DWIBS(ドゥイブス法)

がんの治療においては、抗がん剤が効いているのかを早く判断し、再発や転移があれば、早期に見つけて次の治療法を考えることが大切です。

その判断には造影CTやPET(陽電子放出断層撮影)が使われますが、多くの病院では造影CTは3か月に1回しか行ってくれません。またPETも費用も高く、特別なことがない限り1年に1回以上行うことは困難です。

DWIBS(ドゥイブス)法は造影剤を使わない単純MRIなので、これらの制約がなく放射線被ばくの心配もありません。

DWIBS(ドゥイブス)法とは

PETと同様の画像診断が、MRIで可能になる最新の画像診断技術です。

2004年に、高原太郎氏(東海大学工学部 医用生体工学科教授)と、今井裕氏(東海大学医学部 画像診断学教授)らの研究グループにより考案されました。

拡散強調画像(Diffusion weighted Image 以下DWI)を全身に用いたのでDWIBS法と命名し、がんのスクリーニングにおいて、PETと同様の画像をMRIで撮影することを可能にしました。

※DWIBS = Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background body signal

DWIは、細胞内の水分子のブラウン運動という微細な動きをMRIで可視化するもので、自由呼吸下で撮影しても画像には影響を及ぼさないことがわかっています。これにより、長時間の撮影が可能になり、細かいデータを測定して三次元的に全身の撮影ができるようになります。

特徴

小さな腫瘍も検出できる

造影CTでは10mmの腫瘍が検出限界で、PETでも5mm程度です。

DWIBS法では概ね2mm程度の空間分解能があります。計算上ではPETでみつけられる腫瘍の6.4%の大きさの腫瘍もDWIBS法でみつけられるということになります。また、DWIBS法は三次元的な観察ができます。

放射線による被ばくがない

DWIBS法はMRIなので放射線による被ばくがありません。また、単純MRIであり、造影剤を使用しません。従って造影剤を投与して撮影するCTに比べて患者への負担も小さくなります。

費用が安い

DWIBS法は、造影CTやPETに比べて費用が抑えられることも利点のひとつです。保険点数は1,300点と、PETの8,600点の約15%で、被ばくの心配もないので毎月撮影することも可能です。

抗がん剤投与から2週間で効果を判定できる

抗がん剤が効いているのかどうかは、数ヶ月間腫瘍マーカーの推移を見たり、3ヶ月後に造影CTを撮って判断するのですが、効かない抗がん剤を数ヵ月も投与するのは時間も無駄です。特に膵臓がんのように腫瘍の増大速度が大きいがんでは、この数ヵ月は致命的になります。

固形がんの治療効果判定のためのガイドラインでは、造影CTが推奨されていますが、CTは腫瘍の大きさの変化で判別するため、抗がん剤投与から1カ月ほどの時間が必要です。

DWIBSは腫瘍の大きさが変化していなくても、効果があれば画像の信号強度が変化して腫瘍部分が薄く写ります。さらに、拡散係数の変化によっても効果を判定することができるので、抗がん剤投与から2週間ほどで判定ができます。

また、日本人女性に多くマンモグラフィでは検出が難しいと言われている高濃度乳房の方の乳がん診断にも有効です。

がんの悪性度が分かる

造影CTやPETでは、腫瘍のサイズやあるなしは分かりますが、悪性度までは分かりません。多数の病変がある場合、悪性度の高いものから叩きたいのですが、増大速度の大きいものや患者のQOLを下げる可能性のあるものをターゲットにしているのが現状です。

DWIBSなら画像や拡散係数(ADC)の変化によって悪性度を推定することが可能です。

造影CTとの比較

(「リクルートドクターズキャリア」最新の画像診断で癌治療が変わる)より

どこで受けられるの?

DWIBS法の検査ができかつ、信頼のおける医療機関の一覧です。インターネット上で検索すると、たくさんのDWIBS法の医療機関がありますが、技術的に未熟なところも多いので注意が必要です。

  • 八重洲クリニック(東京)[リンク]
  • 熊本中央病院(熊本市)
  • すずかけセントラル病院(浜松市)
  • 焼津市立病院(焼津市)
  • 大阪国際がんセンター [旧:大阪成人病センター](大阪市)
  • メディカルスキャニンググループ(東京、埼玉、神奈川)

内容は高原医師のサイト「がん患者様(診断・経過観察)ー施設紹介 」で更新されています。

参考資料


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