欲と希望

「治る希望を持って」とか、よく言われますね。治らないといわれるがんでも、万が一の軌跡でも信じなければ、辛い抗がん剤に耐えられません。

マーカーが少し下がった。腫瘍が小さくなった。このまま消えてくれれば・・・と誰でも望みます。

しかし、何のためにがんを治したいのでしょうか。もちろん、生きるため。それじゃ、何のために生きるのですか。ただ、生きるだけですか。

未来に希望を持つことも大事ですが、そのために「今日」という日を、未来への準備のため、辛い抗がん剤に耐えるだけに費やしていませんか。

治ることに夢中になって、それだけにエネルギーを注いでいませんか。だとしたら、今日という二度とやってこない時間を、生きていると言えますか。

「希望」と「欲」は紙一重です。

仏教には「十悪」という教えがあります。悪い行為を十種類に分けているのですが、その十種類のなかに「貪欲」が含まれています。これは「常識レベルを超えて」欲が深く、必要以上に欲しがること、という意味です。

「治りたい」「もっと生きたい」も度が過ぎれば「欲」。欲に駆られて、効果のない抗がん剤を延々と続けることになる。

抗がん剤でがんが治ることはないのです。せいぜいわずかの延命効果があるだけ。ジェムザールは「症状の緩和効果」があるとして承認されているのであって、延命効果で承認された薬ではありません。アブラキサンやFOLFIRINOXにはわずかに延命効果があるが、せいぜい数ヶ月の単位です。

抗がん剤で延命するのは、何のためか。それは「死刑執行」を少し先延ばしして、その間に「自分の人生」をふりかえり、これからの残されて時間をどのように過ごすのがよいかを考えるために、与えられた時間です。

テロに遭って、突然命を奪われる人もいるのに、こうした時間を持てるがん患者は幸運です。


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