膵がんのブラックジャック 永川裕一医師

東京医科大学病院(東京都新宿区)消化器外科講師 外来医長永川裕一医師が偶然二つの記事で紹介されていました。

2月2日のZAKZAKの連載「ブラックジャックを探せ」で「“膵がん”撲滅に情熱ささげる外科医」として紹介。週間がん もっといい日では「膵がんの術前化学療法で手術の適応範囲を拡大し出血量の少ない手術で治療成績向上をめざす」として紹介されています。

早期発見が難しいこのがんは、見つかった時点で「手術不可」と判断されることが多い。しかし、積極的な姿勢を崩さない永川医師は、抗がん剤や放射線を組み合わせた術前治療を行うことで、「手術に持ち込める方法」を模索し、実践する。他院で「手術不可」と診断された患者でも、永川医師の治療によって手術が実現したケースも少なくない。

術前補助放射線療法については大阪府立成人病センターの50年を取材した本『難治がんと闘う―大阪府立成人病センターの五十年 (新潮新書)』の記事でこのブログの2010年9月25日で紹介しています。東京でも切除不可の膵がんを積極的に手術できるように頑張っている医師がいるのです。

週間がん もっといい日のTOP記事は、1週間後には「過去の記事」欄に移動され上のリンクは切れます。ここに全文を掲載しておきます。

☆☆☆「週刊がん もっといい日」VOL.287☆☆☆

治療最前線

膵がんの術前化学療法で手術の適応範囲を拡大し出血量の少ない手術で治療成績向上をめざす――

東京医科大学病院(東京都新宿区)消化器外科講師 永川裕一医師

永川裕一医師
1969年金沢市生まれ94年東京医大卒業。消化器外科入局。東京医大八王子医療センター、同大病理学教室に二年間、米・ジョーンズホプキンス大学外科留学二年間、戸田中央総合病院を経て6年前より現職。

東京医科大学病院
東京都新宿区西新宿6-7-1
電話:03-3342-6111
http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/

早期発見が難しく、また技術的にも高度なテクニックが求められる膵がんは、あらゆるがんの中でも最も治療が困難で、かつ予後も悪いがんとされる。その膵がんと闘うために消化器外科に進み、日々膵がんの「根治手術」をめざして治療にあたっているのが東京医科大学病院の永川裕一医師だ。

父親から二代続いての「膵臓外科医」。術前に化学療法と放射線療法を組み合わせることで、他では手術不可能とされた膵がん患者を、手術が可能な状態に持ち込み、治療成績の向上を実現している。普段も気が付くと「どうすればもっと効果的な手術ができるのか――と考えている」という永川医師に、膵がん治療の現状と展望を取材した。

膵がん手術の成績向上のために病理で学んだ知識を生かす――

「たちの悪さ」では、すべてのがんの中でも突出した存在とされる膵がん。早期発見が難しく、見つかった時点で手術が可能なケースは全体の半分にも満たないのが実情だ。

しかも、運よく手術ができたとしても、5年生存率は1-2割といったところ。医学の進歩でがんの治療成績が高まる中、膵がんについてはいまも苦しい戦いを強いられている。

そんな中で、東京医科大学病院の膵がん5年生存率は3割程度をキープしている。数字で見れば僅かな差でも、膵がん治療に携わる者にとって、そして誰よりも患者とその家族にとって、この差の持つ意味は大きい。

同院の膵がん治療の中心的立場にあるのが消化器外科講師の永川裕一医師。父親も膵臓外科だったこともあり、子供の頃から膵がん治療の難しさはよく知っていた。それだけに、「医者になるなら膵臓外科医」との思いを強く持ち、医学部卒業後も初志貫徹で肝胆膵担当の消化器外科に入局。外科的手術はもちろん、内科的アプローチにも精通し、あらゆる角度から効果的な膵がん治療を検討し、実践してきた。

