ダーク・チョコレートの抗がん作用

先日近所のスーパーでで森永の「カレ・ド・ショコラ」カカオ70%のビターチョコが20円引きになっていたので、まとめ買いしました。全国的にキャンペーン中らしいです。このブログ「ビターチョコで血管新生を押さえる」では、ビターチョコに血管新生抑制効果があると紹介しましたが、私は数年来ビターチョコを欠かすことなく、いつも机の引き出しに入れています。

更に、チョコレートには結腸がんの予防効果があるとの、スペインでの研究です。ラットでの研究ですが、原料のカカオに結腸がんなどの腸疾患予防に効果があるとする論文です。

 研究チームは、カカオ含有率が12%の餌を8週間、ラットに与えた後、がんの誘発要因を加える実験を行った。その結果、カカオを多く含む餌を摂取していたラットは、結腸がんの兆候である異常陰窩巣の形成が大幅に低下していた。陰窩(いんか)とは、直腸や結腸の内壁表面に見られる管状の腺で、正常に機能しているときは常に腸の内壁を再生し粘液を生産する。
また、抗酸化機能も高まり、発がん性物質による酸化損傷が減少していた。こうした実験結果から研究チームは、体内で腫瘍を発生させる細胞増殖に関連した細胞シグナルの伝達経路をカカオが遮断し、体の防御システムとして機能しうると結論付けた。カカオを多く摂取する食生活は老化細胞や不健康な細胞が自然死する「アポトーシス(機能的細胞死)」を促し、新細胞が生じる余地を作る効果があることも突き止めた。これが、がんの進行を防ぐ「化学予防メカニズム」になるという。<原文

昨年の9月には日経メディカルオンラインに「ダークチョコレートに心代謝障害の発症リスクを減少させる効果が示唆」という記事も載っています。こちらは欧州心臓学会(ESC2011)で発表されたメタ解析の研究結果です。

4576報の文献から、7報が選定基準に合致した(参加者総数は11万4009人)。この7報の試験間にはチョコレート消費の測定法、方法およびアウトカムに大きな違いが認められた。7試験のうち5試験において、心代謝障害のリスクに対し、チョコレート消費がより多いグループに有益な効果があることが報告されていた。一番チョコレートの消費量が多いグループは、一番少ないグループに比べ、心血管疾患を37%(オッズ比:0.63、95%信頼区間:0.44‐0.90)、脳卒中を29%(オッズ比:0.71、同:0.52‐0.98)、それぞれ減少させていた。
また、健康に良い成分はビターカカオに含まれており、砂糖や脂肪分に含まれているのではないとし、「市場に出回っているチョコレートは非常にカロリーが高いので、食べ過ぎは、肥満や糖尿病ばかりか心臓病のリスクをも上昇させる恐れがある」と注意も促した。

効果があるのはビターチョコです。ミルクチョコなどは反ってリスクを高めるので注意。この論文に関しては、代替医療の著作も多い坪野吉孝氏はアピタルにこのように書いています。

チョコレートには糖分と脂肪分が多く含まれるためカロリーが高く、多く食べることで肥満につながる危険性も指摘している。そのため、チョコレートに含まれる糖分と脂肪分を減らすことが必要だと考察している。

今回選び出された論文はすべて、対象者の日常的なチョコレート摂取と病気との関係を調べた研究のため、肥満で病気のリスクが高い人がチョコレートの摂取を過小申告するなどして、チョコレートの効果を過大評価している可能性があると考察している。

チョコレートのような身近な食品が、心血管疾患などの病気の予防につながる可能性を指摘した点で、興味深い論文だ。ただしこの分野の研究はまだ新しく、論文の数も7件しかなかった。そのため現時点では、チョコレートと病気予防との因果関係が確認されたと結論することはできない。臨床試験を含めた研究が、今後さらに必要だろう。

Choco1850_1糖質制限食を提唱している江部先生もブログでこの論文に触れており、「糖質ゼロのチョコ」の開発を依頼したと書かれています。しかし、「糖質制限ドットコム」で販売しているチョコは高くて気軽には購入できませんね。楽天市場に右のような糖質ゼロのノンシュガーチョコを販売していました。これならまだ安いか。

