今日の一冊(29)『抗がん剤治療を受けるときに読む本』
有名病院の有名腫瘍内科医の先生は、抗がん剤を60%以下まで減量することはまかりならん。それは人体実験になる、とおっしゃいます。武蔵小杉の勝俣医師、前回の記事で取り上げた日赤の里見清一先生もおなじ考えです。
しかし、セカンドラインの抗がん剤治療には、少数の例を除いてエビデンスはないですよね。では、武蔵小杉や日赤でも人体実験をやっているのですか?
その点、地域の臨床現場で日々患者と向き合って入医者は、より現実的です。今回取り上げた加藤隆佑医師は『抗がん剤治療を受けるときに読む本』で、「辛い抗がん剤はがん細胞を育てるだけです」と言い切ります。
最低量である60%まで減量しても、まだ副作用がひどい場合は、更に減量します、と明確です。「投与量は副作用を基準にして決める」のです。
アルコールに強い人も弱い人もいるのに、一律に「ダブルを3杯呑みなさい。2杯までなら減らしても良いです」はおかしいでしょ。抗がん剤もこれと同じで、副作用に強い人も弱い人もいる。少量でも酔う人もいれば、いくら呑んでも酔わない人もいる。一律に決めるのはおかしい。無理をしないで、抗がん剤治療を続けることが大切である。
治療のために生きているのではなく、自分らしい生活をより長く送るために治療を受けている、のだということを忘れないで。
まだまだ良いことを書かれているので紹介する。
- がんが自然に消えることもある。加藤医師は2つの症例を経験している。自然退縮は500人に一人起きるという説もある。
- がんを進行させないためにも、食事療法を取り入れるべきである。それもがんの初期からが望ましい。
- がんの再発を予防したいのなら、生活習慣を大きく変える必要がある。食生活の改善、運動、ストレスの軽減など。
- 抗がん剤を止めるタイミングを考えておきなさい。
- 治すために辛い副作用に耐えるという考えは危険です。
- 軽い運動、リハビリで免疫力を上げ、副作用を和らげる。
- 自分の死の迎え方について考えておきなさい。
代替療法についても柔軟な考えを持っているようです。
私自身は代替療法に生涯をかけて取り組んでいる医師からトレーニングを受けたとき、代替療法を主軸にして良くなる人を多く見てきました。当初、私は代替療法には否定的な立場だったのですが、考えが変わりました。
基本は標準療法を主軸とし、その上で代替療法を一部取り入れても良いでしょう。ただし、代替療法だけに頼るのは危険です。
私の考えともほとんどの部分で一致しています。
加藤医師は、
『現役医師による! 抗がん剤治療相談室』というブログも開設しています。
お勧めの一冊です。