医療費に関するウソ
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国保の保険料通知が届いた。年収は減ったはずなのにまた上がっていた。
医療費について政府やマスコミが流している嘘について考えてみます。
【高齢化が医療費を破綻させる】
世界一の高齢化社会が来るから、医療費で破綻する。そのためには消費税を上げて社会保障を守らなくてはならない。患者にもっと自己負担をしてもらわなければ国民皆保険制度は破綻する。
これは正しいのか。高齢化により毎年1兆円の医療費が上がると大騒ぎするが、高齢化による医療費の自然増1兆円は諸外国と同程度である。医療技術の進歩で寿命が延びているのだから医療費が増えるのはあたりまえなのだ。
実際には、日本は諸外国と比べて医療費はかなり低く、逆に患者の自己負担率はとても高い国なのです。
日本の医療費が30兆円を超えて増え続けていることがマスコミで宣伝されますが、世界第2位の経済大国の国力からみてどうなのか。国内総生産(GDP)に占める医療費の割合を見れば、先進29カ国のなかで18位です。国力に見合った医療費を出していない。医療費30兆円は国際的に比較するなら、けっして多くない額なのです。

そして、こうした宣伝のもとで患者の自己負担率はどんどん上げられてきたのです。

【医療財政はなぜ赤字になったのか?】
理由は単純です。高齢化社会を迎え、医療費が高騰することが明かなのに、政府は国庫負担率を減らしてきたからです。当初は45%だった国庫負担率を、1980年に39%に、更に1998年に24%に減額し、その責任を自治体に押しつけたのです。年間1兆5千億円も減額しているのです。さらに子供の医療費を無料化する自治体への補助金も減額してきたのです。
なぜ国交負担率を減額したのか? 日本は借金が増えて医療費に回す金がない。医療費を減らすか増税しか道はない、というのが政府の言い分です。しかし、ここにはトリックがあります。「財政赤字が1000兆円」という政府の数字は、資産の部分を考えていないのです。経理の貸借対照表で借金の額だけを見せているようなものです。実際に企業が赤字かどうかをいうときには<借金>ー<資産>=赤字額でしょう。諸外国ではそうしています。日本の財務省は「資産」は無視して借金の額だけを見せて騒いでいるのです。企業会計や諸外国と同じ方法で計算すれば、日本の借金は256兆円にしかなりません。
【消費税は全額社会保障に使われているのか?】
政府広報オンラインにある『消費税率の引き上げ分は、全額、本当に社会保障に使われるのでしょうか?』とのQ&Aには次のように説明されています。
<A>消費税率引上げによる増収分は、全て社会保障の充実・安定化の財源となります。
消費税率引上げによる増収分は、全て社会保障の充実・安定化の財源となります。消費税率が10%まで引き上げられた際には、消費税率5%引上げ分のうち、約1%分(2.8兆円程度)は子ども・子育て支援、医療・介護、年金の各分野の充実に、残りの約4%分(11.2 兆円程度)は社会保障の安定化のための財源となります。
これにより、子や孫といった後世代への負担のつけ回しを減らすことにつながります。
これもトリックですね。この「社会保障安定化のための財源」というのがミソです。8%に増税されたときの国と地方の税収は5兆円とされています。そしてその「使途」を見ると、

8割以上が「年金国庫負担分2分の1の恒久化」と「既存の社会保障の安定財源確保」です。これはすでに実施している分の財源を消費税に置き換えただけです。「恒久化」という言葉はそういうことです。一方、「社会保障の充実」として「子育て支援」に約0.3兆円、「医療・介護等の支援」に約0.2兆円、計0.5兆円を充てるとしていますが、行おうとしているのは、保育水準の引き下げによる詰め込みや入院患者の追い出しなど制度改悪のための経費です。「充実」とは真逆です。
結局のところ、実際に家計の負担減となるのは、5兆円のうちの0.2兆円だけ! 4%に過ぎません。世間の常識ではこういうのは「詐欺」と言います。
がん患者しての実感でも、消費税が上がる度に医療費が増えてきたと感じます。
で、これまで実施してきた分の財源に消費税で充てて、浮いた財源はどこに行くのかというと、主に法人税の減税です。