シュレベールの『がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」』でも「付録 抗がん効果のある食物リスト」(P.209)の中にブラックチョコレートが含まれています。

ブラックチョコレート(カカオ分70%以上)には、多くの抗酸化物質、プロアントシアニジン、ポリフェノールが含まれている(チョコレートひとかけらには、赤ワイン一杯の二倍、よく蒸らした緑茶一杯と同程度のポリフェノールが含まれている)。これらの成分には、がん細胞の成長や血管新生を抑える働きがある。

がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」として、緑茶といっしょに摂ることを推奨しています。私はお茶ミルで挽いた深蒸し茶を一緒に飲んでいます。

さて、抗がん作用があるらしいことは分かりましたが、できてしまったがんにも効果が期待できるのでしょうか?『がんに効く生活』でシュレベールは次のような例を挙げています。(P.171)

生化学者リシャール・ベリヴォー博士は、余命数ヶ月と宣告された膵臓がんに苦しむ友人レニーの妻から一本の電話を受け取った。妻は「あなたが食物の抗がん効果に興味を持っているって聞いたわ。治療効果があると思われるものならなんでも試してみたいの。もうこれ以上失うものなんて何もないでしょ。」と言った。

ベリヴォーはレニーのために”抗がん効果のある食物リスト”を作成した。キャベツ・ブロッコリー・ニンニク・大豆・緑茶・ターメリック・ラズベリー・ブルーベリー・ブラックチョコレートなどであった。

「がんは肥満のようなものだから、毎日の努力が必要なんだ。毎食ごとにこれを食べること。これ以外は食べないこと。炎症を活性化させるオメガ6を控えて、オリーブ油を使うことを告げた。数種類の日本料理とともに。

レニーは数週間後にはベッドで体を起こすことができるようになり、日に日に好転して、家から出て外を歩けるようにもなった。

レニーはそれから4年半生きた。膵臓がんが直りはしなかったが、長い間腫瘍は安定したままで、一時は4分の1ほどに退縮した。

Foods to Fight Cancer: Essential Foods to Help Prevent Cancerベリヴォー博士のこのリストは、ペーパーバック『Foods to Fight Cancer: Essential Foods to Help Prevent Cancer』として今でも多くのがん患者に読まれています。『がんに効く生活』にはその一部が紹介されています。

食物の相乗効果

膵臓がん患者は(他のがんでもおなじだが)、ターメリックが効くと聞けばそれを飲んでみる。牛蒡子が良いと聞けば薬局に在庫がなくなるほど殺到する。深蒸し茶がテレビで紹介されたらそれに走る。しかし、大事なのは、一種類の食物ではなく相乗効果です。ベルヴォーは研究成果を三つにまとめまています。

  1. 一部の食物は、がんの成長を促進する”プロモーター”となる。
  2. 逆に”反プロモーター”となる食物もある。それは、がんの成長に必要な機能を阻害し、がん細胞をアポトーシスに追い込む。
  3. 食物は毎日、1日3回、人体に働きかけるものである。そのため、がんの進行を促進、抑制する生物学的機能に多大な影響を与える。

M.D.アンダーソンがんセンターのフィドラー教授は、がん細胞が利用する成長因子ごとに色分けすることに成功した。共同研究者に膵臓がん細胞を顕微鏡で見せながら、細胞ごとに色が違うこと、ある細胞は赤や黄に、核は青になり、別の細胞は綠にといった具合であることを示した。(P.194)

膵臓がんの腫瘍を見ると、さまざまな色が現われており、がん細胞が(細胞ごとに異なる)さまざまな成長因子を利用していることがわかる。「ここから得られる結論は?」フィドラーはたずねた。「赤の成長因子を抑えても、綠にやられてしまう。綠を抑えても、赤にやられてしまう。ということは、これらを一度に全部やっつけるしかない。」

ニューデリー医科大学の研究では、マウスに抗がん効果のある成分を一種類だけ与えると、がんを発症するマウスは半分に減った。二種類を与えると3分の1になった。三種類を与えると5分の1に低下した。4種類を与えたら、10分の1だけががんを発症した。

