瞑想)とエピジェネティクスの関係も理解していただけるでしょう。
体の設計図である遺伝子を「腕」だとすると、その遺伝子を「シャツ」のように覆っているのがものがあり、それらは主にメチル基をくっつけたり離したりします。
がん細胞内では多くの遺伝子がメチル基を失って「脱メチル化」していることが知られています。これによって遺伝子活動の異常が生じます。細胞増殖を抑制できなくなるのです。がんは遺伝子の突然変異によっても生じますが、多くが遺伝子の脱メチル化なのです。突然変異は元には戻せませんが、脱メチル化は、エピジェネティックなものなので、元に戻すことができるのです。
このブログでは、既に2013年には「エピジェネティクス」について取りあげています。
運動はエピジェネティックな変化を生み出す
糖尿病やがんなどの原因にもなる臓器の炎症を促進する遺伝子の働きが運動後に抑制されることを確認。
インターバル速歩を始める前はメチル化の割合が加齢とともに減り、働きが強まって炎症を起こしやすい状態だった。だが、速歩を始めて半年後にはメチル化の割合が高くなり、健康な若者のレベルに近づいた。
炎症を促進する働きがある別の遺伝子でも同様の変化が確認でき、運動による効果が多面的に現れることも判明。半年後にメチル化の割合に変化が見られた遺伝子は約30個に上る。肥満やがん、うつに関係する遺伝子も含まれている。
緑茶に含まれるカテキンは、がん抑制遺伝子をONにする
地中海料理に欠かせない「オリーブオイル」と「ナッツ」です。被験者にオリーブオイルとナッツを毎日食べてもらい、DNAのスイッチに起きる変化を、長期間にわたって詳しく調べる実験が行われています。これまでの分析によると、肥満や高血圧など、メタボの予防に関わるDNAのスイッチが変化して、健康に良い効果をもたらすことが分かってきました。
「緑茶に含まれるカテキンの一種には、『がんを抑える遺伝子』のスイッチをオンにする効果がある」ことなどが明らかになってきています。
瞑想は、エピジェネティックに働きかける
こともわかっています。もちろん、サイモントン療法もそれに含まれます。
エピジェネティクスの研究で明らかになったのは、毎日30分の瞑想を8週間続けることで著しく遺伝子発現が変ったということです。つまり、瞑想はがん遺伝子のスイッチをオフにして、健康を促進する遺伝子のスイッチをオンにすることができるということです。
免疫細胞もエピジェネティックに・・・
また、このようなこともわかりつつあります。
孤独感を感じている被験者は、炎症にかかわる78の遺伝子が過剰発現となっており、逆に抗体の生成や抗ウィルス反応にかかわる131の遺伝子においては、発現量の低下が見られたという。
つまり、心のありようが、遺伝子にエピジェネティックな変化を起こすのです。
がんの自然緩解とエピジェネティクス
がん細胞と正常細胞の相互作用は、がんの進行に拍車をかけることもあれば、その進行を止めて自然寛解に導くこともある。がんの自然寛解は、体細胞突然変異説(SMT)では”奇跡”のように見えるが、組織由来説からみれば、がん細胞の正常なふるまいの範囲なのである。この自動修正は、幹細胞でも、完全に分化した細胞でも起きる。
がん細胞の周辺の微小環境に注目する組織由来説では、細胞間の相互作用が破綻すると、それによって細胞の内部環境が変化し、非メチル化などのエピジェネティックな変化が起きてがんが発生すると主張する。発がん物質は細胞の相互作用を破綻させ、その結果がんが引き起こされる。
がんの進行の第一段階はエピジェネティックな変化であり、それは逆行させることもできる。相当進んだがんでも、適切な条件を整えれば、エピジェネティックに逆行させることが可能である。微小環境論では、その適切な条件とは、免疫反応と、周囲の健康な細胞との相互作用であるとする。
運動をし、瞑想をし、カテキンを摂り、幸福感のある生活を送っていれば、がんがエピジェネティックに自然緩解することもあるのです。
サイモントン博士がサイモントン療法を始めた当時は、こうした知識もありませんでした。まさに実際の臨床の場から経験的に確信を深めていったのです。
しかし、近年になって遺伝子研究が飛躍的に進歩して、多くのことが明らかになりつつあります。
『膵臓がん患者と家族の集い』でサイモントン療法を取りあげるのは、こうした根拠があるからです。