膵臓がんを治すために、あなたにできること(2)
膵臓がんを治すためにはこういうことをすればいいということはいくつかあります。しかし、難しく言っても、継続してそれを実行することは多くの場合困難ではないでしょうか。
ですから、いくつかの重要なポイントに絞って書いてみたいと思います。
標準治療を軽視しないが、代替療法も無視しない
第一番目は、標準治療を軽視しないということです。そして標準治療だけで治そうともしないことです。
そして標準治療は、ガイドラインで内容を確認してください。ガイドラインとは膵臓がんであれば『膵がん診療ガイドライン 2019』が発行されています。そしてガイドラインは数年に1度改定されますから、常に最新版を参照するようにしてください。
確かに多くのがんが治る時代になってきました。しかし膵臓がんは特別です。標準治療を重視しながらも、それにプラスして代替療法と言われるものも取り入れていくべきです。
どのような代替療法が良いのかは、後述します。
がんは千差万別
同じ臓器の同じステージのがんであっても、数ヶ月で亡くなる方もいれば、再発や転移を繰り返しながらも5年から10年元気に生きている患者もいます。
その違いはどこにあるのでしょうか。運の良し悪しもあるのかもしれません。人間の体力も人それぞれですから、あるいは遺伝的な要因によって違ってくるのかもしれません。
しかし、難治性がんと言われる膵臓がんであっても、克服した患者さんには共通点があるように思います。
例えば佐藤典宏先生の『がんが治る 人治らない人』では、その違いは、患者さん自身に総合的な力があるかないかだと述べています。
佐藤先生の言う「総合的な力」とは、
- 受け入れる力
- 情報を集める力
- コミュニケーション力
- 体力
- 免疫力
の五つだとあげています。
またケリー・ターナー女史の『がんが自然に治る生き方――余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと』では、
- 抜本的に食事を変える
- 治療法は自分で決める
- 直感に従う
- ハーブとサプリメントの力を借りる
- 抑圧された感情を解き放つ
- より前向きに生きる
- 周囲の人の支えを受け入れる
- 自分の魂と深くつながる
- 「どうしても生きたい理由」を持つ
の9つをあげています。
「運動」が含まれていない訳について、著者は「おわりに」で次のように説明しています。
言うまでもなく「運動」は、調査で浮上した七五の要素のうちでも、上位に入る一つでした。けれどもわたしはあえて、「運動」を含めて、本書を一〇要素の構成にはしませんでした。その理由は、ほとんどの場合がんと診断された直後には身体が弱りすぎていて、運動には適さないからです。何ヶ月かたって、治癒を実感し、元気を取りもどしてくると、多くの人が定期的に運動を始めます。
運動が不要ではなく、何ヶ月か立つと、治癒を実感している患者は当然運動を開始しているのです。
1.死ぬ覚悟を決める
私が、膵臓がんな治るために必要など感じていることを述べてみます。第一に膵臓がんを告知されたら「死ぬ覚悟を決めなさい」ということです。
膵臓がんと告知をされるとほとんどの人が頭の中をもも真っ白になるでしょう。がん全体では10年生存率が60%と言われています。がんも治る時代になってきましたが、膵臓がんは別物です。手術ができない膵臓がんの場合の10年生存率は数パーセントでしょう。運良く手術ができても、再発する確率が非常に高いがんが膵臓がんです。
ですから「受け入れる力」にも関係しますが、膵臓がんと告知されたら高い確率で近い将来に死ぬのだと覚悟を決めましょう。
これは何も希望を求めない、治ることを諦めるとかそういうことではないのです。現実的、統計的に言えば、そういった将来像が見えてくるからです。それを正面から認めようということです。
そして「近い将来死ぬ」その前提で、自分がやるべきこと、やれること、何が最も可能性が高い治療法や対処法であるのか、 膵臓がんを克服するための戦略をよく考えて描くことです。
高い確率で死が待っているという覚悟の上で行動するには、しっかりと情報を集め、それものんびりはしておられませんから、効率よく的確に、より正しく科学的な情報を集めた上で、判断しなければなりません。
あるいは満足できる情報が集まらないかもしれませんが、その時は直感に従って判断をすればいいでしょう。直感というのは、無意識の知性が決めているので、皆さんも経験があるでしょうが、結構正しいものです。
もうひとつ言えば、「欲」を捨てるということです。
もっと生きたい、がんが治りたい。それも「欲」であり、「煩悩」です。「欲」があると正しい判断ができません。
