新しい膵臓がん治療法の開発
膵臓がんは非常に予後が悪く、日本の5年生存率はわずか1割程度です。特に難治性の膵臓がんに対する新しい治療法が、岡山大学や富山大学の研究チームによって開発されました。
膵臓がんの特徴と新治療法
研究チームは、膵臓がんがグルコース(ブドウ糖)を取り込みやすいことに着目し、その特徴に合わせた薬剤を開発しました。従来のホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を改良し、グルコースを付けたホウ素薬剤「G-BSH」を作成。この薬剤は、従来のBPA薬剤に比べて8~10倍のホウ素をがん細胞に取り込ませることができました。
BNCTの仕組み
BNCTは、ホウ素を取り込んだがん細胞に中性子を照射し、核分裂によって発生するアルファ線などの粒子で細胞を破壊する治療法です。今回の研究では、膵臓がんの遺伝子を調べ、がんの好みに合わせたホウ素薬剤を使うことで、治療効果を高めることができると示されました。
この治療法は、がん細胞にホウ素を選択的に送り込むことで、正常な細胞への影響を最小限に抑えます。
今後の展望
膵臓がんは体の奥に位置するため、実際の治療では手術によって開腹し、中性子を照射する方法が有効とされています。研究チームは、5~10年後の臨床試験を目指し、より効果的なホウ素薬剤の開発を進めています。