遺伝子パネル検査が受けやすくなります
2022年度診療報酬改定
膵臓がんでも使える薬がなくなった、効かなくなったような時、最後の手段として遺伝子パネル検査を行い、遺伝子異常が見つかればそれに適合する薬が使える、あるいは臨床試験に参加することができるという方法があります。
正直なかなか敷居が高いですが、ごくわずかですがそれによって次の治療につながる膵臓がん患者さんもいます。
ところがこの遺伝子パネル検査。医療機関にとっては使いづらい制度でした。
どういうことかと言うと、遺伝子パネル検査の費用は56万円です。患者はその1割~3割を負担するのですが、医療機関の側から見ると、
現在、この遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)は、「検体提出時」(8000点)と「結果説明時」(4万8000点)とで診療報酬上の評価がなされています。
しかし、例えば「検体提出後に患者が予期せず死亡した場合など(検査のオーダーがなされてから患者に結果が説明がなされるま1か月半ほどの時間がかかるため)には、後者の点数(検査に係る費用の大半を占める)が算定できない」などの問題がありました。
「もう治療法がなくなって」から遺伝子パネル検査を行うのですから、結果の説明までに亡くなる患者さんが出るのは当然です。
死亡にいたらなくても、緩和ケアに移行すれば同様に後者の点数を請求できませんでした。(調査では4%程度のケースで8000点のみしか算定できない)
医療機関としては大幅な赤字になるので、遺伝子パネル検査に二の足を踏む医療機関もありました。。
そこで2022年度の診療報酬改定では、こうした問題点を解消し「円滑にがんゲノム医療が実施できる」体制を目指し、次のような評価の組み換えと充実が行われます。
2月9日の中央社会保険医療協議会・総会でなされた2022年度次期診療報酬改定に関する答申12によれば、次のように改定される予定です。
(現行)
【がんゲノムプロファイリング検査】
1 検体提出時:8000点
2 結果説明時:4万8000点
↓
(改定後)
【がんゲノムプロファイリング検査】:4万4000点
【がんゲノムプロファイリング評価提供料】:1万2000点
死亡や緩和ケアに移行した場合は、後者の1万2000点は請求できませんが、事前に患者からの預り金として担保しておけばリスクを避けることができます。(実際にそのような運用をしている医療機関もあるそうです)
この改定によって、より積極的に遺伝子パネル検査が行われることが期待されます。
どの段階で遺伝子パネル検査ができるか?
遺伝子パネル検査を受けるには条件があります。
- 標準治療の終了が見込まれる人
- 標準治療が終了した人
- 標準治療のない固形がん
これらの人が対象になります。
しかし患者としては遺伝子パネル検査の準備をして結果が帰ってくるまでに数ヶ月はかかるわけですから、なるべく早く手続きをしたいと思うのは当然です。
問題は「標準治療の終了が見込まれる人」とは、どの段階なのかということになります。
実際の医療現場の状況は、主治医の判断に左右されるのでしょうが、次のような例があります。
- 膵臓がんの術後再発し、アブラキサンとジェムザールの治療を開始した。この時点で「標準治療の終了が見込まれる人」として判断しても良い。
- 高齢の膵臓がん患者はFOLFIRINOXが適用にならない場合が多い。アブラキサンとジェムザールの治療を開始し、その効果がなくなって TS-1に切り替えた。この時点で「標準治療の終了が見込まれる」と判断して良い。
実際には医療機関や主治医によって判断が微妙に異なってくるかとは思いますが、自分の主治医に積極的に質問をしてみてはいかがでしょうか。
パンキャン・ジャパンでは、膵臓がんと診断された時点で遺伝子パネル検査を受けられるようにと、厚生労働省に要望を出しています。