同室のKさんのこと
同室のKさんは体重86キロと昔の私ほどもある立派な体格で、話好きで快活なひとである。しかしKさん自身が言うには「あと数ヶ月の余命」だという。
「慈恵医大にいったんですよ。肝臓が悪くて。胆管癌だといわれたんですが、慈恵医大ではこの手術は高度すぎてできないから」と癌研にセカンドオピニオンで来たそうだ。癌研での先生は私と同じ先生である。「診察では大丈夫だといわれたんですがね、手術でおなかを開けたところ、肝臓などあちらこちらに転移をしていて、何もしないで閉じてしまったんです。今日は肝臓のがん細胞に直接放射線を照射してみようということでやってきましたが、先生からもこれが最後の方法ですが、あまり期待はできませんね」と言われている。
そんなKさんだが、快活によくしゃべる。家族のこと仕事のこと、多くは自慢話だが、余命数ヶ月の人には見えない。
次回は8月だといってKさんは退院し、柴又の帝釈天の近くだといって帰った。快活なKさんだが、昨夜何かにうなされていたのを私は知っている。
帝釈天はヒンズー教の神様を祭ってあるのだと五木寛之がどこかに書いていたなぁ。