終末期の積極的抗がん剤治療は寿命を短縮する

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来週の木曜日は半年ごとの定期検査です。いつものことですが、検査の前になると、再発・転移をしていないかと気がかりです。体調には変化もなく糖質制限食のおかげなのか、ウォーキングでも以前より体が軽く感じられるほどです。軽い低血糖も、アマリールを半分に減量してからは自覚症状もありません。

再発・転移したときの選択肢としては、抗がん剤を使うのかどうかです。手術できない場合は、抗がん剤で転移したがんが治ることはほとんどありません。再発・転移した膵臓がんにたいして、抗がん剤が余命を延長するとのエビデンス(科学的な根拠)はありません。国立がん研究センターが、再発膵癌のエビデンス(科学的な根拠)作りを計画しているそうです。現状は、初期がんに対して有効だから再発がんにも有効であろうと期待して治療をしているのです。

私の選択肢は二つです。

  1. 無治療で症状が出るまでは治療はしない。症状が出ても最低限の緩和ケアで生活の質(QOL)を重視した治療をする
  2. 低用量抗がん剤療法を症状が出る前から始める。未承認の抗がん剤は使わず、保険の利く範囲内で対応する。症状が出たら早期に緩和ケア(可能なら自宅で)を合わせて行なう

標準的な抗がん剤治療で、大量の抗がん剤の投与はしない。ジェムザールに耐性ができたらTS-1、その次はタルセバと、次々に標準量を投与して、単に生きているだけの生活はまっぴらごめんです。

膵臓がんに適用できる承認された抗がん剤が次々に増えています。近いうちにはエルロチニブ、FOLFIRINOX、オキサリプラチン、イリノテカン等が承認されるでしょう。患者の選択肢が増えることは歓迎すべきですが、自分の癌に効果があるのかどうかは別問題であり、どのような生き方(死に方)を選ぶかは患者の価値観次第です。これらの抗がん剤で対処している間に新たな未承認薬が使えるようになるから希望を持ちましょう、という戦略は、確かにそれで延命する患者もいるでしょうが、逆に寿命を縮める患者もいるのです。効果があった患者はマスコミなどに登場しますが、寿命を縮めた患者は「死人に口なし」で表に出ることはありません。新しい抗がん剤が、必ずしも希望の星ではありません。

私の価値観からいえば、標準量を投与しても良いと思えるのはジェムザールだけ。TS-1すらも飲みたくはありません。

再発がんに対するエビデンス(科学的な根拠)はないと書きましたが、転移性非小細胞肺がんに対する第Ⅲ相試験が、2010年のASCOやThe New England journal of Medicine に発表されています。この手の試験としては唯一の第Ⅲ相無作為化比較試験であり、標準的な抗がん剤治療によって命を縮めている患者が少なからずいることを明らかにしています。がんの再発後や終末期への対応を迷っている方の参考になるかもしれません。

日経メディカルオンラインに次のように紹介されています。

緩和ケアは肺癌患者の生活の質(QOL)だけでなく生存を延長させる
2010. 8. 23

 転移性非小細胞肺癌患者に対して、標準的な治療に早期からの緩和ケアを加えることによって、生活の質(QOL)やうつ症状が改善するだけでなく、生存期間も2カ月以上延長することが、無作為化試験で確認された。米Massachusetts General HospitalのJennifer S. Temel氏らの研究グループが、New England Journal of Medicine誌8月19日号に発表した。

 研究グループは、転移性非小細胞肺癌と新たに診断された患者151人を、標準治療のみを行う群(74人)と、標準治療と早期からの緩和ケアを行う群(77人)に無作為に分けた。緩和ケア群の患者は、登録後3週間以内に緩和ケアチームのメンバーと会い、外来で月に1回以上、症状改善の治療や精神的サポートなどの緩和ケアを受けた。一方、標準治療群は、患者本人や家族、臨床腫瘍医の希望があったとき以外は緩和ケアを受けなかった。

 患者の平均年齢は標準治療群が64.87歳、緩和ケア群が64.98歳とほぼ同じで、女性の割合はそれぞれ49%、55%、白人が95%、100%を占めた。脳転移のある患者の割合はそれぞれ26%、31%。開始時の治療は白金製剤ベースの併用療法が47%、45%、単剤療法が4%、12%、経口EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が両群とも8%だった。また放射線療法を受けた患者は両群とも35%だった。

 試験開始時と12週後にFunctional Assessment of Cancer Therapy – Lung(FACT-L)を用いて生活の質(QOL)を評価した結果、FACT-Lスコア(0~136点)は緩和ケア群で平均98.0点、標準治療群で91.5点と、緩和ケア群で有意に高かった(p=0.03)。またTrial Outcome Index(TOI)スコア(0~84点)も、緩和ケア群で59点、標準治療群が53点(p=0.009)で、試験開始時と12週後のスコアの変化は、緩和ケア群は2.3点、標準治療群が-2.3点と有意差が見られた(p=0.04)。

 不安やうつ症状をHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)で評価した結果、うつ症状のある割合は緩和ケア群で16%だが、標準治療群は38%だった。Patient Health Questionnaire 9(PHQ-9)では、大うつ病の症状のある患者が緩和ケア群は4%だが、標準治療群は17%だった。

 さらに終末期の積極的なケアを受けた患者の割合は緩和ケア群が33%、標準治療群は54%だったが、生存期間中央値はそれぞれ11.6カ月、8.9カ月(p=0.02)で、緩和ケア群の方が有意に長い結果となった。

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早期から緩和ケアを受けることで、生活の質(QOL)も高くなりました。精神的緩和ケアを受けることによって、標準治療群と比べて終末期にも積極的な治療を望まない患者が増えたにもかかわらず、反って生存期間中央値は長くなったのです。<元の英語論文はこちら

この試験の意味するところは重要です。WHOが推奨している早期からの緩和ケアの重要性を明らかにすることが試験の目的でしたが、一方で、標準的な抗がん剤治療によって命を縮めている患者が少なからずいることを明らかにしているからです。

生活の質(QOL)も生存期間もではなく、生活の質(QOL)が高かったから生存期間が延びたのです。あたりまえといえばあたりまえで、地獄のような副作用に耐えることに必死の状態では、長い余命が期待できるはずがありません。これは梅澤医師も常々言っていることです。苦痛を与えるような治療で長生きできるはずがありません。医者は、医療の現場で日常的に感じていることではないでしょうか。

 

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