混合診療の対象:42の抗がん剤
がん研究センターの集計によると、国内未承認薬等を混合診療として使えるようにする「患者申出療養(仮称)」の対象となる抗癌剤が、1月末時点で42剤に上るとのことです。
この内容を見ると、対象となるのは血液がん、メラノーマ、前立腺がんの治療薬が多く、1ヶ月当たりの100万円以上の薬剤費が必要となり、なかには1ヶ月600万円もかかる薬剤もあります。
国立がん研究センター:国内で薬事法上未承認・適応外である医薬品について
1ヶ月100万円の薬剤費(他に治療費が必要)を負担できる患者はとは、年収が2000万円ほどある方でないと難しいでしょう。「混合診療解禁」が、富裕層だけに恩恵のある医療制度、一般の患者には有効な薬剤であっても使うことのできない制度、であることがますますはっきりしてきました。
また、これまでは患者団体などの要求を受け入れる形で未承認薬が保険で使えるように徐々になってきましたが、今後は「一応混合診療で使えますから」ということで、保険適用に消極的になることも予想されます。というか、確実にそうなります。なぜなら、厚生労働省としては医療費を増加させないことが至上命令だからです。また、安倍政権は消費税を増税しても社会保障関連費を抑制する方向で突き進んでおり、混合診療解禁はその一環だからです。
この薬剤費のグラフは驚きですね。他の診療費用は別ですよ。
ほどんどが100万円/月以上です。
これでは、年金生活者、契約社員、アルバイトなどの患者は、有効ながん治療は諦めてくださいというようなのも。
■未承認薬を用いた場合の、患者さん自らが支払う医療費(モデルケース)
アドセトリス(R)(一般名:ブレンツキシマブ ベトチン)及びイピリムマブ(国内未承認薬)を事例として、患者さん自らが支払うことになる医療費の概算を示します。
<イピリムマブ(国内未承認薬)>
A 自費診療の場合
B いわゆる“混合診療”が実施された場合
C 薬剤が薬事承認されて保険収載され、完全に保険診療となり高額療養費制度が適用となる場合
混合診療(「患者申出療養(仮称)」制度)と自由診療ではほとんど差がない。保険適用された場合の約30倍の薬剤費が患者の自己負担となる。
<ブレンツキシマブ ベトチン>
初回投与時(1回当たり 入院3日間)の、患者さん自らが支払う医療費
A 1,507,750円 (薬剤費1,397,100円+その他医療費(自費) 110,650円)
B 1,430,658円 (薬剤費1,397,100円+その他医療費(3 割) 33,558円)
C 94,028円 (高額療養費制度適用時の負担分92,468円+食費5食分1,560円)
こちらもほぼ同様です。
混合診療解禁の旗振りをした者たちの罪は重いぞ。特に上昌広氏や「混合診療の本質は患者の治療選択権」という清郷伸人氏。自由に選択できるのは金持ちだけなんだよね。
清郷氏に関してはNATROM氏の適格な批判が参考になります。
「死の淵から蘇ったのは混合診療のおかげ?」