抗がん剤による「心毒性」
抗がん剤による心毒性
日経メディカルのこの記事、ちょっと気になりますね。
癌患者の延命率を飛躍的に向上させた分子標的薬だが、心不全や高血圧、血栓症といった多様な心血管毒性が指摘されている。また、抗癌剤治療を受けた患者の心血管リスクは、治療後20~30年たっても残存するという。
分子標的薬などの最近の抗がん剤によって、5年生存率も良くなり、サバイバーが増えてきたのですが、生涯にわたって心血管リスクが残るというのは、心配です。
とくに膵臓がん患者の場合は、血糖値の変動も大きくなりがちなので、心血管イベントが生じやすいからなおさらです。でも、20年後の心筋梗塞や脳卒中を心配するよりは、5年後に生存しているかどうかが喫緊の問題ですね。
20~30年後の心配などしている余裕はない。何を贅沢なという声が聞こえてきそうです。
この記事にも書かれていますが、がん研有明病院では以前から、循環器内科で心電図や心エコー図検査を含めた循環器系の精査を行っています。
10年前の手術でも、循環器内科の受診を求められたのですが、私の場合、当時不整脈があったので、内科医の先生が2度も検査を行いました。
「もしかしたら手術ができない」と言われはしないかとひやひやしたものでした。
不整脈は心室性期外収縮というタイプで、外科の先生が「手術可能」と仰ってくれたので助かりました。
後日談です。主治医の齋浦先生から「あなたの不整脈は心因性かも。お腹にメスを当てると不整脈がピタッと止まったよ」と笑いながら仰いました。全身麻酔の状態でも皮膚感覚や聴覚は残っているのでしょうか。
同時は繊細な神経の持ち主だったのですよ。膵臓がんをやったら図太くなりましたね。「生きているだけで丸儲け。いやな奴に何か言われたって、100年後にはあいつも生きていないのだから。年収何億円、資産が何兆円と言われたって、あの世にまで持って行けやしないのに、かわいそうな奴だ」と思っていれば良いのです。
彼らには『老子道徳教』を加島祥造が意訳した現代詩を贈ろう。
君はとっちが大切かね?-
地位や評判かね
それとも自分の身体かね?
収入や財産を守るためには
自分の身体をこわしてもかまわないかね?
何をとるのが得で
何を失うのが損か、本当に
よく考えたことがあるかね。
名声やお金にこだわりすぎたら
もっとずっと大切なものを失う。
物を無理して蓄めこんだりしたら、
とても大きなものを亡くすんだよ。
なにを失い、なにを亡くすかだって?
静けさと平和さ。
このふたつを得るには、
いま自分の持つものに満足することさ。
人になにかを求めないで、これで
まあ充分だと思う人は
ゆったり世の中を眺めて、
自分の人生を
長く保ってゆけるのさ。
(老子道徳経第四四章 足るを知れば辱しめられず、
止まるを知れば殆うからず)
患者としたらどうすれば良いか。
がんを育てない、再発させない生活、バランスの良い食事と適度な運動、ストレスを溜めないなどの「がんに効く生活」は、心血管リスクを予防することにもなります。
定期的に検査を受けて、がんにも心血管イベントにも対抗できる体を作りましょう。