ごらんのように、過去22年間の消費税増収額と法人税減収額はみごとに一致!しかも、税率が10%になったときにも、消費税11兆円のうち9兆円は法人税の減額に回せと要求しているのです。
福島の復興予算が自衛隊のヘリの修理や沖縄県の道路整備に使われたのと同じ構図です。官僚がどうにでも解釈できる文言を埋め込んでおくのです。
【なぜ医療費は上がっていくのか】
結論を言えば、高い薬価です。

ドイツ、フランス、イギリスに比べて日本の薬価は最大で3.5倍ほどの違いがあります。アメリカが日本よりも高いのは、アメリカ政府には製薬企業との「薬価交渉権」がないからです。つまり、言い値で買わざるを得ない法制度に「製薬企業のロビイスト」が変えたのです。
C型肝炎薬「ソバルディ」に関して6月4日の記事で書きました。
C型肝炎の画期的な薬「ソバルディ」が承認されたとき、全米各州の知事たちはパニックになった。なんと1錠が1000ドル、1クール2週間で84,000
ドルだったのです。1ドル120円として約1000万円。この薬は先月5月20日に日本でも承認されて健康保険でも使えるようになった。一錠が「アメリカ
より安い!」6万円である。
『アメリカより安い!6万円』と皮肉を書きましたが、日本で一瓶840万円で仕入れるこの薬は、イギリスでは500万円、エジプトではなんと10万円で取引されています。
世界人口の1.4%しかない日本で、世界の薬の40%を消費するという最大の顧客です。しかし、製薬企業の言いなりで決めているアメリカの薬価を参考にしているようでは、日本の薬価が高いのは当然でしょう。
【開発費がかかるのだから薬価は高くて仕方ない?】
分子標的薬などは巨額の開発費がかかるのだから、薬価が高くてあたりまえ、は本当でしょうか?
[wpap service=”with” type=”detail” id=”4884122623″ title=”ビッグ・ファーマ 製薬会社の真実”]
『ビッグ・ファーマの真実』でも書きましたが、マーシャ・エンジェル氏は、ランセットと並び世界的権威を持つといわれるニューイングランド医学雑誌(NEJM)の元編集長。著書『ビッグ・ファーマ』で製薬企業のあくどいやり方を告発しています。
「新薬が高いのは研究開発費を取り戻す必要があるからだ」という製薬会社の主張に対して、ほとんどの新薬が「ゾロ新薬」といわれる化学構造式を少し変えただけのものである。数少ない新薬は、そのほとんどが大学、バイオ企業、NIHなどの資金を使って行なわれた研究が下地になっているのであって、製薬企業が独自でゼロから開発した新薬はほとんど存在しないこと。マーケティング費用が研究開発費の2.5倍を占めており、なおかつビッグ・ファーマはこの半世紀間莫大な利益を上げ続けていること、等です。
図で示しましょう。

研究開発費と営業・マーケティング費の比は、せいぜいが同額か、もしくはマーケティング比の方が数倍になっています。製薬企業は研究開発よりもマーケティングに熱心なのです。
しかも、研究開発費の中には、マーケティング費とするのが妥当な、市販後臨床試験の費用もちゃっかりと入っているのです。利益率は10~43%と、笑いが止まらない数字です。
儲けてはいけないとは言いませんが、利益率を10%下げれば薬価はもっと安くなるのです。適切な利益と暴利とは違うのです。
世界のトップ腫瘍学者100人以上が、2013年、米国血液学会発行誌「ブラッド・ジャーナル」に、高すぎるがん治療薬の値段を下げよという内容の声明を発表しています。
私たちは政府やマスコミの言うことを鵜呑みにするのではなく、「その根拠は?」「どういう条件での数字なの?」と問いかけることが大切です。「あなたの言うことはエビデンスがあるのですか? 」ということです。



