ビタミンDとメラトニン

運良く3年を迎えることができたのだが、これで安心だと考えているわけではない。すい臓がんの予後の悪さを考えると、ついつい悲観的にないがちだが、気を取り直して「今を生きる」だけのこと。

「がんサポート情報センター」の『治療が難しい「再発膵がん」の最新治療』をあらためて読んでみた。

膵がんでは、手術した人のほぼ半数以上が1年以内に再発します。3年以内には9割近くが再発します。

再発後の抗がん剤の効果も向上してきたためか、手術した人全体の5年生存率は2~3割と少し成績がよくなっています。ただし、ほとんどの人でがんが再発します。1期でさえ、5年生存率は約53パーセントにとどまります。

術後に再発した方の平均的な生存期間に関してはいくつかのデータがありますが、抗がん剤などの治療の効果がない場合は、再発がわかってからだいたい3~6 カ月と言われています。

膵がんの特徴は、他のがんにくらべて、1~3期で再発する人が多いことです。そもそも手術した範囲で、がんが取りきれていれば治るはずです。根治手術したのに再発する人は、もともと遠隔転移のある4b期なのです。手術で取った範囲外に、目に見えないがんの浸潤や転移が存在していて、それが増殖してくるわけです。

乳がんや胃がんで早期だと言われる1センチのがんが、膵がんでは1~2ミリのがんに相当するのかもしれません。がんの進行度は、単に腫瘍の大きさだけでは測れません。

再発した人で長生きできるのは、きっちりとした手術を受けて、手術した部分からの局所再発のない人に多く見られます。抗がん剤にも反応しやすい傾向があります。一方、局所の再発があると、痛みがあったり、ご飯が食べられなくなったりと、全身状態が悪くなります。
術後は、再発を見逃さないために、定期的な診察と、腫瘍マーカーや画像による検査を続けていきます。ただし、術後の再発を早期に発見したことで、生存率がよくなったというデータはありません。

気の滅入るような内容ばかりだが、そんなことは先刻承知のはずだから今更落ち込むことでもあるまい。「3年以内には9割近くが再発します」とあるように、3年が一つのターニングポイントだと考えて良いだろう。これを何とかクリアしたのだから、気を引き締めて、希望を持って続けるだけだ。

今日はがんに効果があるかもしれないサプリメントについて書いてみる。ビタミンDとメラトニンについてはこのブログで何度も紹介してきたが、あらためて整理してみる。

ビタミンD
アメリカにおける補完代替医用に関しては安西さんの「米国統合医療ノート」を参考にさせてもらっている。新しい情報が迅速に提供されているので非常にありがたい。このサイトで「ビタミンD」で検索した記事の一覧をこちらで開くことができるので、まずは目を通してもらいたい。
米国統合医療ノートにおけるビタミンDの記事

血中ビタミンD濃度が高い人はがんになるリスクが低い、というデータを前にご紹介しました。これは良い食生活や適切な日光浴など、総合的な生活習慣がもたらす影響を示したものでしたが、今度はそれをさらに絞込み、ビタミンDのサプリメントを摂るだけの違いでがんのリスクが減少するというデータが出ましたのでご紹介します。アメリカ臨床栄養学会誌6月号に発表になった米国クレイトン大学の研究です。

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ところで日本のビタミンDの食事摂取基準は220 IU、耐容上限量は2,000 IUです。私の摂取量は多すぎるように見えるかも知れませんが、専門家の間ではビタミンDは10,000 IUまで安全とされており、私の知り合いのビタミンD研究者も毎日3,000 IU飲んでいます。

もし機会があれば日本のサプリのビタミンD含量をご覧ください。多くが100 IU/日程度の実にささやかなものです。

日本の基準が低すぎ、サプリも用量不足で、そもそもビタミンDへの関心が薄いために、日本では多くの方がビタミンD不足なのではないでしょうか。そして多くの方が、ビタミンDさえ足りていればかからずに済む病気にかかっているのではないでしょうか。

こういった記事が並んでいる。私も毎日ビタミンD(D3-コレカルシフェロールとして)2000IUを服用している。3000IUにすることも考えなくはないが、20分間日光に当たるだけで20,000 IUという大量のビタミンD3が合成されるといわれているから、天気のよいときはたくさん散歩をするだけでも効果がある。心配なら血中ビタミンD濃度を測って、それから対策を立ててもよかろう。

日本で販売されているビタミン剤は含有量が低すぎて話にならない。3000IUも摂ろうとしたらずいぶんな量と金額になるはずだ。私は海外から個人輸入をしている。がん患者はミネラル分も不足しがちだから(玄米食だとミネラルが不足するというデータもある)、マルチビタミンとしてビタミンDを含んだものを購入している。詳しいことは「私のがん攻略法」に書いてあるとおりだ。

メラトニン

奇跡のホルモン、メラトニン、メラトニンについても何度か書いた。「メラトニンについて(1)」「メラトニンについて(2)

