がん治療の費用対効果

分子標的薬が次々と承認され、免疫チェックポイント阻害剤もいずれ多くの癌腫に効果があるとして承認されるだろう。がん患者としては期待もしている。

しかし、その薬価を見ると唖然とする。非小細胞肺がんに承認されたニボルマブは、1人に1年投与すると約3400万円かかる。効果があり、長生きするから長く投与することになる。投与し続け中止する時期を判断することも難しい。

第56回日本肺癌学会学術集会のシンポジウム「肺癌新治療の費用対効果」には満員の聴衆が参加したそうである。

費用対効果から考える肺癌治療のあり方【肺癌学会2015】
医療の進歩が国家を破綻させる

仮に非小細胞肺癌の治療薬ニボルマブ(オプジーボ)を1年間投与すると、約3400万円かかり、患者数の多い非小細胞肺がん患者10万人に投与すると、3兆4000億円かかることになる。これでは国の財政が崩壊する。他の癌腫にも同様の薬がどんどん出てくれば、国家予算の半分ががん治療費なんてことにもなりかねません。国保の加入者が一人がんになったら、その自治体の保険財政は破綻しかねません。保険料を上げるしかないが、それにも限度がある。「なぜいやなあいつの医療費のために、私の保険料が上がるのか?」小さな共同体ではそんな恨み辛みにもなりかねない。

そうした背景もあって、「肺癌新治療の費用対効果」のシンポジウムが開催されたのですが、そこでは「75歳以上には対症療法しか提供しない」との解決差ものあり得るという話も出たそうです。

根本は薬価が高すぎることです。こちらの記事にも書きましたが、

  1. 医療費に関するウソ
  2. ニボルマブって幾らでしょうか?

アメリカの製薬企業のいいなりに薬価を決めている厚生労働省の考え方が問題でしょう。「医療を破壊したい厚労省」とでも言いたくなります。

若くてまだ就学時の子供がいるような患者には、効果のある薬を投与してやれば良い。75歳以上は我慢をしてもらって、治療はしない。こんな制限でも必要になるかもしれません。

しかし、数ヶ月の延命効果とかの、わずかな効果しかない薬ならまだ諦めもつきますが、ニボルバムのように治癒する例がある薬なら、90歳であろうと簡単には諦められないでしょうね。よく効く薬が高価だから、深刻な問題になります。高額療養費制度によって、本人負担は高所得者でも一ヶ月18万円ほどですから、国の財政や将来の世代のことを考えて、私は治療はしない、などという人はいないんではなかろうか。

ニボルバム(オプジーボ)には更にこんな問題もありそうです。肺がん患者の会ワンステップさんに「ニボルマブに関する要望書」との記事があります。

今月中に免疫チェックポイント阻害剤・ニボルマブが保険認可されそうですが(17日に承認)、たとえ認可されても使えない、という気配が出てきました。同時に、この薬の登場に当たり、患者自身が考えるべきことも見えてきている気がします。

DPCとは、入院患者さん1日当たりの定額の点数をもとに医療費の計算を行う制度です。診療行為ごとの点数をもとに計算する「出来高計算方式」と異なります。がん拠点病院はほぼこのDPCを採用しています。しかし、ニボルマブの投与は、一ヶ月およそ300万円かかります(患者は数万円程度の負担となる。高額療養費にあたるため。)。DPCの計算では、治療費の半分以上を各施設が負担しなければならない計算です。事実上、初回入院の治療が行えなくなる懸念があります。初回治療を各病院が入院で行っても、各施設での負担が少なくなるように、出来高算定での保険請求ができるように要望します。

外来治療へ移行するまでの初回の入院治療をした場合、病院が大幅な赤字になる。したがって、患者に投与することをためらう、ことにもなりかねないようです。
日本肺癌学会の要望書

オリンピックなんか辞退してしまって、運営費1兆8000億円や競技場の建設費をこちらに回して欲しいもんだ。


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