”インチキ光免疫療法”に注意喚起

自由診療クリニックでの光免疫療法への注意喚起がNHKで報じられました。

(アルミノックス治療)の特徴、小林久隆氏の発明、楽天メディカルとの連携、そして自由診療の例と問題点についてご紹介します。


注目の新しいがん治療:アルミノックス治療(光免疫療法)とは?自由診療の現状と課題

近年、がん治療は手術、化学療法、放射線療法、免疫療法に加え、「第5の治療法」として注目される新しいアプローチが登場しています。その一つが「光免疫療法(アルミノックス治療)」です。この画期的な治療法なのですが、がん患者の期待度に利用して巷では同名の自由診療が非常に多くなっています。

そこで日本頭頚部外科学会が注意喚起の文章を発表しました。

切除不能な再発・転移性頭頸部がんを対象とした治療が、唯一承認された治療法で、世界に先駆けて日本にて開始されました。

本治療は従来のがん治療とは全く異なる革新的な治療法であることから、安全かつ適正に患者さんへ提供されるよう、学会内では厳格な施設基準(頭頸部がん認定施設)および術者基準(耳鼻咽喉科専門医かつ頭頸部がん専門医)を定め、本学会のアルミノックス運営委員会により管理してきました。そうして2024年9月までに、約220名の方に光免疫療法が実施されてきました。こうした厳密な基準の設定は、容態の変化に応じて緊急入院、緊急手術、集中治療室での管理が必要となることがあるため、極めて重要であると考えています。

保険診療において光免疫療法を安全に受けていただける病院(学会認定施設)については、以下のURLをご参照ください。

https://pts.rakuten-med.jp/akalux/institution

なお、これらの認定医療機関以外で光免疫療法の提供を謳っている施設があるとの報告がありますが、それらについて本学会は一切関与しておりません。

また、現時点において、切除不能な再発・転移性頭頸部がん以外の疾患に対する光免疫療法の有効性・安全性は確立されておりません。

Googleで「光免疫療法」のキーワードで検索すると、このようにたくさんの”エセ光免疫療法”のクリニックが表示されます。

アルミノックス治療(光免疫療法)の特徴

光免疫療法は、特定の薬剤と特定の波長の光を組み合わせることで、がん細胞を選択的に破壊する治療法です。その主な特徴は以下の通りです。

  • がん細胞への選択的な攻撃: 薬剤はがん細胞の表面にある特定の分子に結合するように設計されています。そこに光を照射すると、薬剤が反応してがん細胞を壊死させます。正常な細胞へのダメージを抑えることが期待されています。
  • 体への負担が比較的少ない: 正常細胞への影響が少ないため、既存のがん治療に比べて副作用が少ない傾向があります。これにより、患者さんのQOL(生活の質)維持に貢献することが期待されます。
  • 免疫活性化作用: がん細胞が破壊される過程で、がんの目印となる物質(がん抗原)が放出され、患者さん自身の免疫細胞がこれを認識し、全身のがん細胞への攻撃を強化する効果(アブスコパル効果)も期待されています。
  • 繰り返し治療の可能性: 比較的体への負担が少ないため、がんの再発時など、繰り返し治療が行える可能性があります。

小林久隆氏の発明

この光免疫療法の基盤となる技術は、アメリカ国立がん研究所(NIH)の小林久隆主任研究員らによって開発されました。小林氏らは、がん細胞に特異的に結合する抗体に、光に反応する色素を結合させた薬剤を開発しました。この薬剤を投与し、がん細胞に集積させた後に、体外から特定の波長の光を照射することで、がん細胞だけを狙い撃ちする治療法を確立しました。この革新的なアイデアと技術が、現在の光免疫療法へとつながっています。

楽天メディカルとの連携

小林久隆氏らの研究成果を実用化するため、楽天グループの楽天メディカル社が重要な役割を担っています。楽天メディカルは、小林氏らの技術に基づいた光免疫療法プラットフォーム「アルミノックス™」を開発し、治療薬や医療機器の開発、製造、販売を進めています。日本国内では、楽天メディカルジャパンが頭頸部がんを対象としたアルミノックス治療薬「アキャルックス点滴静注」の製造販売承認を取得しており、この治療法を提供できる医療機関が全国で増えています。楽天メディカルは、この治療法を「アルミノックス治療」と呼称し、標準治療の一つにすることを目指して研究開発と普及活動を進めています。

自由診療の例とその問題点

光免疫療法を含め、先進的な医療技術の中には、公的な医療保険が適用されない「自由診療」として提供されるものがあります。自由診療は、保険診療の制約を受けずに、国内外の最新の治療法や薬剤を選択できるというメリットがある一方で、いくつかの問題点が指摘されています。

自由診療の例:

  • 未承認・適応外の薬剤や治療法: 国内でまだ承認されていない、あるいは承認されているが対象疾患や使用方法が異なる薬剤や治療法。
  • 先進医療として認められていない治療: 厚生労働大臣が定める「先進医療」のリストに含まれていない評価段階の治療。
  • 美容医療や一部の予防医療: レーシック、美容整形、人間ドック、一部の予防接種など、病気の治療を直接の目的としないもの。
  • 保険適用回数を超える治療: 保険診療で定められた治療回数を超えて行われる治療。

自由診療の問題点:

  • 高額な医療費: 公的医療保険が適用されないため、医療費の全額を患者さんが自己負担する必要があります。先進的な治療ほど費用が高額になる傾向があり、経済的な負担が大きくなります。
  • 治療効果や安全性に関する情報不足: まだ確立されていない治療法や薬剤の場合、その効果や安全性に関する十分な科学的根拠(エビデンス)が不足していることがあります。
  • 情報格差と適切な情報提供の重要性: 自由診療に関する情報は、提供する医療機関によって異なり、患者さんが適切な情報を得て治療を選択することが難しい場合があります。医療機関側には、治療内容、費用、期待される効果、リスク、代替となる治療法などについて、十分かつ分かりやすい説明を行う責任があります。
  • トラブルのリスク: 効果が不確かであったり、高額な費用に見合う効果が得られなかったりする場合など、医療機関との間でトラブルに発展するリスクがあります。

アルミノックス治療のような新しい治療法が開発され、がん治療の選択肢が広がることは、多くの患者さんにとって希望となります。しかし、それが自由診療として提供される場合、費用負担や情報収集など、患者さん自身が慎重に検討し、信頼できる医療機関で十分な説明を受けることが極めて重要です。今後、このような先進医療がより多くの患者さんに届けられるよう、保険適用拡大や情報提供の仕組みづくりが進むことが期待されます。



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