病床数を減らせば、がん患者は減るか?
人工知能は万能ではない
NHKで人工知能に関する2つの番組を見た。録画してあったのをやっと再生。
1. 人工知能 天使か悪魔か 2017
2. AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン
1は昨年放送されたものの続編で、チェス・囲碁に続いて将棋でも、佐藤天彦名人を完膚なきまでに打ち負かして、既にAIに勝てるプロはいなくなったと衝撃の内容。AIが人間社会にどんどん入り込んでくるだろうが、将棋の世界での問題は、これからの社会全般の先取りではなかろうかという羽生善治さんの指摘は、的を射ている気がする。
ただ私としては、コンピューターの黎明期に「コンピュータが言うから正しい」と、生命保険の勧誘員や結婚相談所が、プログラムの仕組みも分からずに「神」のように信じていたことが思い出される。AIブームにもそうした傾向がありはしないだろうか。
相関関係と因果関係は違います
2.のマツコが登場した番組ではAIというよりは、ビッグデータを駆使して日本の未来を提言するという内容だった。1.の「機械学習」や「ディープ・ラーニング」とは何の関係もない。
おもしろいと思ったのは、AIからの最初の提言。
健康になりたければ病院を減らせ
AI(NHKが開発したAIもどき)では、病院のベッド数とがんの死亡者数には相関関係があるという。さらにはバナナの販売量とも相関関係があるらしい。
病床数が減ればがん死亡者数は下がり、脳血管疾患による死亡者数も65歳以上の死亡者数(男)も減り、女性の平均寿命は延びる(との相関関係がある)。
その実例が、財政破綻した夕張市の例。
財政破綻した夕張市では唯一の総合病院が閉鎖し、病床数が10分の1になった。しかし、がんによる死亡者数も脳血管疾患による死亡者数も減少していた。まさにAIが指摘したとおりであった。
AIは「相関関係」は指摘するが、それらの因子の因果関係まで説明するわけではない。因果関係は人間が判断しなくてはならない。
人工知能は所詮は数学
病床数が減って、気軽に病院にかかることができなくなった夕張市民は、食事に気を遣い、運動をし、ボランティア活動にも参加することが多くなった。その結果、健康になったのではなかろうかというのが、コメンテータらの説明である。
この番組、「AI」を看板にしているが、人工知能とは何の関係もない。しかし、なんだかAIはすごい!という意識を植え付けようとしている。AIで何らかの新しい社会的傾向や問題点を見つけ出すのではなく、番組制作者が考えている社会問題を、統計学的に分析してその根拠を示そうとしているだけに過ぎない。
実際に病床数を減らしたらがんの死亡数が減ることを保証しているわけではない。「相関関係」があることは「因果関係」があることを証明するわけではない。雪が降れば白鳥がやってくるからと言って、白鳥がやってきたから雪が降るわけではない。
AI研究の最前線では、AIの限界が明らかになりつつあるにもかかわらず、マスコミは、あたかも“知能があるかのように”期待を煽りすぎる。所詮は人間のプログラムに従って、高速に関係性や相関性を”計算”しているだけのことである。
AI神話はやがて「AIバブルの崩壊」となるに違いない。
ま、しかし、がんの治療において、医療だけに頼るのでなく、運動と食事、適切な社会参加が、治療結果に良い影響を与えるのだということは明らかになった。(AIに依らずとも既知のことだが)
免疫療法やサプリメント、その他の代替医療も否定しないけど、どうじに運動と食事にも、それら以上に関心を持ってほしいものだ。
みのさん。
結局のところ、「例外処理への対応」が鍵ですよね。全ての例外処理に対応しようとするとシステムが膨大になり処理が追いつかない。囲碁や将棋でAIが勝利を収めたとしても、現実の世界は「複雑系」ですから、因果関係すらはっきりとは分かっていない。
ましてや、人間の脳はノイマン型コンピュータではないので、量子コンピュータが実現してもまねることは難しいでしょう。
現在の「AI神話」もいずれ崩壊するに違いないと考えているのですが、自動運転車の未来にも悲観的です。
AI運転の車同士が事故を起こした場合、その責任の所在を裁判所が判断できるのですかね。
過大な期待はしない方が良いと思います。かって
こんなこともありました。
ICOT(第5世代コンピュータ)プロジェクト
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51292517.html
最近よく、ネットから広く情報を集める、ということを聞きますが、
ちょっと怖いですね。