がんと診断されたときの向き合い方
ーー 目次 --

がんの診断と治療は、患者さんの心と体に大きな影響を及ぼします。身体的な治療に加えて、心のケアも非常に重要であり、自分らしく充実した生活を送るための鍵となります。このブログ記事では、がん薬物療法を受ける中で生じる心の負担を軽減し、困難な感情と向き合い、喜びや生きがいを見つけ、さらには病気が私たちにもたらす新たな人生の目的について考えていきます。
がん治療における心のケアの重要性
がんと診断されると、多くの患者さんが動揺し、不安や否定的な感情を抱くのは無理もないことです。こうした精神的な苦痛が長引くと、日常生活に支障をきたし、心身に大きな負担となります。以前のがん医療では身体への治療が優先されがちでしたが、近年では、がん体験者の声などを反映し、早期がんから進行がん、再発・転移がんの患者さんまで、病状にかかわらず心のケアの必要性が強く強調されています。心のケアは、日常生活の改善や痛みの軽減にもつながるとされています。
不安や落ち込みが続く、眠れない、食欲がないといった精神的・身体的につらい症状がある場合は、我慢せずに心のケアの専門家に相談することが大切です。病院のがん相談支援センターでは、患者さんやそのご家族が快適な療養生活を送るための様々な支援を提供しており、必要に応じてがん専門看護師、がん化学療法看護認定看護師、管理栄養士などの専門職につなげてもらうことも可能です。心のつらさを解消することは、がんの治療と同じくらい重要であり、早期に適切なケアを受けることで、気持ちが楽になり、より前向きな姿勢で治療に臨むことができるでしょう。
ストレス軽減と気分転換のヒント
治療中にストレスを感じることは避けられませんが、気分転換や息抜きを見つけることで、その負担を軽減できます。吐き気や嘔吐、疲労感などの副作用が出ている時でも、「好きなこと(テレビ、読書、散歩、音楽など)をして、気分転換するのもよい」とされています。また、リラクゼーションとしては、マッサージなども気分転換に役立つと述べられています。
体調が優れない時は、無理をせずに十分な休養を取ることが何よりも大切です。一度に多くのことを頑張ろうとすると、かえって疲れてしまうことがありますので、自分の体調に合わせてできることから少しずつ始めてみましょう。身体的な活動に関しては、担当医の許可があれば、散歩や軽いストレッチなど、無理のない範囲での運動は疲労感を軽減し、体力の維持・回復を助ける効果が期待できます。ただし、運動は転倒や痛みを誘発しないよう注意し、必ず医療者に相談してから行うようにしてください。深い呼吸やストレッチは、心身の緊張を和らげ、リラックス効果をもたらすとも言われています。
感情との建設的な向き合い方
がんの診断や治療は、悲しみ、怒り、不安、そして絶望感といった様々なネガティブな感情を呼び起こすことがあります。これらの感情を抱くことはごく自然な反応であり、無理に抑え込む必要はありません。
あるがん体験者は、がん告知後の動揺から術後治療の説明を聞き漏らし、後から怒りを感じた経験を語っています。しかし、自身の動揺が原因だったと気づいた後、療養手帳(日記)をつけることで、自分の体や心と冷静に向き合い、治療の経過を客観的に判断し、困難な時に当初の決意を思い出す助けになったと述べています。このように、自分の感情や体調の変化を記録することは、感情を整理し、乗り越える上で有効な手段となります。
医療者は、患者さんが抱える悩みや苦痛を理解しています。症状が出た際に我慢せず、率直に医療者に伝えることが大切です。苦しい時には「助けて」と声を出すことで、必ず支援してくれる人がいる、あなたは一人ではない、という力強いメッセージも伝えられています。
深いリラックス法と自己対話の活用
このブログでは、「瞑想」や「アファメーション」、それに類する心身のリラックス法が紹介されています。例えば、良質な睡眠を促すための工夫として、深酒やカフェインの過剰摂取を避け、ぬるめのお風呂や軽いストレッチを行うことが挙げられています。さらに、「腹式呼吸法(横隔膜呼吸法)や筋弛緩法、自律訓練法などもリラックス効果がある」とされており、これらは心身の緊張を和らげ、自己と向き合うための有効な手段となり得ます。これらの実践を通じて、日々の生活にメリハリが生まれ、心身の回復が促されることが期待できます。
自分の内なる声に耳を傾け、感情を整理する時間を意識的に持つことは、自己対話の一環です。不安や困難な状況の中でも、自分を肯定し、前向きな気持ちを育むことが、心の安定につながります。
病がもたらす新たな視点(スピリチュアリティ)
がんという病の経験は、時に人生の目的や価値観を深く問い直し、精神性(スピリチュアリティ)を喚起するきっかけとなることがあります。あるがん体験者は、「治療のために生きているのではなく、幸せになるために生きているのだから」という言葉とともに、病気が自身にとっての「一番の原動力」となり、仕事の継続や同じ病で悩む人々の力になることに新たな生きる目的を見出したと語っています。
これは、単に病気から回復するだけでなく、人生において新たな意味や価値を見出す過程を示唆しています。たとえ病気によって身体的に失う部分があったとしても、「自分そのもの」は何ら損なわれないという考え方もあります。大切なのは、「がんになったこと」に思い悩むのではなく、「これからどう生きていくか」に目を向け、自分にとって最善の方法で病気と向き合い、付き合っていくことです。困難な状況の中にも希望を見出し、日々を大切に積み重ねていくことは、がんという経験が、私たちに新たな生きる意味と、人生への深い感謝をもたらす可能性を示しています。
さまざまなサポートの活用
がん治療の道のりにおいて、一人で全てを抱え込む必要はありません。医療者(医師、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど)やがん相談支援センターは、患者さんとそのご家族の強力な味方です。
経済的な心配がある場合にも、高額療養費制度、医療費控除、傷病手当金などの公的制度があり、加入している民間保険の活用も検討できます。これらの制度について詳しく知りたい場合は、「よろず相談(医療相談室、相談支援センター、相談窓口)」に相談することが勧められています。
また、地域の患者会や支援グループは、同じ経験を持つ仲間との出会いを通じて、孤独感を軽減し、貴重な情報交換の場となります。自宅での療養を希望する場合は、訪問看護師、在宅医、ケアマネジャーなどの在宅医療・ケアの支援体制を活用することも可能です。
結び
がんと診断され、治療を進める日々は、多くの困難と感情の波を伴うものです。しかし、この経験は同時に、自分自身と深く向き合い、人生の優先順位を見つめ直し、新たな価値観や生きる目的を見出す機会にもなり得ます。
このブルグでも、具体的な副作用対策や医療制度だけでなく、患者さんやご家族の「心のケア」がいかに重要であるかを繰り返し強調しています。気分転換を見つけること、感情を素直に受け入れること、そして医療者や支援者、周囲の人々に「助けて」と声を出すこと。これらはすべて、治療の質を高め、患者さん自身の「自分らしい生活」を支える大切な要素です。
がんという困難な旅路を、医学的なサポートと心のケア、そして自らの内なる力を信じることで、より豊かで意味のあるものに変えていくことができるでしょう。あなたは決して一人ではありません。