全ての臨床試験の登録を

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このブログでは3月に取り上げたバルサルタン問題が、やっと大きく報道されるようになってきましたね。厚生労働省も第三者委員会を設置するようです。どのような学者や医者が参加するのかだいたい予想が付きそうです。厚生労働省の落とし所と決めた結論に沿うような報告書になるような、従順な人物だけが選ばれるのでしょう。

データの改ざん、論文の捏造の事件ですが、本質は製薬企業と大学、研究者が周到に計画した「大規模な経済事件」です。ありもしない効果を宣伝して、国民が拠出した保険料から莫大な金額を不当に受け取ったのですから、刑事告発するべきでしょう。

国立がん研究センターの科研費の私的流用事件も、刑事告発なしでうやむやになっています。大学の内部調査や第三者委員会など、強制力のない調査で真相が解明されるとは思えません。統計データの解析に当たったノバルティス社の元社員は、調査に協力していないのだから、ここは強制力のある検察の出番だろう。

いま、大学病院では医師主導の臨床試験が活発です。理由は「儲かるから」と臆面もなく言います。どうでも良いような臨床試験に参加させられる患者こそ、いい迷惑です。期待したような結果が出なければ、その試験はどこにも発表されない。ときによってはデータを操作して期待した結果に沿うようにする。日本の臨床試験の信頼性は既に地に落ちています。試験に協力する患者はますます少なくなりそうです。

全ての臨床試験を登録し、その資金をどこが出しているのかを明確にすること。試験の結果も全て公開するなど、透明性を確保することが必要でしょう。

ごくわずかの違いしかない臨床試験のデータで、そのデータも信頼できないとなれば、EBMなんて絵に描いた餅。がん患者も寄って立つ根拠を失ってしまいます。


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全ての臨床試験の登録を” に対して2件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    佐藤様
    詳細な解説をいただき、ありがとうございます。
    臨床試験ではなく、臨床研究だからノ社も法に触れないと思っているのかもしれませんね。医療界における製薬企業との金にまつわる腐れ縁は、真実を歪めてしまいます。

  2. 佐藤千恵子 より:

    今回のノバルティスファーマの京都府立医大の件は臨床試験(治験)ではなく臨床研究です。
    ノバルティスファーマは世界2位の製薬会社で日本の製薬会社とは売り上げ規模が全然違います。
    ノバルティスは米国でも医師への金銭授受などで確か起訴されているような記憶があります。
    ◎ 以下は日経バイオテクのメルマガに記載されたメルマガ筆者のあとがきをコピペさせていただきます。
    治験(臨床試験)に関しては、治験実施状況報告書があり登録が義務付けられてます。
    (日経バイオテク・メルマガより抜粋)
     府立医大は昨晩、記者会見を開催し、以前から何らかの不正があったのでないかと指摘されてきたKYOTO HEART Study(KHS)の調査結果を公表しました。その内容は、日本の臨床研究の信頼性を根底から揺るがすものでした。臨床研究の結果は、企業の都合でどうにでもできることが分かってしまったからです。
     治験と異なり臨床研究では、ほとんどの場合、第三者がデータの確からしさを監査することなく、性善説に基づいて実施されてきました。それでもその結果には一定程度の信用力があると考えられてきたのですが、今回の件でそんなやり方はもう通用しなくなるでしょう。会見後、歩きながら吉川敏一学長と二言、三言、話をすることができたのですが、学長は最後に、「モラルがあると思っていた」とうめくようにつぶやきました。
     一連の経緯の詳細は以下の記事をご覧ください。
    速報、京都府立医大がKYOTO HEART Studyの調査結果を公表、データ改ざんを確認、修正すると有意差は消滅
    https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130711/169548/
    KYOTO HEART Studyに関する府立医大の調査は最悪の結果に、主要評価項目であるイベント発生の有無を操作、吉川学長は「モラルがあると思っていた」
    https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130712/169554/
    ノバルティス、社員が臨床研究に関与、論文では明示せず
    https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130523/168494/
     府立医大は、大学の権限ではこれ以上の調査はできないといっています。今回の調査では、臨床研究の解析担当者であり、データ改竄の実行者として最も可能性が高い、ノバルティスファーマの元社員の聞き取り調査が、本人の拒否により行われていません。しかし、事実を追求する活動をこれで終わりにしてはいけません。ここで終わりにしては、ノバルティスに経済的逃げ得を許すことになります。それだけは避けなければなりません。
     ノバルティスはKHSなど一連の臨床研究の結果を利用し、バルサルタンに心血管イベントを減少させる効果があると積極的に宣伝し、バルサルタンの売り上げを伸ばしてきました。つまり、本来は存在しない価値を上乗せし、本来は得られない利益を得てきた訳です。臨床研究の効果によりどの程度の余剰利益を得たかを算出し、少なくともその分をはき出させなければ、社会正義に反することになります。
     患者は偽造されたデータにより錯誤させられ、本来よりも価値を大きく見せられた製品を買わされています。最適な治療を受けるための機会も奪われています(バルサルタン以外が最適だった可能性がある)。また、国や健康保険組合は、本来、支払うべきではない金をバルサルタンに支出させられた可能性があります。また、歴史ある府立医大(一般には誤解されているようですが、府立医大の起源は明治5年まで遡り、京都大学医学部よりも古い)は、著しく評判を落とすことになりました。患者、大学、保険組合が協力して、民事、刑事両面での追求をやるべきです。その方が、真実の究明が進むはずです。会見で吉川学長も、「元社員の刑事責任を問えないか、弁護士と相談している」と発言していました。
     
     それにしても、今日、ノバルティスが公表した「京都府立医科大学によるバルサルタン医師主導臨床研究に係る調査報告発表に対するノバルティスファーマの見解」の内容はお粗末です。
    ノバルティス、府立医大の調査結果に反論、「要請は断っていない」
    https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130712/169556/
     冒頭に、「京都府立医科大学はデータ操作については、『意図的かどうかは認定できなかった』と述べています。ノバルティスも、同大学の報告からは恣意的なデータの操作があったとは確認できないと考えております」と記しており、意図的と確認できなかったことをことさらに強調しています。府立医大が意図的と断言しなかったのは、元社員の聞き取りができなかったため。会見では、記者から何度もなぜ意図的と言えないか追求されていましたが、吉川学長以下出席者は、苦り切った表情をしながら、ぎりぎりのところで発言を踏みとどまっていました。
     吉川学長以下、府立医大幹部は、このノバルティスの見解を読んで、どう感じているのでしょうかノバルティスは4月に外部専門家による調査を開始したとしていますが、なぜか5月には元社員の退職を認めてしまい、府立医大の調査を困難なものにしてしまいました。
     米国と異なり、日本には懲罰的賠償金の制度が無いことが歯がゆいばかりです。もし米国で同じことが起こったなら、即座に大規模な弁護団が形成され、新聞に原告募集の公告が掲載され、集団訴訟による厳しい追及が始まることでしょう。

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