膵臓がんのオリゴメタ説

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前回の続きです。膵臓がんにもオリゴメタ説は考えられるのでしょうか。考えられるとすれば、転移・再発した膵臓がんでも治癒の可能性があります。

オリゴメタ説(少数転移説)正確には(オリゴメタスタシス(oligometastasis)、少数転移するタイプの腫瘍をオリゴ転移型と言います。

ちょうど1年前のブログの記事で膵臓がんのオリゴ転移型について紹介しています。

記事では、関連した二つのサイトを紹介しています。

膵がんは予後が悪いがんの筆頭だ。しかし中には遠隔転移しにくいがんがいる可能性が強まった。こうしたタイプの膵がんには「その生物学的な特性に応じた独自の治療法が必要」という声があがり始めた。「非手術適応症例には化学療法」だけでよいのか。

と述べる、国立がん研究センター研究所難治がんユニットの谷内田真一氏も岡田医師と同じ問題意識を持っています。

************以後、日経メディカルからの要約**************

谷内田氏が米国留学の経験から学んだのは、一つには膵臓がんで亡くなった患者を死亡直後に解剖すると、15%には転移が認められないという。

2つ目は、膵臓がんの終末像は「局所破壊型」と「全身転移型」の2つに分類できるというものだ。全体の約30%を構成する局所破壊型の多くは遠隔転移の総数が10個以下。一方で残り70%を占める「全身転移型」では、その多くで遠隔転移の総
数が100個以上と桁違いに多い(図1)。

図1●膵臓がんの2つの終末像
C.A.lacobuzio-Donahue,S.Yachida et al.,J Clin Oncol 2009から引用。

3つ目は、たとえ手術ができたとしても75%は再発してしまうという。つまり手術が有効な症例は極めて少ないことを示唆している。

「膵がんは必ずしも1種類の単純ながんではなく、少なくとも2つのタイプに分けることができる。その特性に応じた治療法を考案すべきときに来ている」と谷内田氏は結論づけている。

オリゴメタ説の仮説の傍証となるような報告が日本から出された。東京都健康長寿医療センターの病理診断科のグループがストックしてあった8339の生物検サンプルを解析したところ178の膵がんを発見した。そのうちの8%の膵がんが無症候のうちに進展していることが明らかになった。

第53回日本癌治療学会学術集会のシンポジウム「膵がん治療の個別化による予後向上」では、山口大学医学部放射線治療学教授の澁谷景子氏が「膵がんの非手術適応の患者でも経過をみていて転移が出てこない方がおられ、そのような患者には化学療法ではなく放射線化学療法を選択すべきだと思うが、その選別が難しい」と講演している。

全身転移型と局所破壊型(オリゴ転移型)を分けるのは、膵癌特有の遺伝子変異である。膵癌の遺伝子変異はKRAS、P16/CDKN2A、TP53、SMAD4のわずか4つに集中していることが分かっている。そして、TP53とSMAD4、あるいはTP53に変異があると転移する傾向が強く、予後も悪い。対照的にTP53とSMAD4双方に変異がない場合は転移する傾向も弱く、また予後も比較的良好だ。

**********引用、ここまで**********

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後者の場合はオリゴ転移型である可能性が高く、抗がん剤による延命治療ではなく重粒子線を含めた放射線治療、化学放射線治療、動注塞栓療法などあらゆる手法を使った個別化医療を進めることで治癒が期待できる。

これを実際に患者に適用しているのが、前回の記事で紹介した岡田直美医師なのですね。そして前回の記事にコメントをいただいた林さんも、たぶんオリゴ転移型の膵臓がんだったのでしょう。

「膵臓がんです。転移しているから手術はできません。抗がん剤治療で延命し、耐性ができ使える抗がん剤がなくなれば、あとは緩和です」と、標準治療のエビデンス(科学的な根拠)だけに乗っかると、助かる可能性のある命を捨てることになりますね。

つづく->膵臓がんのオリゴメタ説(2)

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膵臓がんのオリゴメタ説” に対して1件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    ジイジさん。
    現在のFOLFIRINOXが効いているのでしょうね。しかもオリゴ転移型の可能性もあって、より効果が出ている。
    しかし、いずれFOLFIRINOXに耐性ができるでしょうから、そのときには「モグラたたき」的にいろいろな治療法を考えることができるでしょう。「あとは緩和」と言われても、あれもある、これもあると、ジイジさんなら「足で」治療法を探すことだろうと思います。

