エレガントな宇宙と宇宙を織りなすもの

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する
宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 上
宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 下
生命とは何か―複雑系生命科学へ

丸善書店を散策。福岡伸一の『動的平衡』が目に留まったので、ぱらぱらと見てみたが、『もう牛を食べても安心か』や『生物と無生物のあいだ』で述べられているシェーンハイマーの動的平衡とそれに関する彼の理論以上のものが無く、同じようなことを書いているように思われたので、『生命とは何か-複雑系生命科学へ』を買うことにした。

ブライアン・グリーンの『宇宙を織りなすもの 上・下』も思い切って買った。彼の前著『エレガントな宇宙』の続編ともいうべき著作である。『エレガントな宇宙』では「超ひも理論」をわかりやすく説明していたが、『宇宙を織りなすもの』は、一般相対性理論の描く「時間と空間の正体」とは何かという点に焦点を当てて書かれている。

アインシュタインの一般相対性理論はマクロな物理的世界に適用されて、その正しさが証明されている理論であり、シュレーディンガーとハイゼンベルクの量子力学はミクロな物理的世界を説明する理論である。ところがこの二つの理論を同時に適用すると、ある現象の起こる確率が100%以上になるというような矛盾が生じることになる。つまりはこの二つの理論もこの宇宙の法則を正しく説明しているとは言えず、まだ人類は世界を真に理解する方法論をもっていないということである。


こで登場してきたのが「超ひも理論」である。幅がゼロで長さがこの宇宙と同じ大きさの「ひも」の振動の仕方により種々のクォークや素粒子が出現するという「仮説」である。私たちの身体も分子・原子、つまりは素粒子やクォークでできているのであるから、それらが宇宙の振動によって出現している、宇宙とダンスを踊っている、生命も宇宙の全ての存在の影響を受けているのだということになる。チベット医学では生命は 宇宙とダンスをしていると考えているというが、まさに「超ひも理論」を数千年も前の祖先は感じ取っていたかのようである。

『生命とは何か』は、動的システムとしての生命を複雑系としてとらえて論じている。例えば癌と免疫との関係を考えてみたとき、ナチュラルキラー(NK)細胞やマクロファージ、T細胞、B細胞など多くの細胞が関与する生体内化学反応によって細胞の機能が達成されるのだが、これらの細胞が外部(敵)の存在を知るための情報伝達手段として細胞膜表面のレセプターが重要である。細胞が細胞膜を通して、外部のある場所の分子濃度の閾値に応じて自分自身の状態を変える。これはコンピュータプログラムのif・・・Thenに例えられる。このif ・・・Thenの論理式の連鎖によって細胞内の機能が記述できるというのが、現在の分子生物学の立場らしい。

これに対して、著者の金子氏は次のように問題を提起する。分子濃度には必ず”ゆらぎ”が伴う。レセプター付近で反応に関与する分子の総数はせいぜい1000個以下という少数である。確率的に変動する量は、√N程度の揺らぎが付随している。ある濃度の閾値といった場合、1/√N、つまりN=1000であれば3%くらいは判断を間違ってしまうことになる。一つの過程で3%の誤作動をするわけで、これが連続した幾十もの過程をへて本来の機能を果たすとき、3%の誤作動をする部品を10個集めて組み立てた装置と考えても良いが、これがまともに動くとは誰も思わないだろう。しかし、生物は見事にその役割を果たしていて、問題ないように見える。

NK細胞が、癌細胞かどうかの判断をするときに3%の割合で間違って正常な細胞を攻撃すると考えてみれば、こんな物騒なことはない。しかし、そんなことはなく、間違いなく癌細胞を攻撃してくれている。こうして生命を「計算機械」やプログラム的見方では生命とは何かという問いに正しく答えることはできないだろう。

生命をダイナミックな相互作用をする複雑系としてとらえることによって、「生命とは何か」という問いに迫っていくのである。癌とか免疫とかに触れているわけではないが、生命の不思議を図や数式を使ってわかりやすく解き明かしてくれる。

宇宙・空間・時間、これも本当に不思議な存在である。(存在しているものかどうかも問題になっているようだが・・)生命も宇宙に劣らず不思議で魅力的な存在である。まして人間の「脳」は、宇宙や生命に進歩に負けず劣らず複雑で神秘的な存在である。

ストレスをなくせば全ての病気が治るとか、「これだけで●●癌が消失する」とかの単純な説明でこと足りるようには人間(生命)はできていないということだ。


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