8割の人に、抗がん剤の延命効果はない
桜の季節です。気がはやります。一昨年のものですが、河津桜
UASオンコロジーセンターのトップページが更新され、植松先生が次のように書かれています。
遠隔転移病巣に対する放射線治療についてのお問い合わせが増えてきましたので、私の基本的な方針や姿勢についてお示ししておきます。
原発巣とは別の臓器にがんが転移した患者さんは4期になり、ほとんどのがん専門病院では抗がん剤が標準治療になります。それが高い効果を挙げているのならよいのですが、多くの患者さんでは副作用の割に治療効果は乏しくて、寿命を延ばすつもりだったのに、むしろ縮めてしまっている場合の方が多いのが現状です。
昨年出版した『抗がん剤治療のうそ』を読んでいただくと判るのですが、抗がん剤がとびきり良く効くとされる乳がんの場合でさえ、抗がん剤で寿命が延びる人は全体の1割から2割しかおらず、残りの8割の人には、実は延命効果はないのです。
もちろん放射線治療が万能なわけでは決してありませんが、オンコロジーセンターを受診された患者さんのなかには、抗がん剤を避けて放射線治療を受け、全身の転移病巣を上手にコントロールしている人も珍しくはありません。
「上手にコントロールしている人」というのは樹木希林さんのことを念頭に置いて書かれているのかもしれませんね。植松先生の『抗がん剤治療のうそ』について重要な点だけを再掲すれば、
- 抗がん剤による真の再発・転移予防効果は5%ほどである
- 抗がん剤による真の延命効果は10%程度である
- 抗がん剤は転移が進行してから使っても効果は同じ
- 術後の再発予防目的で抗がん剤を使う必要はない
最後の点に関しては、膵癌術後の補助化学療法のJASPAC-01試験の結果をみれば、明らかにTS-1がGEMよりも優れているので、抗がん剤も効くように見えますが、無治療との比較試験は存在しないのですから、否定する根拠にはなりません。
- 「専門家が言っているから正しい」は、しばしばいとも簡単にひっくり返る。(3.11後はこれはもう国民的常識になっているが・・・)
- 統計学のルールを鵜呑みにしない。(統計とは、わずかの違いしかないときに、相手を論破するためのツールです。誰が見ても明らかなら統計学など必要ありません)
- 専用のコンピュータソフトにデータを入れれば、誰でも簡単に高度な統計分析ができる時代です。大事なのはデータが現実を反映しているかどうか、人間が判断することです。
- メタアナリシスが重要視され、いかにも最高の統計分析とされているが、所詮は多数決の原理。真理は多数決では決まらない。(メタアナリシスを過大評価するな)
- 遺伝子構造は一人一人違う。がん細胞もひとりの人の腫瘍内でも異なっている。たまたま同じ器官に生じた腫瘍というだけで同じ病名がついているが、(遺伝子が違うのだから)全く同じがんということはありえない。
- したがって、遺伝子の違う別人のデータで作ったガイドラインに縛られることはない。(標準治療は平均治療。平均的に死んでいくことだけは保証されている)
樹木希林さんは乳がんの検診促進CMへの出演依頼も断ったと発言しています。
なぜならば、そんな細かいの、いいじゃないかと。そんな細かいのを見つけて大勢で寄ってたかっていろんな治療をして、とうとう動けなくなっちゃった例も見ているから、もういいじゃないのっていうのがあって、それでやらなかった
物欲もない、仕事も気に入った依頼しか受けない。高倉健みたいですが、生への執着もない、転移したがんの治療もしない。ところが反ってそうした人が長生きするのですね。行きがけの駄賃で乳がんが見つかり、その唯一の体験をもとに「乳がん検診」のCMやテレビ番組にはでに登場している山田邦子などとは、人間が違うようです。
kathyさん。
もちろん、腫瘍を小さくして手術に持ち込んで治癒が可能になる場合もあります。
統計的にしか、未来を予測する手段はないのですが、自分がどこにあてはまるかは、やってみなければ分かりません。より確からしい治療法を統計的データをもとに判断することになるのでしょうが、あくまでも他人のデータによる予測です。それから先は自分の価値観によるしかありません。
ラブさんのように無治療で乳がんが6センチから2センチに小さくなった人もいます。
http://ameblo.jp/kyasarin-0328/
抗がん剤で小さくなる方もいます。がんは一人一人違うのですから、他人の経験は参考でしかないのでしょう。
Sho先生が「がん治療の虚実」で
『固形がんの抗がん剤治療は多くはがん症状を緩和、あるいは、その出現を先送りして延命を図るのが主目的だ。
もちろん、もう少しがんが縮小すれば治癒切除ができる場合(大腸がんの肝転移など)は、患者さんにがんばってもらう必要が出てくるかもしれない。
残念ながら抗がん剤治療は効果が無いこともありえる。
となると安全第一で家にこもっていることは、結果的に自分のかけがえのない人生最後の時間を治療だけですりつぶしてしまうかもしれないのだ。
たとえ症状緩和と延命が得られても、きつい治療だけに人生最後の時間を投入するのはあまりにももったいないのでは無いだろうか?』
などと、連載で書いております。
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-11488191290.html
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-11491460609.html
がんのことは忘れて、貴重な人生の時間を謳歌することも、もっと大事です。
追記ですが、もちろん、副作用がひどいのに、我慢して抗がん剤をするべきではないと思います。
胃癌の術後療法でも、抗がん剤を飲んで亡くなった人も、飲まないで治った人もいます。飲んだ人のほうが、10%治る人が多かったというだけなので、その10%にはいらない場合は、意味がないのです。
転移の場合は、不愉快な状態で、半年くらい長く生きることの価値をどう考えるか、でしょうけれど。
抗がん剤が効くかどうかは、がんや抗がん剤の種類、投与量や時期によって異なり、また新しい開発やデータも出ているので、何でも一緒にして「効かない」というのは、大変危険と思います。
私もそうだったのですが、医療ミスなどを経験して、医療に不信感を持ってしまった人は、「効かない」という話を信じこんでしまって、効く抗がん剤を拒否するというもったいないことをしかねません。
胃がんも、転移したあとの抗がん剤では、9割以上治らないですが、術前の抗がん剤で手術不可だったがんを小さくして、手術した人の多くは治ります(5年以上生存する)。
また、ts-1で術後抗がん剤を飲んだ人/飲まない人の比較データが出ており、
抗がん剤が好成績を収めています。このため、術後標準治療となっています。
http://blogs.yahoo.co.jp/gekkeizuihanseikikyou/folder/969067.html?m=lc&p=16