KRAS遺伝子変異の膵がんに有望な治療法が見つかる
もしかすると膵臓がんに新たに有効な治療法が登場するかもしれません。
- 膵臓がんのほとんどは、KRASと呼ばれる遺伝子の変異が引き金となる
- しかし、近年まで、変異型KRASタンパクの発がん促進作用を阻害する医薬品の開発は成功していなかった。
- マウスを用いた新たな研究の結果から、G12Dと呼ばれる特定のKRAS変異を有する膵臓がんを直接標的とする有望な治験薬が同定された。
- G12D変異は、膵臓がんでは最も多くみられ、膵臓がんと診断された患者の約35%に存在する。
- MRTX1133(アダグラシブ)と呼ばれる新規薬剤は、KRAS G12D変異を有する複数のヒト膵臓がんマウスモデルにおいて、腫瘍を縮小または増殖を休止させた。
- KRAS G12D変異は、膵臓がんでは3人に1人以上に、大腸がんでは約10人に1人に、そしてその他複数のがん種にも存在している。
- MRTX1133がKRAS G12D変異型膵臓腫瘍の増殖を阻害するばかりでなく、まだ完全には解明されていない間接的な効果によって、がん細胞の周囲の環境に変化をもたらすことを明らかにした。
- ある治療法が腫瘍細胞を極めて効果的に死滅させている場合、「がん微小環境に何らかのリモデリングをもたらすと同時に、微小環境の一部である免疫細胞に変化を生じさせていることが多い
- MRTX1133を投与してKRAS G12Dの活性を阻害すると、がん微小環境にいくつかの変化が生じることを発見した。最も注目すべき点は、MRTX1133による治療によって、「がんと戦う免疫細胞であるT細胞が腫瘍内へ進入できるようになる」点である。
- 免疫チェックポイント阻害薬とMRTX1133との併用を検討している
以上は「海外がん医療情報リファレンス」より。
今回はマウス実験での結果ですが、このMRTX1133(KRAS阻害薬アダグラシブ)は抗EGFR抗体薬セツキシマブとの併用で、ヒトに対して、KRAS G12C遺伝子変異陽性転移性大腸がんに対して腫瘍縮小効果が確かめられています。⇓(膵がんはKRAS G12D遺伝子、一文字違う別の遺伝子です)
KRASG12C遺伝子変異陽性転移性大腸がんに対するKRAS阻害薬アダグラシブ±抗EGFR抗体薬セツキシマブ、抗腫瘍効果を示す
膵臓がんのKRAS遺伝子変異に対するはこれ以外にも開発が進んでいるようですが、一日も早い臨床への適用が待たれます。