このことから言えるのは、単一の抗がん作用食物だけでは十分でなく、それぞれの抗がん成分が他の成分と相乗効果をもたらすということである。相乗効果、つまり複雑系的にいえば、各要素が相互に複雑に関係し合って、驚くような効果を発揮することがある。いや、むしろ実際の人間の体、がん細胞の中では、多くの要因が複雑に絡み合って化学反応が進行しているのであり、その一つの要因だけを取り出して、要素還元的に分析するのがEBMであり、エビデンス至上主義だ。ダーク・チョコだけではダメなのです。食事全体を抗がん効果のあるものに変え、がんが育たない体内環境を作ることが大切です。

「現時点では因果関係が確認できたと結論することはできない」などは、学者や医者に言わせておけば良い。そもそも因果関係は”厳密には”確定できるものではない。人間に見えるのは”相関関係”だけであり、ヒュームが言うように因果関係は確認することは不可能です。複雑系においては原因と結果は一対一には対応しない。だから抗がん効果のある食物のエビデンスなどは、永久に出てきはしない。そのようなものを待っているのは「百年河清を待つ」行為であり、ばかげている。マウス実験で効果があると分ければ、残された時間が限られている、今がん患者のあなたは、それを試してみるべきです。

今日は明治の「チョコレート効果」CACAO86%とCACAO95%をそれぞれ買った。お茶ミルの深蒸し茶と相性が良い。


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ダーク・チョコレートの抗がん作用” に対して2件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    藤巻さま。
    ダーク・チョコはあくまでも一例であり、食事を通してがん細胞を育てない、育ちにくい体内環境を作るというのが目的です。そのためにできることは、たとえエビデンスに乏しくても何でもやってみようというのが、私の考えです。
    重粒子線治療後に再発で、なお手術可能となったというのは、ちょっと珍しいくらい幸運な例ですよね。しかし、再発したということは、すでにがん細胞が体中に散らばっていると考えるべきでしょう。今はご自身の免疫力でがん細胞が増殖するのを押さえ込んでいるのでしょう。
    がんワクチンは、中村祐輔先生もよく言われていましたが、術後の再発予防にこそ使いたい、効果があるはずだと。樹状細胞療法もおなじ考えでよいはずです。丸山ワクチンについては調べたことがないのでよくわかりません。「ワクチン」と名は付いても違うもののようです。
    いずれにしろ、しっかりしたエビデンスが確立しているわけではないですが、副作用がほとんど問題にならない治療法ですから、試してみる価値はあると思います。問題はむしろ経済的な点です。私も一応は選択肢に考えていましたが、費用対効果を考えて、自分で頑張ってみる方法を選びました。
    全ての治療法、代替療法についても言えることですが、100%確かな根拠がない状態で、他人の統計的なデータだけを頼りに判断しなければなりませんから、最後は自分の価値観とどのような人生を送りたいのかに尽きると思います。「やってみなければわからない」のだから、やってみるか、止めておくかもヒトそれぞれです。
    有り体に言えば、最後の最後は「直感」に頼ることになりますね。

  2. 藤巻宣子  MAKI より:

    はじめまして
    同じ膵臓癌患者として心強く本の紹介やらブログ参考にさせて頂いております
    私もビターチョコ愛用してます
    今日は迷っていることについて相談です
    ここでこうするのが良いのか分かりませんが聞いて頂きたく思います
    2年前に手術不能の?体癌と診断され重粒子治療その後1年目に再発
    抗がん剤治療で昨年12月に手術可能になり体部尾部脾臓をとり今術後3ヶ月間のGEMTS-1交互の治療中です 転移再発予防の為
    そんな中代替療法として副作用のない樹状細胞ワクチン療法丸山ワクチンなどたちの悪い?癌なので予防をしたほうが良いのではないかと家族は心配しています
    この2つについてどう思われますか
    再発転移してからでは遅いと家族は焦っているのです
    私としては手術の結果は良好でCA19-9は9.2なので今は体力回復に全力を尽くしたいと思っているのですがご意見を伺わせてください メールお待ちしております

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