癌エキスパート:ゲムシタビンとS-1を使い切る

癌エキスパートに「膵癌の治療戦略:ゲムシタビンとS-1を使い切る【消化器外科学会】」と題する記事が載っています。7月13日から開催された、第66回日本消化器外科学会総会でのセミナー「膵癌化学療法~最新の話題、GEST study 結果報告~」(共催、大鵬薬品工業)で、横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター内科の杉森一哉氏が解説した内容です。すでに個別に紹介されたものですが、全体を概観する上で参考になるでしょう。

切除不能、転移性の膵臓がんに対する抗がん剤の治療戦略を、現状の最新データに基づいて解説しています。ゲムシタビンとS-1の使い方を詳細に説明するとともに、ゲムシタビンを超える効果が期待されるFOLFIRINOXについても紹介しています。膵臓がん患者の今後の治療戦略を考える上で参考になるかと思われます。

癌エキスパートの会員登録をしていない方のために、PDFファイルをリンクしておきます。ただ、共催がS-1の開発・販売元の大鵬薬品ですから、ある程度のバイアスがあるかもしれないと考えて読んだ方が良いかも知れません。「GEM+s1.pdf」をダウンロード
内容を一部抜粋します。

FOLFIRINOX による有意な生存期間延長
米国NCCN診療ガイドライン(2011年2月版)に、FOLFIRINOXはゲムシタビンと同じcategory 1に位置づけられている。現時点では症例を選ぶことが必須だが、「PS良好な転移性膵癌に対しては、今後の標準治療となる可能性は十分ある治療法だと考えられる」と杉森氏は述べた。
FOLFIRINOXの日本人での安全性を検証するため、第2相試験が進行中だ。「日本人もFOLFIRINOXという有効な治療法が安全に行えるのか、イリノテカンを180mg/m2使っても大丈夫なのかどうか、その結果が注目される」と話した。

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ゲムシタビンに対する S-1 単剤の非劣性を証明
試験の結果、生存曲線はゲムシタビン群とS-1群は重なり、MSTはゲムシタビン群が8.8カ月に対してS-1群が9.7カ月だった。(図4)。ハザード比は0.96、97.5%信頼区間における上限が1.18だった。事前に上限が1.33を下回れば非劣性が証明されるという仮説を定めていたため、非劣性は証明され、S-1は単剤でゲムシタビンに対して非劣性を示した初めての薬剤となった。
一方、GS療法群の曲線はゲムシタビン群を上回っていたものの、統計学的な優越性は証明できなかった。MSTはゲムシタビン群が8.8カ月、GS療法群が10.1カ月だった。この試験では「仮説の段階で、ゲムシタビン群のMSTを7.5カ月と仮定していたが、実際のMSTは既報の試験成績と比べても予想以上に良好だった」という。
PFS中央値は、ゲムシタビン群は4.1カ月、S-1群は3.8カ月、GS療法群は5.7カ月で、S-1群のゲムシタビン群に対するハザード比は1.09、p=0.02、GS療法群のハザード比は0.66、p<0.001と、PFSでは優越性が証明されている。奏効率は、ゲムシタビン群の13%に比べてS-1群は21%、GS療法群が29%で、両群ともゲムシタビン群に対して有意差があった(p=0.02、p<0.001)。

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ゲムシタビンと S-1 を上手に使い切る
「ゲムシタビンとS-1の関係について非常におもしろいデータが2つある」と、杉森氏が紹介したのは、S-1の承認前後の治療成績を比較した研究だ。S-1承認前は、ゲムシタビンを一次治療で使った患者は、その多くが次にBSCに移行し、S-1を使っていたのは5.7%のみ。しかしS-1承認後は、一次治療としてS-1をゲムシタビンとの併用で27.1%の患者が使用し、二次治療としては23.7%がS-1を使っていた。
生存期間を比べた結果、S-1承認前に比べて、承認後は有意に延長し、MSTはそれぞれ9.5カ月、13.3カ月だった(図6)。
もう一つは、ゲムシタビンの承認前後での二次治療移行率を、S-1の第2相試験の前期試験と後期試験で比べたデータだ。ゲムシタビンが承認されたのは2001年4月だが、前期試験は2000年6月から2001年1月に、後期試験は2003年1月から2004年4月に症例を登録した。このゲムシタビン承認前の前期試験では、二次治療移行率が26%だったのに対し、後期試験では90%に上昇した。MSTも5.6カ月から9.2カ月に延長している。
これらのことから杉森氏は、「ゲムシタビンとS-1を上手に使い切ることが、最も大切なのではないかと思う」と話した。

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