米国統合医療ノートにおけるビタミンDの記事」の検索結果をリンクしておく。

重要なのはこちらの記事「メラトニンとがん治療」であろう。

前回と今回の論文に紹介されている主要論文をまとめると下表のとおりです。

【放射線療法との併用】
がん種 症例数 抗酸化剤(/日) 効果 副作用 文献
頭頚部がん 540 ビタミンE 400 IU、ベータカロテン 30mg(ベータカロテンは途中で中止) 再発↑*、死亡↑* 1a, 1b
頭頚部がん 54 ビタミンE 400mg 2
膠芽腫 30 メラトニン 20mg 生存↑ 3
【化学療法との併用】
がん種 症例数 抗酸化剤(/日) 効果 副作用 文献
転移肺がん 100 メラトニン 20mg 安定↑、縮小↑ 5
固形がん 250 メラトニン 20mg 消失↑、縮小↑、生存↑ 6
転移大腸がん 30 メラトニン 20mg 安定↑ 7
肺がん 70 メラトニン 20mg 生存↑ 8
前立腺がん 48 エラグ酸 180mg 消失+縮小↑、生存↑ 9
白血病 124 ビタミンA 50,000 IU 生存↑ ↑* 10
    • は好ましくない結果、↑は増加・上昇、↓は減少・低下を示します。
    • 次のような論文は除外しました:医薬品についてのもの、経口投与でないと思われるもの、どちらにも何の有意差もないもの、症例数が30例未満のもの、要旨さえ確認できないもの。

すい臓がんのデータがないのが残念だが、安西さんは

もしもがん治療と同時並行して何らかの抗酸化サプリメントを服用するのなら、現時点ではメラトニンを第一推薦にすべきではないかと思います。

メラトニンは脳の松果体(図)から分泌される睡眠を司るホルモンとして知られていますが、このところがんとの関連が注目されています。検索すると、高名なテキサス大のMDアンダーソンがんセンターやスタンフォード大が、メラトニンを用いたがんの臨床試験をいま何件も平行して進めています。

と述べている。メラトニンは体内(松果体)から分泌される物質であるから、仮にがんに効く可能性があっても製薬企業は臨床試験はしない。特許が取れない物質(薬)に莫大な研究費をつぎ込むような奇特な資本的企業はないからである。MDアンダーソンがんセンターなどの公的研究機関の研究を待つばかりだが、我々はそれを待っていられない。以前の記事にも書いたとおり、FDAへの重篤な副作用は報告されていない(唯一の副作用がぐっすりと眠れること)ということだから、メラトニンを無視するのは勿体ない。

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表の信頼度レベルでいえば、これらの研究はコホート研究あるいは非ランダム化比較試験に該当するだろう。採用するには十分はレベルだと考えて良い。

問題は試験データがメラトニン20mgを摂っていることである。市販のメラトニンは1mg、3mg、5mgであり、20mgは医療機関向けである。私は3mgから始めて徐々に増やし、現在は5mg×2で10mgを就寝前に服用している。これを20mgにすべきかどうか、もっか思案中である。

米国統合医療ノート」には「一般の方へ」として「メディサプリ」のサイトにリンクされている。ここでビタミンD3と20mgのメラトニンを購入することができる。(「メラトニン 20mg」でgoogle検索すれば他のサイトも出てくるが、信頼のおける業者かどうかは分からない)かかりつけの医院の名前を明記するという条件で、医家向けの特定サプリメント・メラトニン20mgを購入することが可能である。

進行した癌にも効果があるのだろうか?それは現状では分からない。しかし、『奇跡のホルモン メラトニン』の第6章ガン治療の革命は、これまでの研究成果を説明している。この書籍に書かれた以後の研究結果については安西さんのブログを参考にすればよい。

落葉隻語 ことばのかたみビタミンDとメラトニン。飲むべきか? それは自分の身体には自分で責任を持つという答えしかない。自己責任で情報を吟味して判断すればよいことだ。ただ、日本人は「安全・安心」に過剰に反応しているのではないだろうか。抗菌グッズが売れるなどというのもその証だし、宮崎産の品物はすべて忌避するという「風評被害」を生んでいるのもこの過剰な安全・安心反応だろう。リスクゼロの社会生活は不可能なのである。多田富雄が『落葉隻語 ことばのかたみ』でこう書いている。

近頃、日本人には過剰な無菌思考がある。もともと私たちの周囲は黴菌だらけである。カビや細菌、総称して黴菌と人類は共存しながら進化してきた。

昔、私の母など、残ったご飯の糸の引くのを平気で食べていた。確かに雑菌は増殖しているが、お腹を壊すことはなかった。家族には炊きたてのご飯を食べさせた。お客に料理を使い回した料亭とはまるで精神が違う。

口から入る日常の雑菌にさらされて腸管の免疫が強化され、下痢を起こす黴菌に抵抗力を獲得する。アレルギー体質も少なくなる。

子供がたまに発熱したり下痢したりするのは、黴菌との戦い方を習得しているからである。学習の場は主に腸管である。成長の時期にここで戦い方を学習しないと、雑菌に対する抵抗力が弱くなり、逆にアレルギーを起こしやすい体質になる。免疫学者の私が言うのだ。信じていい。

あまりにもリスクを避ける生き方は、返ってリスクを背負い込みことになるのはがん治療でも同じではないだろうか。多くは答えのない問題なのである。(いかさま業者にカモられないためにも)極力調査し熟慮もするが、どこかで目をつぶって跳ばなければならないときがある。

NHKの『プロジェクトX~挑戦者たち~』は、リスクに果敢に挑戦した者にだけ与えられる栄誉がある、というドラマではなかったのか。

決してビタミンD、メラトニンを勧めているわけではありません。自己判断・自己責任で対処してください。


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ビタミンDとメラトニン” に対して2件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    安西さん。勝手に引用して、内容も大いに活用させていただいています。
    「米国統合医療ノート」は私にとってのサプリメントのデータベースですね。今後も役立つ記事を期待しております。メラトニンは不安ながらも服用をしていたのですが、安西さんの記事を読んでからは安心して、効果も期待しながら続けられます。
    ありがとうございました。

  2. 安西英雄 より:

    キノシタ様
    ご紹介頂きありがとうございます。私もブログで勉強させて頂いています。いつもとても中身が濃いので敬服しています。

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