やるべきことはしっかりとやる。しかしその結果は神様にお任せして受け入れる。そういった覚悟が必要です。
100%確実に膵臓がんが治るという方法などあるはずもないのですから、 やってみた結果は受け入れる覚悟で膵臓がんと対峙しましょう。
がんになったことをきっかけに、自分なりの死生観を考えてみましょう。「死」とは何か、人はなぜ生きてなぜ死ななければいけないのか。死ぬということは本当に怖いことなのか、恐るべきことなのか。
「せっかく膵臓がんになったのですから」そういった人生の根本的なことに思いを馳せてみませんか。
2.抜本的に生き方を変える
これまでの生活を見直して、生き方を根本的に変えましょう。
食事はバランスの良い物を取るようにして、あなたの体力に合った運動を続けるようにしましょう。
食事に関しては、米国対がん協会の『「がん」になってからの食事と運動』などを参考にしましょう。例えば地中海食のようなものが推薦されています。
「がんになったら四つ足動物の肉を食べてはいけない」などという根拠不明の迷信もありますが、逆にがんになったからこそ積極的に肉を食べてタンパク質を取るべきです。
がん細胞を兵糧攻めにするとだという治療法も紹介されていますが、がん細胞は兵糧攻めにあったとしても、周囲の細胞から強引に栄養成分を奪ってきます。兵糧攻めにしても真っ先に弱っていくのは正常な細胞であり、それを続けるとがん細胞よりも先に患者の方が亡くなってしまいます。
多くのがん患者が、がんではなく栄養失調によって免疫力が低下して、細菌に感染するなどして亡くなるのです。
また、膵臓がん患者さんはインスリンが出ないことが多いですから、緩やかな糖質制限食が推奨されます。
緩やかな糖質制限食とは、例えば、朝食や昼食は糖質を制限しないけれども、夕食はご飯を抜いておかずだけにする。そういった食事内容です。私もそれをずっと続けています。おかげでHbA1cも6.8%と良好な血糖値管理になっています。
ケトン食のような厳格な糖質制限食は勧められませんが、緩やかな糖質制限は常に気にかけておいたほうがよろしいと思います。
そしてストレスをためないようにして、十分な睡眠をとるようにしましょう。
膵臓がんだと言われる前までは、家族のためや会社のために、自分のことは後回しにして、働いてきた方が多いのではないでしょうか。
しかし膵臓がんだと言われたのですから、これからは「まずは自分が何をしたいのか」それを優先するようにしましょう。
名誉や地位や肩書きなど、がん治療には何の役にも立ちません。 もちろん治療にはお金が必要ですからある程度の経済的な基盤は必要ですが、将来のために株式に投資をしてとか、預金通帳の金額が増えるのが生きがいだという、そういった生き方はこの際改めましょう。
3.情報を集めて、治療法は自分で決める
情報リテラシー、情報を集めて活用する力のあるなしが、がん患者の予後を大きく左右します。
例えば治療法は主治医でおまかせ、 Ca19-9の意味すらもよく分かっていなくて、数値が1000を超えたと言われても、それがどういう事態で何を意味しているのかもよくわかっていない患者さんも中にはいます。
それはそれで、がんに関することはあまり考えなくて、ただ漫然とのんびりと生きている。それも一つの生き方であり、幸せながんとの付き合い方なのかもしれません。
しかし、あわよくばがんを治したいということなら、まずは自分のがんの状態を知ることです。
膵臓の役割だとかステージの意味、どんな治療法があるのか、そういった基本的な情報を「がん情報サービス」を使って知識を蓄えましょう。
そうすれば、自分の1年後、2年後あるいは数年後の姿がある程度見えてくると思います 。当然ですが膵臓がんでは満足するような希望の持てる情報は少ないです。
標準治療だけでは限界があります。かといって標準治療を一切諦める、そして代替医療に全てを賭けるということは全く無謀でありナンセンスなことです。
標準治療にプラスして自分でもできること、自分のがんの治療チームの一員として参加するんだと、そのような覚悟で、効果的なそして自分に合いそうな代替療法を見つけましょう。
標準治療以外にも、ハイパーサーミアだとかナノナイフ、もちろん重粒子線、陽子線治療もそうですけれども、効果が期待できる治療法はまだ残されています。治験もあります。
例えば先頃行った佐藤典宏先生の講演会の動画がありますが、これにはそうした標準治療以外の治療法の情報もエビデンスに基づいて紹介されています。
こういったしっかりとした根拠のある情報、希望の持てる情報を集めて自分に適用できるのかどうかを考えてみましょう。
何か気がかりなことがあれば、そのキーワードをこのブログの検索窓入れてみてください。より信頼できる情報へアクセスする橋渡しができるかもしれません。
<つづく>