  2. ジイジ より:

    キノシタさま
    おはようございます。
    いつもながら興味深い記事をありがとうございます。
    オリゴメタ説非常に興味深いです。バアバのすい臓がんも肺に転移しているとのこと。しかしながら主治医の抗がん剤治療医の見解で重粒子治療の医師は結節ではないか?とのこと。
    確かにトモセラピー治療の際に約2か月半は全く抗がん剤をしていなかったのですが肺に変化はありませんでした。トモセラピー治療後も原発のすい臓がんも疑われている肺転移も活動していない状態です。何故かな?と疑問に思っていました。オリゴメタ説なら説明ができますね。

  3. キノシタ より:

    ひでこさん。
    膵癌ではオリゴ転移型は3割と言われているから、7割はやはり治らないのですね。他のがんでも似たり寄ったりでしょう。
    人類はまだまだがんのことを少ししか分かっていないのでしょうね。それで知ったかぶりをしてもがんを撲滅できない。まだ百年は無理でそうです。

  4. キノシタ より:

    金魚さん。本年もよろしくお願いいたします。
    大腸がんも肝臓転移があっても手術ができるのですから、オリゴ転移型が多いのでしょうね。
    金魚さんの地方では、標準治療以外にチャレンジしてくれる医者は少ないのでしょうか。大きな病院では無理でしょうね。倫理委員会だの訴訟リスクを考えて引いてしまうのでしょう。梅澤先生も「責任を持ちます」と一筆書いてくれなければ、標準以外の治療はやりにくいと言っています。
    親身になってくれる医師との関係がなければ難しいのでしょうね。
    なんとかならないものでしょうか。
    >治療の本質的な事が今ひとつぼやけて・・・
    知識で人を攻撃しても、がんが治るわけでもないのになぁ。私と考えが違うのですね。だったら関わらないでおきましょう。というのが私のスタンスです。

  5. ひでこ より:

    オリゴメタについて更に詳しくありがとうございます。
    樹木希林さんが治療したことでも有名な鹿児島のオンコロジークリニック、ステージ4の転移治療としては、効果がある人、ない人に真っ二つに分かれます。この謎をとく鍵がオリゴメタ説にある気がします。
    効果がある人は放射線で遠隔転移が消えた後、特に投薬などしなくても、いつまでも出てきません。
    2008年にあちこちに転移していた樹木希林さんが現在もお元気なのは、こちらのグループである可能性も考えられます。高齢者の乳がんは進行が遅いから、で片付けられる問題ではありません。
    これに対して院長の植松医師は、抗がん剤のような免疫を落とす薬を使わないことによって、再転移が防げる、とHPで述べています。
    私はこの部分はずっと??でした。(今でも謎)
    遠隔転移治療をするだけで、再び遠隔転移を防げるメカニズムが全然繋がっていません。近藤誠氏と同じ慶應の放射線科出身だから、仲間だよね、と思っています。
    一方、効かない人は、何度でも再燃してきます。治療費が高い上に滞在費もかかり(治療費は500万を超えるとタダにしてくれるらしいです)大変です。おまけに、標準で許される量の何倍もの放射線を浴びるのですから、副作用は相当なものです。
    効く人にはいいのですが、こちらのグループの人はやらないか、治療後きっちり全身治療をしたほうがいいと思います。
    すい臓がんもそうかもしれませんが、全身転移型、オリゴ転移型、両方ある気がします。

  6. 金魚 より:

    キノシタ さま
    本年も、よろしくお願い申し上げます。
    オリゴメタ説は、とても興味深いですよね・・・
    大切な友人(大腸癌)が、腹膜播種後に腹腔内治療を受けております。
    地元の病院では、全身抗がん剤のみと言われて、別の病院に行ったのです。
    しかし、骨盤無いでおそらく原発からの転移(そもそも切除時に浸潤があった)が、卵巣や十二指腸にあるものの遠隔転移はありません。
    ステージ4ですと、このような状態では手術してくれるところが無いのが現状で、特に十二指腸は膵頭部を含めて切除しないと意味が無いので、やってくれそうな所がないです。あと数年持ちこたえて、外科的治療が受けられないものか・・・本気で心配しています。
    しかし、先の記事の先生含め、患者会を抱え込んでの確執が色々と聞こえてきて、治療の本質的な事が今ひとつぼやけてしまっているのが、大変残念です。

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