【最新統計】膵臓がん5年生存率は依然として厳しいが、改善の兆しも。その理由を読み解く
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先日、厚生労働省から「全国がん登録」に基づく最新の5年生存率が公表されました。その結果、がんの部位によって生存率に非常に大きな差があることが改めて浮き彫りとなっています。
特に注目すべきは、数あるがんの中でも最も治療が難しいとされる「膵臓(すいぞう)がん」の現状でしょう。
1. 依然として全がん種の中で「最低」の数値
今回の報告によると、2018年に新たにがんと診断された方の5年生存率において、膵臓がんは13.5%という結果でした。
前立腺がん(92.5%)や女性の乳がん(88.4%)が90%前後の高い水準にあるのと比較すると、その厳しさは際立っています。肺がん(39.6%)や肝がん(34.4%)と比較しても半分以下の数値であり、早期発見の難しさや進行の速さが数字に表れているといえるでしょう。
2. わずかではあるが、確実な「改善」
しかし、絶望的なデータばかりではありません。前回の集計(2016年診断例)と比較すると、状況は少しずつ変化しています。
- 2016年診断例:11.8%(男性 11.9%、女性 11.8%)
- 2018年診断例:13.5%(男性 13.5%、女性 13.4%)
わずか1.7ポイントの上昇ではありますが、厚生労働省の報告書でも、膵臓がんは2016年比で生存率が「上昇」した部位として明記されました。統計学的なばらつきを考慮しても、この「ごく僅かな前進」は、現場の医療従事者や患者さんにとって大きな意味を持つはずです。
3. なぜ生存率は向上したのか?推測される3つの理由
膵臓がんの生存率が向上し始めている背景には、どのような要因があるのでしょうか。専門的な知見を踏まえ、以下の3つの理由が考えられます。
① 化学療法の進歩と「術前補助療法」の普及
近年、膵臓がんに対する抗がん剤治療は飛躍的に進化しました。「FOLFIRINOX療法」や「ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法」(アブラキサン+ジェムザール療法)といった強力な多剤併用療法が登場しています。これにより、以前は手術が不可能だった症例でも、薬でがんを小さくしてから手術に持ち込む(術前補助療法)ケースが増えたことが、生存率を押し上げる要因となったのではないでしょうか。
② 早期発見に向けたスクリーニングの強化
膵臓がんは初期症状がほとんどありません。しかし最近では、糖尿病の急激な悪化や家族歴をきっかけに、超音波内視鏡(EUS)などを用いた精密な検査を早期に行う体制が整いつつあります。地域の診療所と拠点病院が連携する「尾道方式」のような、早期診断ネットワークの広がりも無視できない要因かもしれません。
③ 手術手技と周術期管理の向上
膵臓の手術は非常に高度な技術を要しますが、症例の集約化や手術器具の改良により、合併症のリスクは以前より低減しています。また、手術前後の栄養管理やリハビリテーションを含めた包括的なケアが進んだことも、患者さんの予後改善に寄与しているはずです。
膵臓がんは、今なお私たちが克服すべき大きな壁であることに変わりはありません。しかし、11.8%から13.5%への変化は、医療の進歩が着実に実を結びつつある証拠ではないでしょうか。
「見つかったら終わり」という古いイメージを捨て、最新の治療と早期発見の重要性に目を向けることが、これからの時代には求められているのかもしれません。











