膵臓がんを老衰死させる研究
週刊新潮の特集記事
週刊新潮の最新号に「すい臓がんを老衰死させる画期的治療法」という特集が掲載されています。
これは東京都健康長寿医療センターの石渡俊行研究部長等の研究を紹介したものですね。
こちらにその研究論文を紹介したプレスリリースがあります。
東京都健康長寿医療センターの石渡俊行研究部長、佐々木紀彦係長級研究員、豊田雅士研究副部長らはカリフォルニア大学のマレーコーク教授らと共同で、増殖因子受容体のFGFR4の特異的阻害剤により、膵臓がん細胞の老化を誘導し除去する方法を発見しました。膵臓がんの増殖、浸潤を抑制することに加え、老化を誘導する新たな治療法は、膵癌の予後改善に大きく貢献するものと期待されます。
研究の概要
週刊誌の記事と研究論文から要点を抜き出してみました。
- 線維芽細胞増殖因子19 (FGF19)の特異的受容体であるFGFR4(エフジーエフレセプター フォー)を介したシグナル伝達は、がんの発生や進行と関係していることが報告されていました。
- FGFR4は正常のヒト膵臓組織ではほとんど発現していませんでしたが、がんが大きくステージが進んだ膵臓がん患者さんの癌細胞に多く発現していました。
- 「BLU9931」はFGFR4の細胞を増殖させる機能を低下させる特異的阻害剤である。
- がん細胞が基底膜を通過しにくくなり、がんの浸潤や転移が阻害されることが分かった。
- 阻害剤を加えた状態で細胞を培養すると DNA 障害が起き、細胞が老化することが分かった
- そもそもがん細胞とは無制限に増殖する細胞のことです。しかし老化してしまえば増えることはありません。
- さらに玉ねぎやそばリンゴなどに多く含まれているケルセチンという物質を使うとこの老化した細胞を除去することができました。
- 阻害剤とケルセチンの組み合わせてFGFR4を発現する膵臓癌については、阻害剤で老化を誘導し消滅させる可能性がある
- 老化とSASP 因子を算出させることによって、免疫システムがこのがん細胞を攻撃しやすくなる。
- 光免疫療法との組み合わせも視野に入ってきます。
- 膵臓患者の多くに発現しているFGFR4に対応する抗体と、IR700という光感受性物質を体内に注射すれば、膵臓がん細胞に光免疫療法を適用できる可能性が高くなってきます。
パンキャンジャパンでも紹介
2015年パンキャン ジャパン Awardで、本研究「膵癌における線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR-4)発現と治療標的としての可能性」が受賞しています。
少しずつですが、膵臓がんの生存率も上がってきています。
そうなんですね。頑張っていただきたいです。
基礎実験の段階ですが
希望の膨らむ研究ですがまだ基礎実験の段階です。膵臓がんはマウスとヒトで組織型が全く異なるため、動物実験が難しいのです。そして人の膵臓がんも個人差が非常に大きく、一筋縄ではいきません。
とはいえ、近年膵臓がん患者はどんどん増えてきています。極めて難治性のがんですが、期待が持てる研究成果を歓迎したいと思います。