「膵がんの治療成績を劇的に向上させることは現状では難しいのは事実。でも、それを少しでも高めることはできるかもしれないし、それを目指さなければ、自分がこの道に進んだ意味がない」
同院の5年生存率が全国平均より高いのは、そんな永川医師の「こだわり」にも似た膵がん治療に対する熱い思いが反映されてのものなのだ。
実は永川医師、外科医デビューを果たしたのちに、2年間「病理学教室」に身を置いた経歴がある。病理とは患者から採取した組織を観察し、その発生や成長のメカニズムを検証し、診断やその後の治療に役立てていく仕事だ。一見外科とはかけ離れたセクションにも見えるが、永川医師は病理で学んだ経験の重要さをこう語る。
「そもそも外科医として病理には興味があったのですが、実際に学んでみて、その重要性を痛感しました。がんがどのようなプロセスで進行していくのかを知る上でとても勉強になったし、その知識を持たずに根治手術はできません。また、膵がん手術は合併症の危険性が高いけれど、それを回避する上でも病理の知識が役に立ちます」

その後、移植の研究で渡ったアメリカのジョーンズホプキンス大学も、膵がん治療では世界的に有名な病院。「医師としての分岐点」に立つたびに、「膵がん治療に役立つほう」を選んできた。夢の「膵がん征服」に向けて、確実に歩みを進めてきた。

無輸血手術も可能な高い安全性術後管理までトータルでフォロー

「膵がんから生還するには、根治手術が大前提」と語る永川医師。通常は膵臓の周囲を走行する重要血管への浸潤の程度で手術の可否が決まるのだが、永川医師は「ちょっと血管に接している程度なら術前の化学療法と放射線療法でがんを小さくして、手術に持ち込める可能性はある」と言う。事実、他院では「手術不可」とされた患者が、永川医師の下で化学療法を受け、実際に手術が行われるケースは珍しくない。

「膵がんとわかった時点で患者にも、また医療者側にも“あきらめムード”が漂うものなのですが、それでは治療のスタートラインにさえ立つことができない。まずはスタートラインに立つことが重要であって、そのためには医療側が熱意を持って取り組むことが大事。その患者に合った抗がん剤と放射線の組み合わせ方を考えながら実践していくことで、効果は大きく変わってくるもの。医師の熱意とあきらめない姿勢が、このがんの生存率を高めてくれるのです」

「手術可」となっても、その先にはまだ高いハードルがある。手術そのものの難度の高さだ。消化器がんの手術の中でも、食道がんと並んできわめてハイレベルの技術を必要とする膵がん手術は、根治手術が重要な鍵となる。とはいえ、根治性のみを優先すると、術後の生活の質が大幅に低下する危険性もある。加えて、膵液漏などの重大な合併症を回避するためには、安全性と積極性のバランス感覚が重要になるのだ。

永川医師による膵がん手術にかかる時間は平均して6時間ほど。一般的なそれより1-2時間短い。しかし永川医師は言う。

「単に『時間が短い』というだけではなく、根治性を考えた手術が必要。丁寧さと慎重さを忘れるといい手術はできません」と語る永川医師の手術は、根治手術となる率が高いにも関わらず、出血量は平均700cc。無輸血手術が可能な出血量の少なさは、まさに丁寧かつ慎重な手術の証だ。

さらにもう一つ、永川医師がこだわるのが「術後のフォローアップ」。
術後退院して安定したあとの外来は、極力永川医師自身が担当するという。
「術後の栄養状態の把握はきわめて重要。特に消化酵素剤をきちんと飲んでもらうことが予後の生活の質を大きく変えることになる。このあたりのことは、膵臓を専門に診ている医師でないとあまり気にしないことでもあるので……」

将来は膵がん手術にも腹腔鏡手術の導入を視野に入れており、すでに良性疾患の手術では腹腔鏡手術を取り入れている。また免疫治療との融合など、患者への侵襲の小さな膵がん手術を模索する永川医師。

根治手術、低侵襲、術後の生活の質(QOL)向上――の三枚看板に高く掲げて、永川医師の挑戦はさらに続く。

消化酵素剤は私もときどき飲み忘れます。しかし、栄養状態は悪くないので大丈夫だと思います。野菜と果物だけのゲルソン療法風の療法は、少なくとも膵がんでは効果がないというのは、こんなことも理由のひとつでしょう。


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